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ポほ
2026-03-17 23:59:16
2954文字
Public
跡取り息子、やめました!?
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はじめての美容院
第9.5話。リアルで髪を切ったので思いついた話…だったかな
「
……
あんた、結構髪伸びてきたわね。そろそろ美容院行ったら?」
「えー? オレ、もうちょい伸ばそうと思ってるんだけど。静姉みたいな、さらさらロングヘアって可愛くね?」
「褒め言葉としてはありがたく受け取っておくけどね。でも、綺麗なロングヘアにするためにも、髪は定期的に切らなきゃダメなの。ほっとくと長さがバラバラになるし、傷んだ毛先も出てくるし」
「うへぇ
……
また静姉のお説教が始まった。ていうかさ、美容院? いつもの床屋じゃダメ?」
宗真には、宗二と二人で通っている行きつけの床屋があった。
「たぶん、あそこ女の子は切ってくれないんじゃない?女の人が切ってもらってるの、見たことある?」
「
……
あー、ないかも。じゃあ美容院行くしかないのか。なんかオシャレ空間って感じで緊張すんだけど!」
「そんなに身構えなくていいって。私が予約してあげるから行ってきな。前髪は今みたいに作ったままで目にかからないように、全体はこのまま伸ばしたいから整える
……
でいいわね?」
「う、うん
……
今の何? 呪文?」
「違うわよ。どうしたいか聞かれた時に、絶対答えられないと思ったから、先に伝えておこうと思っただけ。その内容」
「えっ!? 美容院ってそんなこと聞かれんのか
……
!」
「わかんなかったら、置いてあるヘアカタログとか、自分のスマホ見せて『この髪型っぽく』って言ってもいいのよ」
「いや、それもそれで難易度高いんだけど
……
。『おっちゃん、いつもの!』じゃダメなの? 床屋だとオレも父ちゃんもそれで通じてるよ?」
「
……
行きつけのラーメン屋じゃないんだから。初めて行く美容院でそれが伝わるわけないでしょ。今回は予約の時点でちゃんと注文つけておくから大丈夫だと思うけど」
「美容院って、思ってたよりハードル高い場所だったんだな
……
」
「まあ、私も得意ってほどじゃないけどね。チャラい美容師に話しかけられる時とか、正直ちょっと苦手だし」
「静姉でも?」
「ええ。でも別に、ビビって行くような場所でもないわよ?『可愛くなるための場所』ってだけなんだから」
「
……
うぅ、初美容院、無事に生きて帰れるかな
……
」
「大げさね。ちゃんと行って、ちゃんと可愛くなって帰ってきなさい」
「はーい
……
」
そして当日。
宗真は、静乃に言われた通りの時間に、言われた通りの場所へやって来た。
「
……
ここ、だよな」
ガラス張りの外観。中は丸見えで、いつもの床屋とはまるで違う雰囲気だ。
(切られてるとこ外から見えちゃうじゃん!?落ち着かねぇ
……
)
外から見える店内には、静かな音楽と、用途のよくわからないオシャレな置き物。カット中の客は、なぜか全員モデルみたいに見える。
(無理無理無理
……
帰りたい
……
!)
そう思うが、すでに予約は入っている。ここで逃げたら、あとで静乃に何を言われるかわからない。
「
……
よし」
意を決して、ドアを開けた。
「いらっしゃいませ!本日はどうなさいますか?」
「え、えっと
……
予約してた、月城宗真です。髪を
……
切ってほしくて
……
」
「あ、はい!カットのお客様ですね。あ、シャンプーもついてますね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ〜」
(そっか、「カット」って言えばよかったのか
……
!ていうか、わざわざ「カットの」って言うってことは、美容院って髪切る以外のこともやってんのか
……
?)
