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5795文字
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大正解への道の鍵は既にあった

2026WD
2026VDと繋がってます。
お返しを複数買っちゃうロウとお返しがどんどん出てきて、「えぇ!?」って驚くリンウェルが見たくて書き出してみたは良いが良い着地点が見つからず、でもある程度書いたところで消すのもあれだから無理矢理着地点用意して供養
2ページ目は補足のようなあとがき

……どうすっかな」

はぁ……と大きなため息と共に零れた呟きは吐き出した白い息と共に上空へと消えていった。


シスロデンーー中央広場
多くの行商人が露店を広げるこの場所はシスロディア内で多くの人が賑わう場所となってる。
加えて今の時期はとあるイベントが間近に迫っている事もあり、いつもよりも賑わいが更に加速しているように感じるのは気のせいではないだろう。

"ホワイトデーのお返しはこれで決まり!"

そんな謳い文句のポップを掲げる店の前を何度往復した事か。
”ホワイトデー” 
それは昨月のバレンタインと対になる季節行事の一つである。
バレンタインに女子からプレゼントを貰った男子がお返しを贈る日。だが最近ではお返しを貰う貰わない関係なく、男子から気になる女子へプレゼントと共に想いを伝える機会の一つとしてされる事も多くなってきていて、簡単に言えば男子版のバレンタインデーとも言える。
そんなロウもホワイトデー関連でこの中央広場へと足を運んできた訳で。

昨月のバレンタインの日にロウはリンウェルからチョコを貰った。……多分。
言い切れないのは直接本人から聞いた訳ではないので確証が持てないからだが恐らくそういう意味が込められたチョコだったとロウは受け取っている。
それにもし完全な勘違いだったとしても最近浸透し始めた風潮のおかげでお返しではなく、ホワイトデーにちなんでロウからリンウェルへのプレゼントだという事にしてしまえばいい話だし。
そういう経緯でリンウェルへのホワイトデーに贈るプレゼントを探し求めている訳だが……いかんせん、何を贈ればいいのか全く見当がつかない。
バレンタインの大定番と言えばチョコだがホワイトデーはそれがない。同じく定番と言えるお菓子類でもクッキーにマシュマロ、キャンディーなどとホワイトデーと言えばこれ!といったお菓子はないし、アクセサリー類や小物系などを贈る人も多くいる為、こちらもお返しの定番と言えば定番と言えてしまう。ホワイトデーはバレンタインに比べて選択肢が無限大に存在するのだ。だからこそ、ロウは今頭を抱え悩んでいる。
お返しを贈るからにはリンウェルが一番喜ぶものを贈りたいと思う。ただリンウェルならどれをプレゼントしても喜んでくれる気がするからこそ、何をプレゼントすれば一番喜んでくれるのかが分からない。

(シオンはああ言ってたけどさ……)

つい先程までこの場に居た彼女の言葉を思い出す。
さっきまでリンウェルの親友でもあり、センスのある彼女ーーシオンにプレゼント選びを付き合ってもらっていた。リンウェルと特に仲が良いシオンならリンウェルが一番喜ぶものがなんなのか分かるんじゃないかと思って。
共に露店を巡り、いくつか候補にしているものを伝えて意見を募るとシオンから返ってきた答えは一つだけ。

『あなたがリンウェルにプレゼントしたいと思う物を贈るのが一番よ』

自信を持ちなさい。どれも良いセンスしてると思うわ。
そう言ってロウの背中を軽く叩くとシオンは片手に持つドーナツを美味しそうに頬張る。ちなみにもう片方の手に持つ箱の中にも大量のドーナツが詰められている。それはロウが今回付き合ってもらうお礼にとシオンに奢ってあげたものだが奢った量に対し、得られた答えは何ともシンプルかつ一言でなんだが比に合わないような気が……
シオンにロウが選んだ候補の中からリンウェルが一番喜びそうな物を選んでもらうつもりだったのに返ってきた答えは最終的には自分で決めろ、との事。
あっという間にペロリとドーナツを食べ終えたシオンは自分のやるべき事は済んだと言ったように「それじゃあ、ご馳走様」なんて言って広場を後にしてしまった。
結局ふりだしに戻る事になり、こうして頭を悩ませながら露店の前を行ったり来たりしているという訳だ。

「俺がリンウェルにプレゼントしたいと思う物が一番って言ってもよ……

それが選びきれないからシオンに選んで貰いたかったんですけど!?
もうこの場に居ないシオンに向けてロウは心の中で泣き言を零す。ホワイトデーはもう明日に控えており、時間はない。

