ortensia
2026-03-13 18:49:27
768文字
Public 傭リ
 

(比較的平和時空?)傭リ

犯罪は犯してないけどカリスマ的な芸術家のリ。傭がリの芸術のシンパ。ジャックザリッパーのように、嫌われるような悪人なのに、熱狂を浴びてしまうのなら、そうしなくてもそうなのだろうか。

 ジャックは天才だった。彼の師、ジェームズは早くにそれを見出していた。ジャックは技術のまだ拙い幼少期から、生み出す芸術に人々を惹きつける魅了を持ち、カリスマ性があった。コンセプトや着眼点が人とは逸していたのだ。ジェームズの教えでその魅力はどんどん磨かれて行き、師であるジェームズでさえも、その魅了を受けていたという。そしてジェームズは、ジャックを贔屓にするだけでは飽き足らず、すっかり魅了されてしまう前に、彼から手を引いた。
 だからジャックは今、一人で絵を描いている。
 導く者がいなくても、周りは勝手に彼を持ち上げて、作品を描かせた。ジャックは何もしなくとも、欲しいものはなんでも手に入ったし、やりたいことはなんでも出来た。彼の周囲の人間が、彼がそうと言わずとも、自ら望んで彼の望みを競い合いように叶えたのだ。ジャックは絵を描く以外何も出来なくても良かった。他の人間が彼の世話を焼くからだ。寧ろ、だからこそジャックは、絵を描くだけで良かった。
 それが、ある時を以てジャックの周りの人間がめっきり減った。ぱらぱらとジャックのもとに通う人間がすっかりいなくなり、そしてたった一人となった。
「おはようリッパー、朝飯用意してある。絵の作業は順調か?」
 残った一人はジャックのことをリッパーと呼んだ。残った人物だと思ったが、相手は今迄に見たことのない顔の男のようにも思う。ジャックは自分の取り巻きの顔など覚えていない。
 しかし、リッパー、そんなふうに呼ばれたことはない。
 ただ、男はそれ以外は、それまでの取り巻きとなんら変わらなかった。そしてたった一人でも、ジャックの世話を良く焼いた。そのためジャックは不便を感じず、男に対する違和感も消えて行った。
 そうして今も、魅惑の芸術家を独占して、芸術家は絵を描き続けているらしい。


—————————————————————
いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。