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kgsg_hirg
2026-03-07 19:56:59
1317文字
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噛み締める(たった一つ・優劣)
ワンドロワンライ2/21分
勝負事で張り合う相手はもっぱら片割れで、相手も負けず嫌い。だからといって片割れ以外でそれが発揮されることはあまりなかった。
それが覆されてしまったのは二年に上がった頃。
「さっきの、ようやったな」
普段正論で殴っては小言の方が多いその人がわざわざ近づいてポツリと、でもちゃんと聞こえる声で俺に言った。表情が少しだけ緩かったのは思い出フィルターかもしれない。
俺は思ったよりもチョロく単純だった。いつも厳しいその人が見せたその一瞬の出来事で意図も簡単にコロリと落ちたのだ。
「
……
そんで、俺に何言われたいん?」
非常に間抜けであるがバレた。
休憩時間のほんの少しの隙をついて彼はドリンクを飲む俺に近づく。それに気がついた角名はしれっと逃げた。片割れは休憩なのに銀島を連れてボールを持っている。助けはない。
「バレへん思たんか。見すぎや」
「ぐ
……
」
「あとさっきのプレイは無理しすぎやったで」
「ぐぅぅ
……
」
今日はもうだめかもしれない。
壁に背を預けて項垂れる。褒められるどころか小言の嵐の予報が出た。
……
彼の視線の先にはボール遊びをする片割れの姿。アイツは常にバレーのことが頭にある。じっと見つめる彼は何を思っているのだろうか。
「で、ホンマになんや」
「うー
……
うぅ
…………
ホンマにしょうもないことなんすけど」
視線は相変わらずコートの中。心配なのか、それとも。
「北さんに、褒められたい」
「
……
俺、に
……
?」
さすがに予想外だったのか、視線が俺の方を向く。まるで初めて感情を得たロボットが戸惑っているかのようである。
「なんか、その、北さんは褒めるより
……
アドバイスの方が多いやないですか。前に褒められた時なんか、こぉ
……
ぐっと来たっちゅうか
……
」
「お前らが小言言わせんようにしたら褒めることも増えるんちゃうか」
「ぐぬ
……
」
それはそう。
それでも、だ。
「でも北さん、これだ! って時ぐらいやないですか」
「そうか?」
「それに」
ボールを叩く音、楽しそうな片割れの声、巻き込まれた者たちの歓声。
「
……
お前のそれはバレーのことか?」
「え?」
「それともお前自身を褒める話か?」
喧騒が遠くなり、彼の声が俺の耳に響く。
「お前自身を褒める話やったら別にバレーのことやなくてええやろ」
「え、でも」
「別にバレーだけちゃうやろ。お前は宮治、バレーを取ってもなんか残るし、他にも一生懸命しとることあったりするやろ。それひとつしかないわけないやん」
ポンと俺の肩を叩き彼は壁から一歩踏み出す。
「お前が褒めてほしいんやったら無理に他と張り合わんでもちゃんと見たるよ」
さぁ休憩終わりや、と彼は俺から離れていく。
思わず奥歯に力が入って胸が燃えるように熱くなる。見てもらえるという嬉しさと、約束されたそれがじんわりと胸に染み込んでいく。褒められてもいないのにこんな気持ちになってよいのだろうか。
気づくと喧騒が消えてぞろぞろと部員がコートに集まり始めている。彼がこちらをちらりと見ていて俺は慌ててドリンクボトルを床に置いて小走りで向かう。これではまた小言が飛んできてしまうかもしれない。
しかし頬は緩んで戻らなかった。
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