宗真はどこか気まずそうに口を開いた。
「女物の服は揃えたけどさ。オレって
……ぶ
……ブラとか、した方がいいのかな
……!?」
静乃が思わず吹き出す。
「ぶっ!あんたが?いやいや
……どう見ても早いでしょ、その体型じゃ」
「そ、そんなことないだろ!?ほら、ここにちゃんと立派なのがついてるじゃんか!」
「
……もう突っ込むのもめんどくさいわ。ていうか、あんたってそういうの気にするタイプだったのね。下着の前に、その『一枚上』を買った方がいいんじゃない?」
「
……へ?」
デニムのミニスカートのまま、ソファにどかっと座り、何の気なしに足をかっぴらく宗真。

「
……こっから見たら、あんたのパンツ丸見えなんだけど」
「え!?し、静姉のエッチ!!」
「逆よ、逆。往来で自分からパンツ見せつけるとか、露出狂と変わんないでしょ。あんたのことだから、その格好で学校行ったら大変よ?みんなにパンツ見せて歩くつもり?」
「そ、そんなつもりは
……!!ど、どうしたらいいんだ、オレは
……!」
「
……ちょっと来なさい」
――その後。
二人はイオンの子供服売り場に来ていた。学生向けのオーバーパンツが並ぶコーナー。
「いい?スカートの時は、下着の上にこういうの履くもんなの。見えないし、お腹も冷えないし。一石二鳥でしょ」
「へー
……。なるほどな、勉強になる
……!」
少し感心しつつ、ふと思い出したように首を傾げる。
「
……で、ブラは?」
静乃は、何も言わずに宗真の胸元に視線を落とした。
(自分の時どうだったか忘れたし
……一応、店員さんに聞いた方がいいか)
二人はレジ付近にいた店員に声をかけた。
「あの、この子
……私の弟で、今度中学一年生なんですけど。そろそろブラをしたいって言ってて
……何かおすすめありますか?」
「あ、弟さんなんですね?」
「
……あ、いや、妹ですっ!間違えました!」
(ったく
……宗真が変な身体してるせいで、私まで恥かくじゃない
……!)
店員は少し声を落として尋ねた。
「あの
……初経は、もう来てますか?それによって案内できるものも変わるのですが」
「あ、まだ
……だと思います」
(ていうか、この子に生理って来るのかしら
……。でも、もし来てたら絶対大騒ぎしてるだろうし、今のところはナシっぽいわね)
「でしたら、年齢的にはこちらの商品が対象になりますね」
そう言って指差したのは、ノンワイヤーブラのコーナーだった。
「おっ!なんか大人っぽい〜!思ってたより地味めだけど。オレもっと派手なのがいいなぁ」
「バカ。服に透けないようなデザインってことよ」
「では、採寸なさいますか?」
「お願いします」
――そして、試着室。採寸を終えた宗真が、わくわくした様子で顔を出す。
「なーなー。バスト〇センチだったんだけどさ。これってデカいの?小さいの?」
「アホ!!そんなの、人に言って回るもんじゃないの!」
「えっ、そんなに怒んなくてもいいじゃん
……!」
「そんなに怒るわよ!」
「
……まあでもさ。ブラ買って、なんか『大人の階段』登った感じするから、いっか♪」
(
……先が思いやられるわ)
さっそく先ほど買ったオーバーパンツを履き、宗真は食品売り場で静乃の夕飯の買い物に付き合っていた。するとヨツダを発見したので、声を掛ける。
「おーいヨツダ!」
「宗真!?
……と、お姉さん?」
「久しぶりね。吉田くんも買い物中?」
「まあ
……そんなとこっす」
「オレもいいモノ買ったとこ〜」
「え!?あんたさっき買ったのは
……」
静乃がそう言うやいなや、宗真は自分のスカートをひょいと捲り、履いたばかりの黒いオーバーパンツを見せつける。
「お、おいっ!?」
思わず目を逸らしたヨツダの横で、宗真の頭に静乃の拳骨が飛んだ。
ゴン。
「バカ宗真!!『見せパン』って、見えても大丈夫って意味であって、わざわざ人に見せるもんじゃないの!!ご、ごめんね
……吉田くん、バカで
……」
「い、いえ
……。こいつがこんな調子なの、昔からなんで
……」
「
……謝罪ついでなんだけど。こんな世話の焼ける弟だけど、中学でもよろしくね」
「は、はい
……」
「いてててて
……」
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