三毛田
2026-03-11 22:07:48
1079文字
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93 10. 独りきりの夜に

93日目
寂しさを、君と埋める

……
 一人になるのを待ち望んでいたはずなのに、いざ独りにされると寂しくて。
「寂しい」
 そうこぼしても、誰も慰めてくれない。だから、自分でどうにかするしかなくて。
「丹恒、まだ起きてるか?」
 真っ暗になった廊下を、スマホのライトで照らしながら客室車両まで向かい。
 控えめに資料室のドアをノック。
「起きている。どうした」
「ちょっと眠れなくて」
「そうか。温かいものは……少し待っていろ。今ホットミルクを作る」
「いや。そこまでしなくても」
「俺も飲もうと思っていたから、待っててくれ」
「わ、わかった」
 丹恒は少し悩むように顎に手を当てた後、資料室を出ていく。
 強く止められなかった自分が情けない。
 それに、寂しさを埋めるように丹恒にすがろうとしたところも。
「本当情けないなぁ」
 椅子に座って、アーカイブ端末をいじる。
 ふと適当に開いた資料は、最近丹恒に渡したもの。それが、登録されていた。
 ちょっと無図痒くて。同時に嬉しくて。口が動くのを止められない。
「嬉しいなぁ」
 自分が、丹恒の力になれていることが。
「穹、開けてくれ」
「はーい」
 きっと両手が塞がっているのだろう。扉の向こうから、俺を呼ぶ声。
 扉を開けると、案の定湯気の立つマグカップを両手に盛った丹恒。
「椅子借りるな」
「ああ。お前が座っていろ」
「ありがとう」
 一つを受け取り、椅子に座ってそれをゆっくり飲む。
 じわりと、ミルクの温かさが体中に染み渡っていき。
「蜂蜜入り?」
「そうだ。ジンジャーシロップにしようかと思ったが、お前にはこちらの方がいいだろう」
 口元にかすかに笑みを浮かべながら、マグカップから一口。
「うん。美味しい」
 思っていたより自分の体が冷えていたのに気づいたのは、半分ほど飲んでから。
……直前までみんなと一緒に騒いでいたから、いざ一人になると寂しかった」
「そうか」
「丹恒と一緒に寝たいって言ったら……困るか?」
「お前の部屋に行けばいいか」
「丹恒の布団じゃ駄目か?」
「俺の布団は、一人用だ」
 若干揶揄うような声色。
「じゃあ……俺のベッドで」
「わかった。飲み終えたら、向かおう」
「お願いします」
 今は彼との時間を大切にしたくて、残りのミルクはゆっくり飲む。
 丹恒もそれに気づいたのか、俺の飲むスピードに合わせてくれている。
「ご馳走様でした」
「お粗末様。マグカップを片付けたら、眠ろう」
「うん」
 手を繋いで、廊下を歩く。
 丹恒と二人で寝るのが楽しみだ。
 きっと俺は彼が好きなのだろう。