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ZN
2026-03-13 19:41:11
608文字
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影|蒙と旺
本編後
熙蒙には兄が殉教者に見えた。
父が生きるなら兄は生き、父が死ぬのなら兄も死を選ぶ。兄は養父の敬虔な信者だ。
その兄は父に刺されて死んだ。
真っ白な空間に二人だけで、ソファに座って古いテレビを見つめていた。
テレビとソファに覚えがある。いつかのアジトで使っていたやつだ。ソファは割と大きなサイズを買ったのに、でかい双子が一緒に座ったらもういっぱいだった。今もだ。
「ここ」
「なに」
熙旺が声をかけてきた。液晶を指さしている。
映像は養父と兄の最後の抱擁を映していた。兄は手にしたリモコンで映像をコマ送りさせる。
「上着をかけてくれたんだ。死んだ俺に」
画面は、父が自らのコートを兄に被せているところで止まっている。
隣の顔を見ても表情には何もない。兄はよろこんでいるんだろうか。
「阿旺は死んでもダディが好きだね」
「殺されても」と言わなかったのは熙蒙なりの優しさだ。自分も養父を好きだった頃がある。
……
違う。自分は優しくはない。兄へ対するただの嫌味だと思いなおした。
(熙旺。どうして俺と生きてくれなかったの)
こうして死んでも聞けずにいる。
熙旺は言う。
「うん。次はダディの実子になる」
熙蒙は呆れてしまう。
熙旺は、兄は言う。
「お前たちと一緒に」
自分は、こんなにも兄と一緒にいたいのだと。
「次があるならもっと俺と遊んでよ。兄貴」
うん、と平らな返事をして兄は頭を撫でてきた。
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