三毛田
2026-03-10 22:25:09
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92 09. 「好き」の一言が宝物

92日目
君からの好意は宝物だ

「お前が好きだ、丹恒」
 それはただ一時だけの、間違えた感情。
 そう告げたいのに、唇が張り付いて言葉は外に出ない。
「そうか」
 動揺を悟られないようにしながら、いつものように淡々と返す。
「もう。なんでそんな冷静なんだよ」
「お前は、俺への好意をまったく隠さないだろう」
「そりゃあそうだ。うん。だって、好きって気持ちが抑えきれないから!」
 眩しいほどの笑顔を、こちらへ向けてくる。
 穹から好意を向けてもらえるのは、正直に言えば嬉しい。
 だが、彼からの好意はいつか俺の足枷になると思っている。
 それでもいいと思っている自分もいるけれど、彼の足枷にだけはなりたくない。そんな我儘。
 こうして己の気持ちに素直になれるようになったのは、穹のお陰ではある。
「なの、聞いてよ~。今日も丹恒にフラれた~」
 嘘泣きしながら、彼は三月の隣へ。
「いい加減諦めたら?」
「なの、冷たい」
 ぶー。と、不満そうにしてからまた俺の隣に戻ってきて。それから腹に抱き着いてくる。
 諦めの悪い男の頭を、優しく撫でてやれば。
「うん。丹恒大好き!」
 嬉しそうに叫びながらぐりぐりと、顔と頭を押し付けてきて。
「なんでこんなラブラブなのに、付き合わないの」
 そんな三月の呟きはスルー。
「今日は一緒に寝よう」
「昨日も寝ただろう」
「毎日寝たいんですよ。丹恒はわかってないな~。イテッ」
 ぐりぐりと押し付けながら若干馬鹿にするように告げたので額を弾くと、ようやく離れた。
 結局、押し切られて球と二人、彼のベッドで寝ることに。
「嬉しそうだな」
「当たり前だろ? 丹恒が好きだからな」
 恥ずかしがることなく、まるで当たり前のように告げてきて。
 くすぐったくて、だけど嬉しくて。でも、答えられない。
「俺と一緒に寝るのなら、静かに。それと、早く寝ること。いいな」
「はーい」
 返事だけは、相変わらず一人前だ。
「手、繋いでいいか?」
「ああ。好きにしろ」
「ありがとう」
 手を繋ぎ、目をつぶると彼の温もりですぐに眠気が。
「おやすみ、丹恒」
 優しい声が耳に届き、俺は眠りの海へ。
「おはよう、丹恒」
……
「なんで!」
 俺より早く起きたらしき穹が、優しい表情で俺を見ていた。悔しくて鼻をつまむと叫ばれた。
「お前は、なぜ」
「丹恒と一緒だったから、今日は早く起きちゃった」
 そんな言葉とともに、抱きしめられる。
 どうしようか。
 心臓がうるさい。
 自分で思っているよりも、彼が好きだ。
 応えられないと、応えないと決めているのに揺らぎそうだ。