A4
2026-03-18 00:43:13
1124文字
Public 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
 

自分だけ/ 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ

書き散らし

ライトがシャワールームから出ると、アキラはまだ裸でいた。下着一枚だけ身につけている。ベッドの上であぐらをかいてデバイスを横向きにして激しく指を動かしている。ゲームに熱中しているのだ。
先に入ってさっぱりしたはずの青年は髪の毛も乾かさずに真剣な面持ちで画面に集中している。
ライトはため息ひとつついて部屋のすみにある冷蔵庫を開け冷やしておいた水を飲んだ。ペットボトルを傾けながらアキラの姿を観察する。
ワイヤレスイヤホンをつけている。こちらには目も向けない。いつも目にする表情とは違う。ライトの知らない、子どものような姿だ。
親指をひたすら動かしている。よくもまあこんなに小さな画面で操作できるものだ。
ゲームセンターに行ってビリーとアキラとシューティングゲームをしたことを思い出した。アキラはほとんど運動をせず走るのも遅く反応が鈍いと思っていたが、ことゲームに限っては反射神経がよかった。ライトがまごついている間に十字キーとレバーを使ってあっという間に敵を殲滅していた。小さな椅子に座る姿もしっくり来ていて、プレイスタイルが決まっていた。ビリーを制してその勝負は一位に輝いていた。
「よしっ」
顔を上げると、アキラは小さくガッツポーズをして、そのままベッドに倒れ込んだ。イヤホンを外し、こちらに顔を向ける。
「あれ、ライトさんいつの間に出たんだい」
「あんたが集中していたときにだ」
「イベントだったんだ。ランキング十位以内に入ってると思う!」
にこにこしてアキラは言う。心の底から嬉しそうで、つられてライトも思わず笑みを浮かべる。
側に座って、半乾きの髪の毛を指で梳いた。
「風邪引くぞ」
「うん」
アキラは頷いてライトの手を取った。それを引っ張り、自分の方へ寄せて、それから手の甲に口づける。
かわいいじゃれつき方に襲ってやりたくなるが、タイミングを間違えると大変なことになるので、ライトはぐっと自分を抑えた。
「ねえ、ライトさん」
アキラがライトの手に頬をすり寄せて呼びかける。
「さっきまで全然そんな気がなかったんだけれど」
指をからめて握ったり開いたりする。
「したくなった」
真っ直ぐ見つめるアキラには恥じらう様子がない。
まるで、ゲームの延長線上にあるようだ。
ライトは飲み干したペットボトルを握りつぶす。音を立ててひしゃげて小さなプラスチックの残骸になる。
「ダメ?」
ライトは知っている。今や、そんなねだり方をするのが自分に対してだけだと。いつも妹を見守り、周りを気遣い、サポートをするアキラは、ライトにだけ無理を言う。
密かに、それは特権であると、己の幸運を噛みしめている。
ライトは言葉を返すかわりに、唇にかぶりついた。