たくとろ
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ワンライ「ホワイトデー」

3hくらい…?
書いてる間にホワイトデー終わっちゃったよ()
先月書いたバレンタイン小説の続きです。読んでなくても読めるけど、設定面はあっち参照です。

 ある日の朝方、顔を洗っていたときのこと。タオルで顔を拭ったロイが言った。
「リコ、来週の土曜日、二人で出かけない?」
 これは……デートの誘い……
 いや、ロイに限ってそんな……
 リコがぽかんと口を開けていると、ロイは笑顔のまま続けた。
「ほら、その日ホワイトデーでしょ? お返しにとっておきの場所にリコを連れていきたいんだ!」
「そっか、ホワイトデー……! ありがとう。とっておきの場所……ってどんなところ?」
「それは行ってからのお楽しみだよ」
 ロイは得意げに、そして少し企んだような笑みを見せた。リコは少しの間見惚れていた。
 どんなところに連れていってくれるんだろう。一週間の間、リコは期待を胸いっぱいに膨らませていた。
 そしてホワイトデー当日の朝。リコは鏡を見つめて前髪を何度もいじっていた。
「ねえマスカーニャ、ブリムオン、変じゃないかな……?」
「ニャー」
「リムオン」
 二匹は大丈夫と伝えて頷く。するとグレンアルマがリコのスマホロトムを点けて、リコに見るよう促す。スマホロトムには大きく現在時刻が表示されている。
「わっ!? もうこんな時間!? ありがとうグレンアルマ……みんな行こう!」
 リコはベッドの上にいたパゴゴを抱き上げ、マスカーニャたちを引き連れて急いで飛行船を出た。すると、ロイがリコの名を呼ぶ。
「おーい! こっちこっち!」
「ロイ……! おはよう!」
「おはよう。リコ、今日はいつもと違う格好なんだね」
「うん! どうかな……?」
 リコは左手の指先を口に当てて、少し上目遣いをしてロイに聞いた。
 薄いモモン色のカーディガンの袖は少し大きくて、リコの手を包んでいる。下は淡い緑の長ズボンで、春っぽい装いだ。
「スゴく似合ってるよ! かわいい!」
「あ、ありがとう……えへへ」
……それじゃ、行こっか」
 そう言うと、ロイは開けたスペースにモンスターボールを投げた。中から飛び出してきたのはレックウザだ。
「レックウザに乗っていくの?」
「ああ。このために何回か飛んでルートはバッチリだよ! な、レックウザ」
 レックウザは静かに頷いた。するとパゴゴがはしゃぎ出し、レックウザの頭に乗った。
「さ、リコもおいで」
「うん」
 リコはマスカーニャたちをボールに戻して、先にレックウザの上に乗ったロイの手を掴んだ。引っ張り上げられながらロイの後ろに乗り込む。
「よーしレックウザ! 出発だ!」
 ロイの掛け声に合わせて、レックウザは飛び上がった。優雅に、そして大胆に空を舞う。やや冷たい風が吹き抜ける空から見える景色は、美しい緑と青でいっぱいだ。
「きれい……!」
「なんかブレイブアサギ号で見るのと、ちょっと違う感じするよね」
「うん。百年前、ルシアスたちもこんな景色を見たのかな……
「パァゴパゴ!」
「パゴゴも喜んでるね。きっと同じ景色なんだ」
 レックウザの上から見る世界を味わいながら、彼らは最初の目的地に向かう。レックウザはとても速い速度で空を翔る。
「もうすぐ……あ、見えてきた!」
「あれは……お家?」
 レックウザはゆっくりと木造の民家らしき建物の隣に降り立った。
 ロイに手を引かれて降りたリコの目に、建物の看板が映る。
「カフェ ビッグモーモー……ここ、カフェなんだ!」
「そうだよ。まずは朝ごはんだ」
 レックウザとパゴゴが遊ぶ中、ロイはリコを連れてカフェの扉を開けた。
「お邪魔します! 予約してたロイです!」
「いらっしゃいませ。ロイ様ですね。モーニングをお持ちするので、あちらの席でお待ちください」
 ウェイトレスに案内された座席に二人は座った。木の椅子と木のテーブルが置かれていて、窓から外の様子がよく見える。そばにはポケモンでも開けやすいよう色々なところに持ち手がついたドアがある。
 座席の周りも広く、低めのテーブルも置かれていてポケモンたちが過ごしやすい空間になっている。リコとロイはボールからポケモンたちを出して、みんなでモーニングを待つ。
 斜めの屋根についた天窓から光が差し込む店内は、森の中のようだ。
「いい雰囲気のお店だね」
「でしょ? リコなら絶対気に入ってくれると思ったんだ!」
 話していると、早速料理が運ばれてきた。ウェイトレスと共に、エプロンをつけたミルタンクやイェッサン、フラエッテがモーニングを運んできた。
 テーブルに生クリームがたっぷり乗ったフレンチトーストと、特製のコーヒーが置かれ、外にいるレックウザの元にはブリガロンがとびきり大きいフレンチトーストを運んでいる。
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます。美味しそう……!」
「ロイは事前に食べたりしたの?」
