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ortensia
2026-03-15 14:34:20
1525文字
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その他てて
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死ネタ傭墓
心中っぽい不思議な話(?)
ことわざ絵本(五味太郎)
おーいでてこーいだと星新一
猫を追うより魚を退けよ。そういう諺がある。つまり、穴注意の立て札を建てる前に穴を塞げ、そう言う話だ。
傭兵は大きな穴の前で立ち止まっていた。ここはそこそこ森の中だ。どうしてこんなところに。それを言うならどうしてこんなところに傭兵がいるのかだが、ま、色々あって。
穴を見て危険だから直ぐ塞げれば良かったのだが、そう簡単に言っていられる大きさではない。
どうしてこんなところに。そう思ったのもこの大きさのせいだ。いったいなんのために。
「お、おい
……
!」
穴の中からか細い声がした。
穴を覗き込む。一人の男がいた。白髪で、白い肌の男だ。
穴は男を取り込んで尚余裕がある。男は穴から自力では抜け出せないようだった。それくらいの穴だ。
危ない危ないと思ってはいたが、既に手遅れだったようだ。犠牲者がいる。
「ここから、出たいんだ
……
。」
まあそうだろうな。傭兵は納得した。
ただ、助けてくれ、ではなかったことは、この状況下において馴染みがなく、傭兵は少し不自然に感じた。意外と冷静なのか、元々慎重なのか、きっとそのどちらかだ。
穴の中の男は、本人が真っ白なのに黒衣を着ている。夜の森、穴の中は当然暗く、まるで生首が宙に浮いている。
傭兵は穴の淵で這い蹲って、白い生首に手を伸ばした。
「お前はこんなところで何してんだ、穴に落ちちまって。
……
ほら。」
男が傭兵の手に応える。手袋まで黒かった。手袋と袖の隙間に白が見える。
男が穴の内壁に足を掛けながら、傭兵の手を強く握る。その時雲に隠れていた月明かりが森の木陰を突き破った。男の目の色が反射する。赤い目の生首。傭兵が互いに力を込めた手を、引っ張り上げようとしたところで、思わぬ方向への力にいざなわれた。
「は?」
傭兵は、穴の中から助けを求めた男を引き上げようとして、逆に落とされたのだ。
「オっマエ
……
!」
穴から出たかったんじゃないのか。助力を落としてどうする。
傭兵は穴の底に落ちて転がる。男は白い頬を吊り上げて笑っていた。
「っはは、ははは!これでお前も僕を見下さない!お前も墓穴の中だ!」
「墓穴
……
?」
男の頬が色付いていく。興奮しているように大きな声が引き攣っている。しかし声は響くことなく、穴の中で蟠る。
「穴は
……
掘ったのはお前か?」
「僕の唯一出来ることなんだ
……
!」
傭兵を見下ろす男の赤い目は、今は逆光でその色が見えなかったが、傭兵には未だ脳裏に焼き付いて、尚も爛々と赤めいているように思えた。
「
……
自分と同じ立場にさせて、自分は這い上がれなくても良いのか?」
「どうせ、僕なんて穴の外に出てもやっていけない、誰もが言うんだ!」
随分悲観的思考の男だった。傭兵は自分も大概だと思っていたが、相手はそれを上回っているようだった。
「だったらもういい。穴の底でも地獄の底でも、一緒にいてやるよ。」
「は?」
傭兵は穴の内壁を拳で崩し始めた。ぱらぱらと均衡を崩して土が崩れていく。この規模の穴を崩すことなく掘った男の手腕は、確かに特技のようだった。しかしそれを傭兵が、街を破壊する爆撃のように破壊する。
ばらばらに崩れる穴を、男はただ呆然と見ていた。否、男は傭兵を見ていた。土が跳ねて自身に被っても、男はひたすらに傭兵を見ていた。もう土は腰まで埋まっている。
ここから出たいと言った言葉に嘘の匂いはしなかった。しかし男は大人しく土を被り、土の匂いをさせている。傭兵も同じ匂いだ。
男の白い首も埋まってゆく。傭兵は赤い目と見詰め合っていた。自分はここに人目を忍んでやって来た。二人が見付かるとしても、その頃にはもう、どちらも同じ白い骨だ。
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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。
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