ふじしろ
2026-03-09 08:18:54
2647文字
Public 浄皇
 

【3/20サンプル】(C6H10O5)n

浄皇/R-18/A5/本文24ページ/200円
旧荒廃地区に絡んだ調査依頼を受けるこーさんと駆り出されるじょーさんの話。
・旧荒廃地区についてまるっと捏造してます。捏造なのでそんな設定はないです。
・ネームドのモブキャラが出てきます。
上記について問題ないという方に少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
大変恐れ入りますが、いたしてる描写はとてもぬるいですが一応R-18です。
※サンプルはどなたでもご覧頂けます

ウィズダムの営業前のミーティング、そこで宗雲が俺に声を掛けてきた。
「皇紀、お前に頼みたい調査がある」
わざわざ俺を指名する理由は何だと思いながら宗雲の言葉に返事をする。
「俺にか?」
「今、赤い家に相続問題が起きている」
俺を指名の理由で真っ先に思い付いたのは旧荒廃地区絡みということでだったので、彼の答えにそういうことかと納得した。
「赤い家? 有名なの?」
宗雲の言葉に颯が反応を示す。
「旧荒廃地区の長老の家だ」
「長老?」
「荒廃地区の一番偉いじいさんだ」
颯の疑問に答えてやると彼はへーと当たり障りのない反応を返した。
あまり興味は湧かなかったようだ。
「赤い家の相続の話はもう済んだはずたが」
長老は数年前に亡くなっており、彼の遺産相続についてはその時にすべて片が付いているはずだった。
個人的に興味があって調べたが、長老はかなり細かい人だったらしい。
残してあった遺言状にはもれなく資産について書かれていたと聞いている。
「ああ。だから調査依頼が来た」
「何を調べればいい?」
「相続人を名乗る人物は長老の隠し子だと言っているらしい。DNA鑑定の結果は血の繋がりが濃厚と出たそうだ」
……クローン」
黙って話を聞いていた浄がぽつりと呟いた言葉に三人でハッとする。
カオスイズムがクローンに関する技術を持っていることは雪見摩利央の件で確認をしている。
彼らが何かを狙って動いている可能性は十分ある。
「なるほど。分かった」
宗雲に向かって答えると、彼は小さく頷いた。
「何かあれば浄を借りるぞ」
「ああ、構わない」
「え、何で?」
俺の言葉に颯が不服そうに声を上げる。
いつもは俺がいちいち一緒に行動するやつを指名したりしないからだろう。
「てめえは感情が顔に出過ぎる。旧荒廃地区絡みには連れて行けない」
「颯、あそこに住んでいたのは皇紀のような人間ばかりじゃない。裏社会の住人も多かったからだろう」
俺の言葉を宗雲が補足する。
「その点、こいつはうってつけの人材だからな」
俺たちの様子を遠巻きに見ていた浄にそう伝えると彼は分かったよと素直に答えた。
「じゃあ後で詳しい話を聞かせてくれ。一応依頼内容を把握したい」
「分かった」
浄の言葉にそう答える。
旧荒廃地区の再開発は順調に進んでいるらしい。
ならばそう遠くない将来に赤い家も解体されるだろう。
そのことも踏まえると確かにぽっと出てきた隠し子など怪しさしかない。
降って湧いてきた長老の相続問題に胸を何かが引っ掛かるような、何とも言えない気持ちが過った。



家に帰ってあれこれを片付けてようやく腰を落ち着け一休みしていると、部屋とキッチンを仕切るドアが突然開いた。
そこにいたのは合鍵を持っている浄だった。
いつもは寄り道して来るのかもう少し遅い時間にやって来るが今日はやけに早い。
「詳しい話を聞きに来たよ」
そう言って浄はローテーブルを挟んだ反対側に腰を下ろした。
「ずいぶん早い到着だな」
まさか今日の今日で、しかもいつもより早い時間に彼が来るとは思っておらず揶揄して言うと浄はふふっと意味ありげに笑った。
「皇紀の昔話となれば興味津々でね」
彼は旧荒廃地区の話は全て俺の過去の話だとでも思っているのだろうか。
言葉通り目を輝かせて俺を真っ直ぐ見ている。
「赤い家で長老だっけ? その辺からまず教えてもらいたいね」
「長老は荒廃地区を作った人間だ。裏社会のフィクサーだと呼ばれたりもする」
「ずいぶん御大層な二つ名だな」
「実際彼はあの土地を国にも虹顔市にも、そしてカオスイズムにも手出しさせなかった。彼の意向は政治家ですら無視出来なかったらしい」
「なるほどね。あんな場所が今の時代にも存在出来ていたのはその長老のおかげと言うわけだ」
浄は俺の言葉にいい感じで言葉を挟みつつ話を聞いていた。

〜中略〜



出勤前、俺と浄はバイクを走らせて赤い家に来ていた。
案の定、最近は赤い家への立ち入り申請が頻繁に取られていた。
都度都度申請者は異なっていたが、恐らく皆カオスイズムの信者なのだろう。
朝、役所で門や家の鍵を受け取り途中で浄と合流した。
門には太い鎖が巻き付けられ、南京錠で鍵が掛けられていた。
敷地内に入ると浄はへえーと声を上げた。
「赤い家なんて言うからどれだけ物々しいのかと思ったけど案外可愛らしい見た目じゃないか」
「レンガ造りだと言っただろう」
家を見上げる浄に呆れて言葉を返す。
「しかし、なかなかはっきりした赤色だ」
確かに彼の言う通り、この家のレンガは赤レンガの中でも鮮やかな色をしているかもしれない。
改めて見ると小さい時に見た印象と異なっている気がした。
そのまま俺たちは庭や家の中を探ったが取り壊しを待つだけのそこはやはり何か目ぼしいようなものはなかった。
特に成果はなかったかと話す浄と一緒に玄関から表へと出ると、家の前に誰かが立っている。
「ずいぶん久しぶりですね。真壁皇牙」
そこに立っていたのはアルセブンのピアスだった。
平和の仮面を名乗り、カオスアカデミーの学長をしている男だ。
「彼は?」
「アルセブンの一人、平和の仮面ピアスだ」
直接会ったことはないのだろう、ピアスのことを聞いてきた浄に最低限の情報を返す。
「へえ、彼が」
「そちらは知らない顔ですね。仮面ライダー浄ですか」
「おっと。名前を知ってもらってるなんて光栄だね」
浄がいつもの軽口を叩くとピアスはくだらないとばかりに小さく鼻を鳴らす。
「貴方が出しゃばってくるのは予想していましたよ」
「どうやら俺たちも目的らしいな」
「ああ、そのようだ」
答える俺たちをピアスは冷めた目で眺めている。
「まあ前置きはどうでもいい。お前らの狙いは何だ」
「狙いだなんて失礼ですね。我々は約束したものを受け取りたいだけですよ」
「長老とか?」
「ええ。旧荒廃地区出身だけあって長老をご存じだと」
「むしろ知らないヤツなんかいないだろう」
「なるほど、そういうものですか」
ピアスは当たり障りのない言葉を返しながら、どこか俺のことを探っている節があった。
具体的に何かと言うよりは荒廃地区出身の俺からヒントみたいなものを引き出そうとしている、そんな風に感じた。
家探しもして、俺に探りを入れてきているとすれば恐らく約束の品とやらはまだ見つかっていないのだろう。
目の前のあれこれが数少ない記憶の一つと重なる。