syanpon
2026-03-15 22:38:26
1468文字
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大好き、愛してる、一生一緒!

オトスバ
現パロ
一つ#とは

 オットーの鞄の中には丁寧に包装された菓子折りがひとつ。
 自らの嗜好とは離れたそれは数日前から準備していたというのに未だ彼の手元に残ったままだ。その小さな包みを眺めて男は大きくため息をついた。誰もいない教室、朝練前なのもあって窓から差し込む明かりはほとんどない。
 スバルからバレンタインと称してチョコレートをもらったのが1ヶ月前、そのお返しにいろんなウェブサイトを見て調べ、実際に百貨店に足を運び購入した菓子は何度もオットーの手のひらとカバンを往復するだけだ。

「どうしてバレンタインはチョコレートだけなのにホワイトデーのお返しは多岐に渡るんですか……

 お返しに意味があるなんて知らなかったのだ。痛恨のミスと言ってもいい。それに気がついたのがホワイトデー当日だったのも己の不運と言えるだろうか。

……

 所詮こういったものは気持ちだというのもわかっている。わかっているが流行りに敏感な恋人のことだ、もしも自分が渡したこれを別の意味に取られて誤解されるのは、困る。
 陽だまりの中だけで、光が当たるところだけを見て生きてほしい人。柔らかくて傷つきやすい恋人の顔が万一にも曇る可能性があるのならその手段を取ることはしたくない。やはり今日買い直しに行こう。今度はしっかりと意味を調べて、遅れてしまうことについては頭を下げて。そう決心したオットーが包みを鞄に戻そうとした時、後ろから伸びた手がひょいとその包みを奪い取った。

「な、ナツキさん」
「おはようオットー、これなに?」
「これはえっとナツキさんに……あ、えっと違くて」
「俺宛なのに違うってなに」

 ぱちくりと瞬いた瞳がオットーを咎めるようにきゅっと細められる。そのまっすぐな視線から逃げるように目を逸らした。

「あんたへのホワイトデーのお返し……のつもりだったんです」
「じゃあ俺のじゃん。何で俺がもらっちゃだめなの」
「その、中身が」
「なに」
……マシュマロ、で」

 オットーの口から苦々しげに出された甘い菓子の名前にスバルは再度ぽかんと口を開けた。呼吸をするよりも早く堰き止められていたであろう言葉たちがオットーからぽろぽろとこぼれ落ちる。
 
「意味を知ったのが昨日だったんです。あんたはその、風説とかを気にするでしょう。だから万が一にでも意味を邪推されてあんたを悲しませるなんてことしたくなかったんです。遅れてしまったことは申し訳ないと思っています。……そうだ、今日の放課後一緒に買いに行きましょう。食事だって奢ります――
――やだ」

 カサリ、スバルの腕に抱き抱えられた小さな包みが音を立てた。
 
「やだ」
「やだって」
 
 きっと睨みつけられる。困ったように手を伸ばすオットーから包みを守るように更にスバルの腕に力がこもる。
 
「これがいい。俺は、これがいい。俺のこと考えて、選んでくれたんだろ。だったらこれがいい、これじゃないと嫌だ。お前が俺のこと思って選んでくれたこれじゃなきゃ絶対に嫌だ」

 スバルの指がそうっと、まるで宝物を扱うかのような恭しさで包みのオレンジ色をしたリボンを解き、自らの腕に器用に巻きつける。オットーが何度も取り出して、ほんの少し縁がよれてしまったそれを眺めて悪戯に、誇らしげに歯を見せて笑う。
 
「それにさ、こんな贈り物の意味なんてひとつしかないだろ」
 
 いつのまにか朝日は昇り2人の青年を橙色に染め上げる。誇らしげにラッピングされた恋人を抱きしめるため、オットーは両の膝に力を込めた。