「兄ちゃん、まだ悩んでんのかい?愛しい彼女へのプレゼントを吟味するのは良いがうだうだしてっと売り切れちまうぜ?」

現時点でプレゼント候補の一つを扱っている露店の店主がロウに声を掛ける。そりゃ、何度も店の前をうろちょろしていれば顔も覚えられるだろう。
未だ悩むロウに自店の商品を買わせる魂胆かとも思ったが実際にロウが候補に入れていた商品は気付けば残り僅かとなっていた。今も若い男性が一人、同じホワイトデーのお返しにと購入を済ませている。この調子だといざ、これにしよう!と決めた時には売り切れている可能性も考えられる。

「さぁ、兄ちゃんどうすんだ?残りあと三つになっちまったぞ?」

露店の店主がニヤリとした笑顔でもう一度発破をかけてくる。

「~っ!!だー!買う!買うよ!おっちゃん、これ一つ!」
「毎度あり!」

露店の店主は威勢のいい声をあげる。全く商売上手とはこういう事を言うのだろう。それとも俺がチョロいだけなのか?
ともあれリンウェルへのお返しを手に入れたロウは再び露店が立ち並ぶ広場の中の方へと足を進めていった。


***


宮殿から通りを見下ろせるここの階段はロウのお気に入りの場所だ。

「ロウからわざわざ呼び出しだなんて珍しいね?」

ひょこっとロウの顔を覗き込むように微笑んだリンウェルに「……まぁな」と誤魔化すように眉尻を下げた笑みを返すと隣り合って階段へと腰を下ろす。
リンウェルの言う通り、基本ロウからは仕事の合間を縫って会いに行く事が殆どの為、今日のように事前にロウの方から約束を取り付けるのは珍しいかもしれない。
そよぐ風の音や賑わう街中の人々の声が鼓膜を優しく揺らし、暖かな日の光が二人を照らす。

「今日はさ、リンウェルに渡したいものがあるんだ」
「渡したいもの?」

ロウは肩に背負っていたナップザックの中から小箱を取り出す。小箱にはリンウェルをイメージした青緑色のリボンを添えて。
小箱を差し出せば、リンウェルは未だによく分かっていない様子を見せつつも「……開けていい?」と聞いてくる。コクリと頷いてやれば添えられた青緑色のリボンを解いて、小箱を開けた。

「わ~……!綺麗……!!」
「”琥珀糖”っていうお菓子なんだってさ」
「凄い……キラキラしててまるで宝石みたい」

赤、青、ピンク……透明さもありながらカラフルな色を纏い、小箱の中に散らばる宝石達は”琥珀糖”と言って寒天に砂糖と着色料を加えたものを乾燥、固めたお菓子だ。
その見た目から食べる宝石とも呼ばれているらしい。……とは言え、勿論ロウも琥珀糖というお菓子を知ったのは今回が初めてだから先の説明は全て露店の前の看板に書いてあった受け売りな訳だけど。
リンウェルは小箱から一粒取り出し、まじまじと見つめている。日の光が当たる事によって、より煌びやかな輝きを放っているようにも見えた。

「ロウ、ありがとう!これもどこかのお土産?」
「いや、お返しだよ」
「お返し?」
……ほら、今日はその……ホワイトデーだろ?」

ホワイトデーという言葉にリンウェルは全てを察したのか驚いたように目を丸くした後、どこか気まずそうに顔を伏せた。チラリと垣間見える横顔から頬が赤らんでいる様子が窺えて、その反応にやはりあのチョコはそういう意味でのものだった事を確信し、嬉しさとほんの少しの照れくささが改めて込み上がる。

「まさか気付かれるとは思ってなかったな~……だってあのチョコは変なものを入れてロウに食べさせて実験しようとしてたんだもんね?」
「ぐっ……あれはその……すんません」

バレンタインのチョコだとは気付かず、トンチキな発言をしていた事を取り上げられて言葉が詰まる。今思うと何言ってんだ、こいつと自分でも思うもんな……。けど仕方ねぇじゃん。まさかリンウェルからバレンタインにチョコを貰えるなんて思ってもみなかったんだから。しかも手作りで。
そんなロウの様子にリンウェルはクスクスと笑みを零す。

「私もちゃんと言って渡さなかったのもあれだし……改めてお返しありがとう」

ふわりと柔らかい微笑みを向けれられてロウの表情も同じく緩む。

「それともう一つ渡したいのがあって……

ごそごそと再びナップザックの中を漁り、目的の物を取り出す。先程の小箱と違い、ラッピング袋に包まれたそれは蝶の形を模したシルバーの髪留めで中央にはアメジストの宝石が埋め込まれている。

「良かったらこれも受け取って欲しい」

リンウェルへのお返しを探し求めていたあの日。先程渡したお菓子を購入した後、実はもう一つの露店へと足を運んでいた。それがこの髪留めを取り扱っていたアクセサリーを扱うお店。シオンに相談する際、いくつかの候補を伝えていたが実はその内の一つにこの髪留めも入っていたのだ。
最終的に露店の店主の一押しもあって一度はお菓子を贈る事に決めたがやはりあの髪留めがロウの心の中でずっと残っていて結局購入してしまったという訳だ。

