白殊皎(しらよし こう)
2026-03-12 08:03:35
2448文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

司令室より愛を込めて

CBC概念礼装ありがとうございます。
書かねばならぬと無駄な使命感に燃えて書きました。

この小説はフィクションです。
↑実在名称が出てくるので一応……。

「あーもー。また出動ですか」
 夜食のカップラーメンの最後の一口をすすり込んで斎藤一は独りごちた。
 インカムの向こうからは刻一刻と推移する状況が聞こえてくる。
 テロに誘拐、立て籠もり──それがほぼ毎日、なんでもござれで暗黒都市と名高いこのKYOTO。
 その治安を守る……といえば聞こえはいいが要は目には目を、歯には歯を、の実力行使。
 それが自分たちの所属するカルデア機動隊「シンセングミ」だ。
 身体には悪い、とは思いつつお気に入りなので残ったスープまで飲み干して容器はゴミ箱へ放り込んだ。
『斎藤ォ! 何してやがる、さっさと来い』
「はいはい、わかってますって」
 インカムをつんざくようなドスのきいた声が彼を呼ぶ。
 普段は局長と本部に待機することの多い彼が行動部隊を率いるということは、相手はかなりの大物。
 それは自分が率いる三番隊と、実質「シンセングミ」トップの一番隊を率いる沖田総司が呼ばれていることでも明らかだ。
「三番隊隊長・斎藤一、到着しました」
 武装を整え、司令室に入る。
「斎藤君、ご苦労だね」
「遅ぇぞ、斎藤」
 そこで待っていたのは艶やかな黒髪を背に長し、かっちりとしたスーツに身を包んだ美丈夫──「シンセングミ」の局長・近藤勇その人だ。
 その傍らにはピリとした空気を纏った紅眼の狼と怖れられる「シンセングミ」の副長・土方歳三。
 昔はバディだったというこの二人に率いられるこの「シンセングミ」は実力は十分だが、一癖も二癖もある連中の溜まり場でもある。
「揃いましたね。で、今回はどんな感じですか?」
 一瞬ぱっとその場に花が咲いたような雰囲気を醸し出したのは一番隊隊長・沖田総司。
 大抵はその華奢で可愛らしい容姿に油断するのだが、彼女がこの「シンセングミ」で最も恐ろしい人物である。
「あぁ。今回は不逞浪士テロリストが政治家と僧侶を人質に西本願寺に立て籠もっている」
「ありゃま、西本願寺さん。なにやってんだか」
「おおかた私達を追い出したバチが当たったんじゃないですか」
 この「シンセングミ」が結成され、のちにイケダヤ屋事件と称されるテロリスト達の鎮圧をきっかけに勇名を馳せた後、入隊希望者が殺到しその頃の屯所ベースでは手狭になった時、当の西本願寺を一時的に借りていたのだが──その頃の「シンセングミ」は清濁併せ呑んだあまりにも破落戸ならずものの集団だっため、土地と建物を提供するから出て行ってくれと懇願されたことがあった。
 その後紆余曲折を経て人理継続保障機関カルデアが「シンセングミ」を麾下に置くこととなり、正式にカルデア機動隊「シンセングミ」として、KYOTOの街を守護することになり、いまはこうして立派な屯所を得て、治安維持部隊として動くことが出来ている。
「思うところはあるかもしれないけれど、そこは我慢して欲しい」
「大丈夫ですよ、近藤さん。なんとも思ってませんから」
 にこ、っと笑顔だけは可愛らしく沖田は言ってのける。
──いやそれ、絶対思ってるでしょ。
 斎藤はその笑顔に薄ら寒いものを感じて肩をすくめる。
「で、マスターの奴はなんて言ってる?」
 土方が近藤の手元のタブレットを覗き込む。
「今は相手側と交渉中だそうだ。決裂したら──わかるな、歳」
「十中八九、そっちだろうな」
「西本願寺のマップと相手の配置は端末に送っておく。待機中に確認しておいてくれ」
「わかった」
「不逞浪士は片付けちゃっていいんですよね」
 ジャキン、と獲物を鳴らして沖田が言う。
「総司──人質がいることを忘れないでおくれよ?」
「了解でーす」
 近藤の言葉に沖田は明るく応えた。
 突入すれば、そんなことは綺麗さっぱり忘れるだろう。
「よし、沖田・斎藤、配置につくぞ」
 防弾チョッキとチェストリグを確認し、革の手袋を填める。
「歳、軽装過ぎないか?」
「大丈夫さ。いざという時動けねぇ方が問題だ」
 近藤の言葉に土方はニヤリ、と笑ってその髪を一房引き寄せた。
「あんたはここで、しっかりと俺たちを見ててくれりゃいい」
 そしてそこに軽く口付けを落とす。
「頼むぞ、歳」
 普通ならそんなことをされれば動揺したりしそうなものだが、近藤は何事もなかったかのように土方の肩に手を置いた。
『またやってますね』
『そうだね、沖田ちゃん』
 昔はバディ──という触れ込みではあるが、この二人は現在進行形で恋人同士である。
 「シンセングミ」の隊員達はもれなく、全員が、知っている。
『さっさと暴れたいです』
『一応交渉決裂するまで待ってね……
 上司二人の自覚のないイチャつきに沖田と斎藤は遠い目をして次の司令を待つ。
 現場までは車なら五分とかからぬ距離だ。
 交渉が決裂してから動いたとて問題はないだろうけれど……
「じゃ、行ってくるぜ。近藤さん」
「あぁ」
 しばし見つめ合った二人はようやく、視線を沖田たちの方へ向けた。
「新選組、出るぞ!!」
「はい!」
「了解!」
 慣れている二人は何事もなかったかのように返事をした。

 不夜城と化したKYOTOを「シンセングミ」隊員達を乗せた装甲車両が唸りを上げ突き進む。
 現場では規制線が張られてはいるが野次馬もまた多かった。
「野次馬どもを近づけんなよ。流れ弾が当たっても責任取らねぇからな」
 副長たる土方が姿を現したことに、野次馬も含め周囲がざわついた。
 事の大きさを改めて知ったのだろう。
「配置につけ。俺たちの出番は必ず来る」
 隊長が着けたインカムに向かって土方は言う。
『いつでもいけますよ』
『三番隊、準備OKです』
 二人の声が返ってきたところで上空を見つめる。
 サーチライトが空を舞い、小煩い報道のヘリコプターが飛び回る。
 直属の隊員たちも配置についた。

──いつでも来やがれ。

 狼は食い入るような眼で現場を睨みつけた。
 交渉が決裂するまで──あと……