そんな疑問を抱えたまま、案内されるがまま鏡の前の席へ。
大きな鏡に映る自分の姿が、妙にそわそわして落ち着かない。
「本日はどうされますか?ご予約の際に『前髪は今みたいな感じで目にかからないように』『髪は伸ばしたいので全体を整える感じで』と伺ってますが、他にご希望はございますか?」
「い、いえ!そ、それで大丈夫です
……
!」
「かしこまりました。では毛先を中心に揃えて、扱いやすくしますね」
「は、はい
……
!」
クロスをかけられ、椅子が少し倒される。
「では、先にシャンプーしますね」
「はいっ」
(さっき「シャンプーもついてる」って言ってたけど、静姉が予約の時につけてくれたのかな
……
)
次の瞬間、シャンプー台へ案内され、仰向けに寝かされる。
(おお
……
視界が逆さま
……
)
温かいお湯が流れ、頭皮を丁寧に洗われる。
「
……
っ」
(なにこれ
……
気持ちよすぎない
……
?)
指先が頭の上を動くたび、身体の力がふっと抜けていく。
(床屋と全然ちがう
……
!あっちはもっとゴシゴシだったのに
……
)
このまま眠ってしまいそうになったところで、声をかけられ、再び席へ戻された。
(あっぶな
……
寝るとこだった
……
)
「お疲れさまでした。じゃあ、カットしていきますね〜」
「は、はい
……
!」
チョキ、チョキ、とハサミの音が心地よく響く。切られているのはほんの少しのはずなのに、少しずつ整っていくのがわかるのが不思議だった。
(なんか
……
ちゃんと「手入れされてる」って感じがする
……
)
「予約の時の声、今とちょっと違いましたけど
……
お母さんとかですか?」
「あ、姉です!」
「お姉さんなんだ。じゃあ宗真ちゃんとは、仲良し姉妹なんだね〜」
(自然にタメ口になってる
……
!なのに全然嫌な感じしないの、なんでだ
……
?)
「そ、そうですね
……
?」
「それに、『そうま』って女の子の名前、珍しいよね。電話で予約受けた時は、てっきり男の子かと思ってたけど」
(あ
……
そっか。この人、オレのこと完全に女の子だと思ってるんだ。本当は男だけど呪いで女の子になっちゃって〜なんて、また会うかもわからない人に話すことでもないよな
……
)
「そ、そうなんですよ!そのせいでよく
……
オレ
……
じゃなくて、私、男の子だと間違われるんですよね〜。あはは
……
」
(
……
「私」って言ったの、たぶん初めてだ)
多少ぎこちないながらも、美容師がうまく話を広げてくれて、カット中の雑談は続いた。最後にドライヤーで乾かされ、軽くブローされる。
「はい、こんな感じです。どうでしょう?」
「
……
!」
鏡の中の自分は、長さはほとんど変わっていない。それなのに、毛先が揃い、全体がすっきりして見えた。
「
……
いい感じかも。ちょっと大人っぽくて!」
「そうですね。とてもお似合いですよ。」
「へ、へへ
……
そ、そうですか
……
?」
照れくさくなって、思わず視線を逸らす。
――
帰宅後。
「おかえり。
……
あ、ちゃんと行けたみたいね。いいじゃん、スッキリしたねー」
「
……
ありがと。切ったのは、ほんのちょっとなんだけどさ」
「でも、綺麗に仕上がったでしょ」
「うん。静姉の言ってた、髪を伸ばすって
……
ただ放っとくことじゃないんだなって。今日でよくわかったよ」
「でしょ?前も言ったけど、可愛くなるって、そういう地道な努力の積み重ねなんだから」
「
……
美容院も、思ってたより怖くなかった。むしろ
……
ちょっと楽しかったかも」
「ふふ。じゃあ次からは、予約の時点から一人でも行けそうね」
「が
……
頑張ってみる!」
(また一つ、女子レベルが上がった気がする
……
!)
「で?その可愛くなった髪型、最初に見せに行くのは吉田くん?それとも江沼くん?」
「今そいつらの話してねーよっ!」
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