利一
2026-03-10 03:37:04
969文字
Public レオジャミ(小説)
 

【レオジャミ】磁石のような

お別れするレオジャミです。

「別れてください」
 情交の余韻に浸る甘やかな時間、ジャミルはそう言った。
……何が不満だ」
「いいえ、なにも」
 ベッドを出て行こうとするジャミルをレオナは後ろから抱きしめる。汗をかきしっとりと濡れた肌がふたりの隙間を埋めるようにぴたりと張り付いた。
「不安にさせたか?」
 レオナの問いにジャミルは「まさか」と振り返る。
「あなたってば、付き合い出してからとんでもなく優しくなって。こんなベタベタに甘やかされて愛情を疑うほど鈍くはありませんよ。たまにする子どもじみた意地悪だって俺の関心を引きたいからでしょう?かわいい人。あなたに愛されて、俺は今、人生で一番幸せです」
 へにゃりと柔らかく笑うジャミルにレオナは胸が騒めいた。
「じゃあなんでだよ」
 幸せだというなら、それを享受すればいい。
 レオナはジャミルの顔に掛かった髪を払い頬を撫で、額、目尻、頬へと唇を落とし、軽く耳たぶを噛む。その温もりに身を委ねたくなるのを抑えるようにジャミルは唇を噛むと、そっとレオナの手を剥がした。
「これ以上いるときっと離れられなくなるから、そうなる前に手放したいんです」
 ふたりの関係が学生の間だけのものであることは、お互い暗黙の内に了解していた。国も違えば立場も違う。なによりそれぞれが望む未来の形が違った。
 国政に取り組みたいレオナと自由を得たいジャミル。ふたりが隣り合ったパズルのピースのようにぴたりと合うのは単に学園という枠に収まっているからに過ぎないのだ。
「あなたを好きになればなるほど、苦しくて息ができなくなる」
 触れた肌から震えが伝わる。それを止めたくて、レオナは強く抱きしめた。
「あなたと一緒にいるために、他のすべてを諦めようとさる自分がいるんです。何もかもを投げ捨ててでも、あなたといたいと心が叫んでる」
 でも、とジャミルは顔を覆う。
「それは俺じゃない……俺は、あなたの愛した俺でいたいんです」
……
 嫌いになったからと言われたら、そのほうがどんなに楽だったか。こんな風に言われては、レオナに頷く以外の選択肢はなかった。
「ひでぇ男」
 額に唇を落とすとジャミルの目から涙が溢れる。
 自分から言い出したくせに別れたくないと泣き出したジャミルを、レオナは朝陽が差し込むまで抱きしめていた。

end