風華学園中等部1年J組。わたしが毎日を過ごすクラスには、学園一の美少年と噂される少年が在籍している。他のクラスの友達から、晶くんと同じクラスなんて羨ましい〜!って、よく言われる。でも、同じクラスだというだけで仲良くなれるとか、お近づきになれるとか、そんなことはなくて。晶くんは人当たりは悪くないし、男子同士でふざけあってる姿も時々見かけるけれど、ほとんど誰に対しても一線を引いた付き合いをしているように見える。毎日同じ教室で過ごしているからこそ、それを感じさせられて少し寂しい気持ちにもなるのだ。でもそんなことは贅沢な悩みなのかもしれない。なんといっても、美形は目の保養だから、ね。
親友のみなみも、最近何やら晶くんを見つめてはため息をついている。入学当初は「確かに綺麗な子だとは思うけど、わたしは背が高い男の子が好みなんだよね」なんて言ってたくせして。
「最近何やら悩ましげじゃないですか?みなみさん」
「ねえ……晶くんって巧海くんのこと好きだよね?」
真剣な顔してとんでもないことを言い出すものだから、わたしは飲んでいたミルクティーを吹き出しそうになってしまった。
「前みんなが男の子同士の恋愛話で盛り上がってた時、よくわかんない、あんまり興味ないかもって言ってなかったっけ?」
思わず声をひそめてしまう。幸い今はお昼休みで、2人でお弁当を食べているベンチの周りにはだれもいないのだけれど。
誰が好きだとか誰と誰が付き合ったとかいう話はみんなよくするけど、男の子同士が仲良くしてるところを見るのが好きな子も、中にはいるみたい。みなみと同じく、わたしにもよくわからないのが正直なところだった。
「そうなんだけど……前、体育の授業が少し早く終わった日があったじゃない?グラウンドから更衣室に向かう途中、体育館の窓をのぞいてみたら男子がバスケやってたの。ちょうど晶くんがスリーポイントきめたところで、あんな小さい体なのに大きい男子たちにブロックされながら決めててすっごいかっこいい!もう好き!ってときめいちゃった。その時ね、見学してた巧海くんが晶くんすごい!って喜んでて、晶くん巧海くんに向かってピースサインしてたんだけど、その時の顔が……顔がね……。」
ほとんど一息で喋った後に、みなみは両手で顔を覆ってしまった。
「……晶くんってこんなふうに笑うんだ、って」
「それは……ちょっと見てみたいかも」
「点入れたらさ、普通はチーム分けで一緒になったメンバーと喜ばない?どうして真っ先に見学席の巧海くん見るの」
その時のことを反芻しているのか、みなみは遠くを見ながら小さくため息をつく。
「あの表情を私に向けてもらうのは、想像すらできないな。好きだと思った瞬間に失恋しちゃった……」
そう、晶くんは、ほとんど誰に対しても一線を引いた付き合いをしているように見える。ボディータッチは男女問わず完璧に避けるし、自分のことを話そうとしない。まるで薄い膜を一枚隔てた向こう側にいるみたいに、誰にも自分の中に踏み込ませない雰囲気を纏っている。……ただひとり、彼のルームメイトである鴇羽巧海くんに対して、だけを除いて。もっとも、本人は無自覚そうだけど。一部の女の子たちが騒いでいるみたいに、恋愛感情があるのかどうかは、わたしにはよくわからない。だけど、晶くんにとって巧海くんが特別な存在だろうということは、わたしもみなみと同意見だった。
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