「下見の時はランチだったから、パスタを食べたよ。すっごく美味しかった!」
「そうなんだ。じゃあこのトーストもきっと美味しいね」
 リコとロイは目の前の料理に心を躍らせる。ポケモンたちが早速食べ始めている中、二人も手を合わせていただきますを言ってからフォークとナイフを手に取り、トーストを切って口に入れる。すると、甘みが口いっぱいに広がり、自然と頬が緩む。
「ん〜!美味しい!」
「ほっぺが落ちちゃいそうってこういうことなんだね!」
「だね」
 ポケモンたちもトーストをとても美味しそうに食べ進めていく。リコとロイは合間にコーヒーを口にする。モーモーミルクでほどよい苦さに調整されていて、フレンチトーストとの相性が最高だ。
 食べ終えた二人はしばらくゆっくりした後、次の目的地へ向かうべく、再びレックウザの上に乗って空に出た。
「次は面白いのが見れるよ」
「面白いの?」
 ロイはまた得意げに笑っている。自信に満ちていて、見てるこっちもワクワクさせられる。
 そして彼らが辿り着いたのはとある山だ。その横をレックウザに乗ったままゆっくりと飛ぶ。
「ここ?」
「ああ。今はただの山に見えるかもだけど……もう少し進んだら分かるよ。そろそろ……ほら!」
 すると、山の岩壁や草木の連なりが、まるでナマコブシのような形になっている。
「スゴい……
「ここ、地元の人からはナマコブシ山って呼ばれてるらしいよ! 大昔に伝説のポケモンのレジギガスが投げたナマコブシの化石だって言ってる人もいるんだって」
「えぇ!? さすがに違うんじゃ……
「でもそうだったら面白いよね!」
「そうだね。でもそんなおっきなナマコブシがいたら、海じゃ暮らせなさそうだね」
「だから投げたのかも?」
「まさか〜」
 それから二人はまた次のスポットに向かった。今度は一面緑の草原……かと思いきや、何やらポケモンっぽい絵が描かれている。
「なんだろうこれ……
「調べたけど、これはよく分からなかったんだ。宇宙人が描いたって説もあれば、自然とできたって説もあって……ガラル地方にも似たような絵があるらしいよ」
「ハッキリとは分からないんだ。誰も知らないことって、けっこうあるのかな」
「それなら、みんなで冒険してたくさん謎を解き明かしたいね!」
「うん! 今度みんなで次の冒険も決めよう」
 その後も二人は色々な場所を回った。たくさん不思議なものを見て、最後に訪れたのは色とりどりの花が咲く高原だ。
 降り立ってすぐ、リコは目を輝かせた。数多のビビヨンが夕暮れの空に飛び立ち、舞い散る鱗粉が黄金色に輝いている。
「わぁ……!きれい……!」
「ここが一番のとっておき! どう?」
「すごく素敵だよ……! 連れてきてくれてありがとう、ロイ」
 リコは今日一番の笑顔をロイに見せた。花畑と空中に舞う鱗粉をバックに立つリコの笑顔は、そのどれよりも煌めき、ロイを照らしていた。
「実はね、ここは下見してないんだ」
「え? でもとっておきって……
「もちろんネットで写真とかは見たんだ。でも、色んなとこ下見してるときに、リコと見たらもっと楽しいんだろうなって思って、ここだけはリコと来る時に見ることにしたんだ」
 ロイはリコの方を見て静かに微笑む。今日一日たくさん見せた得意げな笑みとは違うそれに、リコはドキリと心音を弾ませる。
「先月、リコが言ってくれたでしょ? 僕が隣にいるだけでどこまでも行ける気がするって」
「うん……思い出すと、やっぱりちょっと恥ずかしいけど……改めてほんとにそう思ったな。今日も、ロイがたくさん見たことのない場所に連れていってくれたから」
「ああ。僕も同じ気持ちだよ。きっと、リコと出会ってなかったら、こんなに色んなところに行けてなかったと思う。だからありがとう、リコ。これからも、隣でたくさん冒険したい」
「ロイ……もちろんだよ。これからもよろしくね」
 二人は互いに手を突き出し、仲間の証のハンドサインをして笑い合った。
 ポケモンたちをボールから出してしばらく遊んだ後、彼らは飛行船に戻った。すっかり暗くなって、丸一日のデートもとうとう終わりだ。
「ロイ、今日はほんとうにありがとう。すっごく楽しかったよ」
「リコが楽しんでくれたならよかった。あ、そうだ、渡すものがあるんだ」
「え! もうたくさん貰ったのに」
「やっぱりプレゼントもしたいなって思ってさ。部屋に取ってくるね」
 そう言うとロイは自室に向かい、しばらくして背中に右手を回して戻ってきた。
「はい! ハッピーホワイトデー!」
「バラの花……! きれい……!」
「よかった。実はオリオとモリーに相談して買ったんだ。ホワイトデーには花を贈るといいって言われて」
「ふふ。じゃあオリオたちにもお礼を言わなきゃ」
「僕も言いに行かなきゃ。花の本数で意味があるのも知らなくて、教えてもらって選んだよ。リコは意味知ってる?」
「うん。五本……えへへ。私も同じだよ、ロイ」
「へへ。じゃあ、そろそろみんなのところに行こっか」
 まだ少し、恋は空の星のように遠い。それでも二人の想いは、いつも一番近くで重なっている。