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NEO
2026-03-15 00:22:21
2051文字
Public
NEO宅のDDA
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nomen
ダンリン。再会後の2人、リングローズ視点です。
◆
朝の散歩中や、午睡時、仕事終わりの夕べや、眠る前の一時に、彼の思い出話を聞くのは楽しい時間だった。田舎に住んでいたとか、農家の子だったとか、都会生まれだった自分とは全く違った環境で、彼がどんな風に育ってきたのかを知るのが面白い。お金がなくて、学校もやめて、けれど学ぶことを止めないところにも共感する。誰もが考えもしなかったやり方で彼は、世界の謎に挑み続けている。なんて凄いことだろう!
僕も君のように、世界を何処までも知りたいと願ってる。例えそれがバカな夢物語だとしても──
「ウィリ」
急に話が飛んだように感じて面食らう。何の話をしていたっけ?そう
……
うん、名前──名の呼び方について、だったかな?
「兄ちゃ
……
兄とか、従姉妹とか親しい人にはそう呼ばれてたよ」
少し気まずそうに嘯くのは、照れているから、だよね?お兄さんがいるんだ。それと従姉妹も。結構仲が良さそう
……
こんな和やかな表情をするなんて。
「へぇ!──ウィリ?」
試しに口に出してみる。ウィリアムの愛称といえばウィルが多いのに、ウィリなんだ。面白いなあ。土地柄なのかな?聞いてみようと顔を上げると、神妙な顔付きで此方を見る彼と目が合った。しばし沈黙の後、ぼそりと呟く声を耳にする。
「もう呼ばれることもないと思ってたけど、案外悪くないね
……
」
(あぁ、君は)
伝えなきゃ
いるよ ここに
(僕が)
触れる、君へと込めたのは
穏やかな慈しみ、沁み入る慰め、それから
微動だにせず僕を凝視する君を見て、一瞬で我に返る。
口吻。彼に。僕は。考えもせず。いきなり──
「あっ
…
ごめ、」
不意に
「、!」
腕を引き込まれ嵐に襲われる
頭を押さえ付けられ動けない
荒れ狂う高波と吹き付ける暴風
飲まれて息継ぎも侭ならなくて
熱い、触れるそこかしこが
火傷のように僕を灼く
何が起こっているのか
後悔より先に生まれた当惑
こんな君は初めてで
抗うことが躊躇われるなんて
いつまで波に揉まれればいいの?
いつになったらこの風は収まるの
急に空気が肺へ送られて咳き込む。
涙目を拭いながら彼を見る。
怒らせてしまったのかも。
いきなりあんなことをしたから。
だとしてこんな意趣返しをするなんて。
僕の真似なんて報復にしては
理に適っていないじゃないか?
「ダ、ンピァ」
「ウィリだよ」
「!」
俯いた顔からは顔色が読みにくい。
掠れた声音を辛うじて聞き取る。
名前、いや
…
愛称の方?
もう一度繰り返されて、呼べばいいのだと気付いた。
「
……
ぅ、ウィリ?」
彼はンーッと唸って静かになった。
その姿はいつもと変わりないように見える。
けれど、抱き竦めた腕から解放するつもりはないようだ。
彼は概ね理性的で、合理主義でもあるけれど、時折子どものような癇癪を起こして周りを辟易させる事がある。そんなところも魅力だと感じるけれど。今がその時なのかもしれない。
わずかに自由の利く手のひらで、そっと丸まった背を撫でる。少し身動ぎしただけで他に目立った反応はない。仕方なく黙って背を撫で続けた。長く伸びた赤毛に埋まる指の感触が心地良い。肌触りのよい上等な天鵞絨に触れているような気分になってくる。
大人しく撫でられている彼が何を考えているのかを夢想する。
故郷のことだろうか。またはこれから行く土地について?或いは仲間と議論した航路の懸念?今日見つけた新しい植物の数?なんなら単に夕食の味を思い出していたり
……
なんてね。
緩やかな潮と一面の砂に湿った南海の風。彼を脅かすものは何もない。
心配なのは僕が彼の思索の邪魔にならないか、ということくらいだ。
「はぁ
……
君、ちょっと無垢すぎない?」
重い口を開けた彼がため息混じりに言ったのがそんなことで、思わず吹き出してしまった。ムッと眉根を寄せた彼が突っかかってくる。
「バカにしてんの?」
「ううん、違うよ
……
でも、だって、あんまり余計な心配してるから」
「余計
……
まさか、
……
無自覚なの
……
?!」
「フフッ」
ともすればまた笑ってしまいそうだ。僕の感覚が彼には分からないみたいだ。本当に人間観察が苦手なんだなあ。
「君だから」
「は?」
「だから、君だけなんだよ、僕が無垢になんて見えるのは」
彼の目に映る僕はとてもキレイで、純心で、善い人なんだろう。本当の僕よりずっと。君の中に居る僕が、羨ましいくらい。例え誤解だとしても
……
「
……
嬉しいな」
行くと決めたのは僕だけど、罪が贖われるわけじゃない。何処までも僕は咎人だ。解ってる。覚悟もしてる。けれど君にそんな風に云われると、まるで、僕は、洗い流されるようで、
「ありがとう、ダンピア」
まだ見ぬ大陸への憧憬も、この胸の痛みを消せないまま。
fin.
nomen【名前】
20260315_finish_NEO@20neo24
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