望月 鏡翠
2026-03-09 23:06:11
889文字
Public 日課
 

#2020 地獄のような街2



 戦火から離れた場所で、キル数を稼ぐことができるスナイパーの立場は、安全に思われるかもしれないが狙われやすくもある。しかし、ここでは敵は組織ではないし、戦場でもないから、ヘイトを稼ぐこともない。
 待機しているスポットは寝心地がいいとはいえないが、最低限の居心地を整えることはできる。これも、いいところだ。同じ都市内に拠点があるし、乗り物も使用できるから、何十キロもする装備を担いで移動しなくてもいい。
 生活必需品を持ち歩く必要がないから、その分居心地を良くするためのものを詰め込むことができる。
 お前たちが苦しいと思っている場所は天国のようだろう? なんてあんまりしつこく言いすぎるのも、戦場帰りを鼻にかけてイキっているようでダサいからこの辺にしておこう。
 体の下に毛布を敷いて、横たわる。
 本番だと体を一歩も動かせないから待機と言われたら、このままの格好で糞尿を垂れ流すんだぞ。信じられるか?
 ああ、また出ちまった。嫌になるな。
 ともかく、今いる場所は快適ってことだ。
 鈍った体でもまだ半日くらいはどうということはないのに、まだ出勤して一時間くらいしか経っていない。
 硬い銃に頬を押し付けスコープを覗き込んでいると、そのうち体温と馴染んで体の一部のようになってくる。
 拡大された分だけ狭くなる視界の中で、目標を捉える。
「目標の特徴を再度確認する」
 服装と髪の毛の色が合致していることを確かめる。本人で間違いない、と思うことにする。
「キルゾーンに入った。撃っていいか」
 この国では、人の形をしたものを撃つことができる。
 人間ではないからだ。ダーリンという超常現象で復活した悪人。死んでいる上に悪人だから、こちらも罪悪感なく撃つことができる。ダーリンであることが確認できたら、現場判断で良い。結構なことじゃないか。
「取り逃すなよ」
 引き金を引く。
 ダーリンを倒す方法はただ一つ。心臓に特製の銀の弾丸を打ち込むこと。
 残念ながらこの距離で心臓を狙うのは、難しい。
 俺の役目は、安全にダーリンを処分するためにその動きを封じることだ。