「ええ!?いいの?」
「おう、元々お菓子と髪留めどっちにしようか悩んでて……結局決められねーからどっちも買っちまった」
「こ、これ結構高かったんじゃない……?」

恐る恐る聞いてくるリンウェルにロウは苦笑して誤魔化す。小ぶりとは言え、髪留めに埋め込まれてるアメジストは本物らしく確かにそこそこに値段が張った事は内緒だ。
”リンウェルに似合いそう”という理由だけで値段も見ずに購入を決めて、伝えられた値段の額に一瞬時が止まりかけた事も。
ロウの反応からある程度を察したのだろう、リンウェルは髪留めの入ったラッピング袋を大事そうに抱えると「……ありがとう、大事にするね」と小さく呟いた。

「それと……
「ま、まだあるの!?」

これだけでも十分すぎるのにロウはまたまたナップザックの中身を漁り始める。中から出てきたのは手のひらサイズのフクロウのぬいぐるみだった。

「これは髪留めを買った店の隣に偶然あって……ご当地ダナフクロウとかいうぬいぐるみらしいんだけど」

髪留めを購入した露店の横の商品棚に並べられた、ちんまりとしたダナフクロウのぬいぐるみ達。リンウェルの影響か、ロウもダナフクロウのグッズを見掛けると反射的に反応してしまうようになってしまったらしい。
”ご当地ダナフクロウ”と銘打ったぬいぐるみはシスロディア限定で売っている手作りぬいぐるみらしく、ご当地という名だけあってシスロディアをイメージしたのであろう鮮やかなミルキーブルー色のダナフクロウが雪の結晶を模した飾りを頭の部分に付けている。

「つい最近売り出し始めたらしいからリンウェルもまだ知らねーんじゃないかなって」
「かわいい~!!こんなのが売ってるなんて知らなかったよ!」

可愛い、可愛い!と手のひらに収まるぬいぐるみを前に暫く興奮した様子を見せていたリンウェルだがお菓子に髪留め、ぬいぐるみと溢れかえる自身の腕の中を見つめると「……ふふ」と堪え切れなかった笑い声を漏らす。

「それにしてもこんなに沢山……私が渡したのなんてチョコ一つだよ?」
「俺も最初はこんなつもりじゃなかったんだけどこの中でリンウェルが一番喜んでくれそうなのはどれかってなった時、全然決まらなくてさ。だったらもう全部渡しちまえ!って」

シオンも俺がリンウェルにプレゼントしたい物を選べばいいって言ってたし、悩んだ末に出た答えがコレ。全部買っちゃえば良いじゃん?だ。
それって結局選びきれてないんじゃない?って思われるかもしれないが細かい事は気にしない。俺がリンウェルに贈りたいと思ったやつが全部だった。それだけの話。

「そこで一つに選びきらずに全部!ってなるのがロウらしい。……それともあれかな?数打てばどれかは私が一番喜ぶ物があるでしょ?みたいな感じだったりして?」
「ちっげーよ!俺は本当に全部ーー」
「なーんてね!嘘嘘、冗談だよ。……ちなみにどうしてロウは”コレ”を選んでくれたの?」
「特に深い理由とかはねーけど、お菓子はリンウェルって甘い物好きだし、それによく露店とかで宝飾品を見てたりするだろ?だからこういう宝石みたいなお菓子とか喜んでくれそうかなーって。髪留めは……俺が単純にリンウェルに似合うなって思って……。ぬいぐるみはフクロウだし、言わずもがなって感じ?」

一つ一つ選んでくれたプレゼントの理由を聞いたリンウェルは愛おしそうに腕の中の贈り物達を見つめながら呟いた。

「ロウはさ、私が一番喜ぶものがどれなのか決められなかったって言ってたけど私はロウから貰ったものならなんだって一番嬉しいよ。お菓子も髪留めもぬいぐるみも……ロウが私の事を思って選んでくれたものならなんだって……だから全部大正解!」

頬を染めて、嬉しそうに笑うリンウェルの笑顔に胸の鼓動が大きく跳ねあがる。……あぁ、俺はこの笑顔が見たかったんだ。

”あなたがリンウェルにプレゼントしたいと思う物を贈るのが一番よ”

自分なりに悩んで出した答えを大正解へと導けたのはシオンのアドバイスのおかげだ。あの時アドバイスを求める際に払った対価と比に合わないんじゃないかとか疑って悪かったよ。今度追加のお礼を持っていこう。
リンウェルの満点笑顔を見つめながらそんな事を考えるロウであった。