Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ぬす
2026-03-08 23:41:05
2820文字
Public
Clear cache
愛憎を込めて弾丸を
少し癖が強いンポ夢。夢主が巡狩ぽい。
銃は遊びの道具じゃない。
最大まで装填したそれをハイブランドのバッグに隠して、人通りのない道をゆく。
割れたショーウインドウのガラスは残念ながら私の姿を映してはくれない。
彼のために新調した服でおしゃれをして、メイクもヘアセットも気合を入れてきたというのに。
久しぶりの彼とのデート。全て本気で挑みたい。
かつかつとヒールを鳴らして荒廃した街を進めば、あるはずのない赤い花弁が一枚。
誘われている。だって、彼が痕跡を残すわけがないのだから。
それが導くままに歩けば、廃墟立ち並ぶ広場に辿り着く。
おそらくここはアウトレットモールだったのだろう。
商品は朽ちたのか盗まれたのか、散乱した瓦礫しか残っていない。
広場の中央には赤い薔薇が一輪。
拾い上げて、上を見上げれば
――
ああ、愛しい彼の姿がそこにある。
「まるで巡海レンジャーですねぇ」
銃を抜いて、迷わず脳天を狙い撃つ。
エスカレーターを駆け上がって、彼に近付いてもう一発。
残弾数を頭に入れて、確実に命を奪りにいく。
「またいきなり発砲して!僕の話は無視ですか?」
派手に血飛沫が飛び散って、それが無数の薔薇の花弁に変わる。
目眩しだ。
スナイパーライフルで狙撃しようが、サブマシンガンを乱射しようが彼に当たったためしはない。
ヒールで視界を切り開いてまた、彼の影に狙いを定める。
「彼らに追われるようなことでもしたの?」
施設内に彼の笑い声がこだまする。
寒い自分語りでも始まるのかと思いきや、降り注いだのは雪ではなく天井ドームのガラス片。
男の人はいつだってそうだ。
せっかくデートのためにセットした髪型をその手でぐちゃぐちゃにしてしまう。
女の子の時間は無限じゃない。そのことを全くわかっていない。
「ほら、僕はここですよ!一途なお嬢さん」
「ムカつく」
心臓を狙えば、サプライズボックスがそれを受け止める。
足を狙えば、踊るようなステップで躱されて。
鞄の中の弾倉を手に取り、また一発と攻め立てる。
はじめこそ彼は驚いていた。
突然姿を消した彼を追ってベロブルグを駆け回り、ピノコニーへ飛んで、また違う星へ。
散々愛し合った乙女への裏切り、星を越えた程度で諦めてなるものかと。
私を捨てた男への制裁を、とあらゆる武器を手に取った。
逃げるのであれば足を奪うまで。嘘をつくなら舌を切るまで。
そうして昂る私の愛憎を、あろうことか彼は愉しんでいる。
「覚えてますか?
あなたが手斧を投げて、宝飾店のショーケースを破壊したこと!」
「サンポが躱すからでしょ。受け止めてあげたらよかったのよ」
「そんなことをしたらサンポは死んでしまいますよぉ!
全く、あなたはお転婆なんですから。
デートスポットを探すのにも一苦労です」
引き金を絞る指に熱が籠る。
愛しい心臓を狙い撃って、その目に私のナイフを映して。
復讐のために手にしたそれが、愛を示す詩へと変わる。
今となってはもうわからない。彼を消したいのか、手に入れたいのか。
「あなたっていつも私から逃げるのね。
あの時だってそう、あんな意味深に愛を囁いておきながら次の日にはいなくなってた!」
「ええ、あなたは僕を追いかけてくれますからね」
天井から飛び降りた彼の身体が宙に浮く。
しめた、とスカートの中に隠したワイヤーを引き出し、彼へと投げつける。
彼がはじめてナイフを抜いた。
ワイヤーを切って、そのまま私へと飛んでくる。
「
……
っ」
ショルダーストラップが切れて、鞄の中の弾倉がばらばらと散乱する。
最悪だ。このバッグ、高い上にお気に入りだったのに!
散らばった中からひとつだけ予備の弾倉を手に取って、彼を追って飛び降りる。
衝撃のせいか砂煙が
――
いや、違う。彼が仕掛けた煙幕だ。
煙の向こうにいくつもの彼の影が見える。
誘われてはいけない。ここで撃って本物を見抜こうとすれば弾を無駄にしてしまう。
太腿に仕込んだナイフの数を思い出して、影の数だけ抜いて放つ。
「はは、あなたは本当に仔猫ちゃんにそっくりだ!」
いくつもの影の心臓にナイフが刺さって、どさどさと崩れ落ちる。
違う。全て本物ではない。ならばサンポはどこに。
そう注意深く銃を構えた瞬間、身体が後ろに引き倒されて首元に大きなナイフが突きつけられた。
「捕まえましたよ、お嬢さん」
「隙あり」
覗き込まれたその顔に遠慮なく発砲する。
無理な姿勢で撃つべきではなかった、反動が痛い。
そんなことを考えながらサンポをちらりと見れば、大きく仰け反って
――
笑い声をあげた。
「恋人同士だというのに、これではキスもできませんね?」
むに、と私の唇に銃弾が押し付けられる。
熱くない。おそらくは、出会って最初に撃ったもの。
ああ、彼とのデートはいつもこう。
髪はぐしゃぐしゃ、メイクはぼろぼろ。
せっかく買った可愛い服も埃まみれで真っ黒だ。
「恋人同士だっていうなら、可愛い、ぐらい言ってみせて」
「ふふ、あなたはいつだって可愛らしいですよ。
熱烈で、ひたむきで
……
」
「
……
そうじゃない。今日のファッション」
「え?ああ、勿論です、可愛いですよ!
僕が贈ったネックレス、つけてくれてるんですね」
首に指が這わされて、ペンダントトップを確かめられる。
当然だ。恋人とのデートの時は迷わず贈られたアクセサリーを取り入れるもの。
全てはその一言のためと言っても過言ではない。
「ふふ、可愛い、僕の最愛のお嬢さん」
「
……
」
顔が熱くなって、照れ隠しに手榴弾のピンを抜く。
即座に奪われて、少し離れた時計屋で爆発が起こった。
ダメですよ、なんてまさに仔猫をあやすような口振りだ。
彼にとっての私は恐ろしい死神ではないらしい。
「次は白のドレスを着て来てください」
「
……
返り血で汚れるじゃない」
「それは僕の色に染まるということですか?」
情熱的ですね、と彼が笑う。
彼の血を浴びて、それが酸化して黒に染まって
――
そうなれば、私の想いは叶ったことになるのだろうか。
まだ残弾はある、と握り締めた銃が容易く彼に取り上げられる。
続いて太腿のナイフを奪われ、胸に仕込んだ爆弾も剥ぎ取られて。
どれだけ可愛くめかし込んでも最後には脱がすのが男というものだ。
ああ全く、それなのにこれほどまでに夢中になって。
また私を裏切って遠くへ旅立つこの男に。
「
……
この辺り、ホテルはあるの?」
「ありますよ!ちゃんと考えてここに決めましたから」
「
……
えっち」
さて、そのホテルのシャワーからお湯は出るのだろうか。
手元に武器はもう残っていない。
あるのは、はじめの赤薔薇一輪。
ただ純粋に彼と愛し合った頃の姿に戻されて、また彼の腕に抱かれる。
――
次こそは彼の血が見たい。
恋心は燃ゆるばかりだ。
彼の口付けを受け入れながら、ぐっと左手の薔薇を握り締めた。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内