三毛田
2026-03-12 22:05:25
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94 01. 気になる人

94日目
他の人からも気になる人らしい

 最近よそのクラスでウワサの丹恒。
 初めの頃は、ちょっととっつきにくい、真面目な人だと思っていた。
 だけど、ある日のこと。教科書を忘れてしまった俺に気づき、そっと見せてくれた優しい人。
 そして。
「なんで急にウワサに?」
「さあな」
「お前って、人見知りだろ」
……多少は。というよりも、箸で人を指さすな」
 怒られたので、素直に箸を下ろす。
「誰にでも優しくしただろ」
「人見知りなのに、するわけがない」
 ジトッとした目を向けるけれど、彼は首を振るだけ。
「ラブレターをもらってるのは知ってるぞ。返事は書くのか?」
「さすがに不誠実な真似はできない」
「真面目か」
 唐揚げを頬張ると、冷めているのに柔らかくて美味い。
「ご馳走様でした」
「お粗末様」
「膝枕して」
「ゆっくり寝転がれ」
「はーい」
 弁当箱を丹恒に渡し、彼の太ももに頭を乗せる。
 嫌なら断るし、無理やりにでも下ろすから今日は優しくしてくれる日のようだ。
 半月ほど前までは、ただのクラスメイトて少しだけ気になるって感じだったのに。
 今では、こうして弁当も用意してくれて甘やかしてくれる恋人。もちろん、弁当の材料代は渡している。
 手間ではないのかと問うたら、
『二人分も三人分も一緒だ。ただし、余分に作ってしまった時にしか渡せないが』
 そんな返事とともに律儀に教えてくれて。
 多くて、週に三回ほどご同伴に預かっている。めちゃくちゃ美味い弁当で、午後も頑張ろうって気持ちに。
「ちゃんと恋人がいるからって断れよ」
「もちろん」
 俺を見下ろす瞳は、眼鏡越しでも柔らかいのがわかる。
「ちゅーしたい」
「学校だから駄目だ」
 ぺシッと軽く額を叩かれて。
「じゃあ……俺の家に寄って。キスしてから別れよう」
「お前は、それで我慢できるのか」
「する。週末まで、我慢するからキスしたい」
 駄目? と、優しく髪を撫でてくれていた手を掴んで、掌にキス。
「お前は狡いな」
 とは言いつつも、どこか期待している様子で。
「じゃあ、そういうことで」
「わかった」
 心地よい風が、俺たちの髪を揺らす。
 ただのクラスメイトから、優しくしてもらったから気になる人になり。今では、俺を甘やかしてくれる恋人。
「丹恒、好き」
「ああ。俺も好きだ」
 そんな表情を向けられたら今すぐ、キスしたくなっちゃうじゃん。
 でも、約束したから我慢我慢。
 こんな素敵な人、誰もが好きになってしまう。でも、恋人になることを許されたのは俺だけ。
 それに優越感を感じて。
「穹、表情が緩んでるぞ」