ウルトがどれくらい親のこと覚えてるのか定かじゃないんですけど、これワンチャン、ストリートチルドレン時代は自分のケツにハートのほくろがあるなんて知らなかったのでは…?という妄想
お風呂とか入ってないだろうし…ミアレに銭湯とか無さそう。
時はハンサムハウスにウルトがやってきた日に遡る。コートを被っていたとはいえ、ウルトの体は雨ですっかり濡れてしまっていた。事務所に着いてすぐ、マチエールは彼を風呂場に案内した。
「湯船に浸かって、しっかり体あたためてね」
「……おう」
「脱いだ服はこのカゴに入れておいてね。それじゃ」
マチエールが出ていくと、ウルトは怪訝な顔でヤミラミの方を見つめる。
ヤミラミは風呂の扉に手を向け、早く入ろうぜとウルトにハンドサインを送る。
「……あいつ、なんでオレのこと拾ったんだろうな」
「ヤァ?」
「まあいいか……あいつの気が変わらねえうちに入っちまおうぜ」
「ヤァミヤミ!」
ウルトは早速服を脱いでカゴに投げ入れていく。雑に放り込まれた服はカゴからはみ出たり、落ちそうになっている。
「しゃあ行くぞヤミラミ!」
ウルトがそう意気込んで風呂のドアノブに手をかけた瞬間、洗面所の扉が開いた。マチエールが顔を出す。
「あれ? まだ入ってなかったんだ。着替え持ってきたからそっちに置いておくね」
「お、おま! なに普通に入ってきてんだ!! 出てけよ!!」
ウルトは股間を押さえてしゃがみ込んだ。お構いなしにマチエールは脱衣所の奥にあるタンスに着替えを運ぶ。
「ごめんごめんすぐ出ていくからさー……ん? わあウルト、お尻にかわいいハートがあるんだね」
「は、はぁ!? なんだよそれ!?」
「ほら、お尻のこの辺りにほくろが……」
「指差すな!! ってか見んな!! 出てけ!!」
「ごめん。じゃ、ゆっくりお風呂浸かってね」
マチエールが脱衣所を後にしたのを見届けてウルトは立ち上がった。風呂のドアノブに手をかけて、ヤミラミの方を向いた。
「なあ……オレのお尻にそんなほくろあるか?」
「ヤミヤミ!!」
「嘘だろ……」
絶望しながらウルトは扉を開けて風呂に入った。左手に蓋を被った浴槽がある。開けてみると、湯気が宙に昇り、熱気を放っている。
蓋を閉めたウルトは風呂場に鏡があることに気がついた。
「オレサマは自分の目で見るまで信じねえ……!」
ウルトは鏡に尻を向けて、首を後ろに回した。ギリギリ、鏡に映る自分が見える。そして、尻をさらに突き出してじっと見つめると……
「な、なんじゃこりゃぁ!?」
鏡に映っていたのは、ウルトのお尻に浮かぶかわいらしいハートのほくろ。衝撃のあまり叫んだウルトの声は、離れた部屋にいたマチエールの耳にも届いた。
「ウルト!? 大丈夫!?」
「なっ!? だから入ってくんなー!!」
「え、でも今なにか叫んでたから……」
「うるせえ!! なんもねえし!! とっとと出てけ!!」
目に涙を浮かべながら訴えるウルトを見て、マチエールは申し訳なさそうに風呂場を後にした。
その後ウルトは上の空で髪と体を洗い、湯船に入った。自分のお尻にハートのほくろがあったという事実を受け止めきれないまま、ぼーっと……ぼーっと過ごし、のぼせてしまった。
焦ったヤミラミがマチエールを呼びに行き、介抱されてしばらく、テーブルに料理のいい匂いが香り出してウルトは目を覚ました。
「あ、よかった起きた。ご飯食べられそう?」
「ああ……美味そうだな」
「ふふ。たくさん食べていいからね」
ウルトは早速テーブルの上に置かれたコロッケに手を伸ばした。するとマチエールがウルトの手の甲に手を置いた。
「こら。ちゃんとフォークとか使わないと」
「う、うっせえ! 分かってんよ!!」
ウルトは顔を赤くしてそう言うと、ビュンっと素早く手を引っこ抜き、フォークでコロッケを差して口に運んだ。
もぐもぐと食べるウルトを見つめて、マチエールは聞いた。
「どう?」
「……うめえ」
「よかった。いっぱい食べてね。ほら、スパゲッティもあるよ〜あとクロワッサンとか……」
今まで食べたことないようなご馳走を目一杯食べて、ウルトの心身はともにあたたかくなっていた。たくさん食べる様子をじっと笑顔で見つめるマチエールから目を逸らしながら、料理の味を噛み締めた。
食べ終えてマチエールが皿洗いをしてる中、ウルトは思い出したかのように疑問を口にした。
「あれ……そういやオレなんで寝てたんだっけ……」
「お風呂上がってすぐ寝ちゃったんだよ」
「そっか……そうか」
のぼせて介抱されたという事実をウルトが知るのは、もう少し後になってからだった。その日はまたいつにも増して、マチエールと目が合わないようにしていたという。
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