三毛田
2026-03-14 22:22:47
1081文字
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96 03. 視線の向こう

96日目
俺の軌跡を君の視線が射止める


「ん!」
「何、その手」
 ラウンジに行くと、なのがいい笑顔で俺に向かって手を差し出す。
 意味が解らずに首を傾げると、笑みが深くなり。
「先月、アンタにチョコレートあげたでしょ?」
「あっ」
 すっかり忘れていた。
「丹恒は美味しいマカロンくれたのになぁ」
「今から買ってきます!!」
 一部始終を見ていた皆に見送られ、とりあえずケーキ屋へ。
 焼き菓子のアソートを購入し、自分と丹恒用にマカロン、アップルパイ、パウンドケーキにシュークリーム、クッキー。帰車して、アソートをなのと姫子に渡す。
「あら、ありがとう。休憩につまむのにちょうどいいわね」
「強請ったウチが言うのもなんだけど、いいの?」
「いつもお世話になっているからな!」
 そう告げれば、安心したような表情に。
「ありがとう!」
「じゃあ、俺は丹恒と過ごすので」
「ラブラブだね~」
 俺が宣言すると、苦笑された。解せない。
 客室車両へ行き、資料室のドアをノック。
「開いている」
「はーい。失礼します」
 入って来た俺を、丹恒は優しく見つめてきて。
「食べよう」
「お前の部屋でいいか」
「うん!」
 箱を見せると、了承というように頷き。
 先に自室に戻り、ティータイムのセット。
 少ししてやってきた丹恒は、じっと俺の後ろを見つめていて。
「どうした?」
 彼が向けていた視線の向こう。ラック以外特に何もなく、不思議に思って首を傾げていたら抱きしめられた。
「丹恒?」
「駄目だっただろうか」
「う、ううん。急に抱きしめられたから、びっくりした」
 というか、丹恒が自分から抱きしめてくれるって珍しい。
「お前の歩んだ軌跡を、見ていた」
 抱きしめながら振り返ると、お土産とか色々飾ってあったなと思い出し。
「次は、丹恒も一緒に選んでくれ」
「俺が選んでも?」
 恐る恐るというように訊いてくるので。
「もちろん! 俺もお前のために選ぶから、ああいうふうに飾ってくれないか?」
「そう、だな。それも悪くない」
 提案すると、少々悩んだ様子を見せて。でも、最終的に肯定するように頷いてくれた。
 丹恒そういうところだよ。大好き!
 紅茶とコーヒーを用意して、二人でティータイム。
「美味いな」
「なー! 初めて行った店だったんだけど、当たりだ」
「三月に強請られてか?」
「き、聞こえてた?」
「俺も強請られたからな」
「なのも言ってた」
「昨日な」
 何で丹恒には前日で、俺には当日なんだよ!
「三月なりに甘えているのだろう」
 って言われたけれど、納得いっていない。ズルいじゃん。