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ポほ
2026-03-17 23:35:20
759文字
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跡取り息子、やめました!?
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無を取得
第6.1話
宗真が中学に入学して、初めて迎えた新月の日。
一ヶ月ぶりに取り戻した、重みを増した四肢。制服のボタンを上まで留め、鏡の中に「男」としての自分を確認して登校したその日は、宗真にとって唯一、肩の力を抜いて呼吸ができる時間だった。
だが、周囲の男子たちにとっては、普段の「高嶺の美少女」という壁が消え、気安く踏み込めるボーナスタイムに見えていたらしい。
「なあ、月城
……
」
休み時間、一人の男子生徒がニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながら、宗真の机に腰掛けた。
「その
……
お前、女の時にさ。自分の胸、揉んでみたりした? やっぱ柔らかいの?」
「は?
……
何言ってんだよ」
宗真は低くなった声で吐き捨てるように答えた。呆れ果てた、という体裁を保ちながら。
けれど、その脳裏には、数日前の夜の記憶が鮮明にフラッシュバックしていた。
(
……
あるけど)
それは、月の光が部屋に差し込む静かな夜のことだ。
鏡の前に立ち、女の子の姿をした自分を見つめていた宗真は、一度だけ、乾いた唾を飲み込んだ。
もし、今ここにある感触が「本物」なのだとしたら。
恐る恐る、指先を自分の胸元へ伸ばす。柔らかな布地の向こう側を、確かめるように掴もうとした。
――
だが、掴めない。
指先が捉えたのは、掴むほどの膨らみすら持たない、頼りないほどの「平らな傾斜」だった。
「
……
あの時、本当の意味で『無』を取得するってことがどういうことか、よくわかったんだよな」
遠い目をして、宗真はぽつりと呟いた。男子生徒は「は?」と首を傾げる。
「無? 何だよそれ、哲学か?」
「
……
ああ、哲学だよ。掴めないからこそ、そこにある空虚を感じるっていう、深い教えだ」
……
男子生徒は遠い目をする宗真を置いて去っていった。
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