三毛田
2026-03-07 19:41:59
1073文字
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89 06. 突然こぼれた涙

89日目
原因は砂嵐

「っ」
「た、丹恒? 大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
 風で乱れた髪を手で直し、こちらを振り向いた穹は涙を流す俺に慌てだす。
 涙が出る前に痛みが走ったので、きっと砂ぼこりで目が傷ついたのだろう。
「んっ」
「わわっ」
 雲吟の術で目を洗うと、驚いたように一歩あとずさり。
「丹恒。それ使うなら言ってくれよ~」
「ああ、すまない」
 目を洗ったからか、痛みが引いていく。多分、もう大丈夫だと思いたい。
「三月は」
「まだ出てこない」
「いつものことだ」
 俺がため息交じりに告げれば、彼はちょっと困ったような表情。
「どうした」
「いや。心配じゃないのかなって」
「店内にいるのだろう? ここの店はカンパニーの管轄にある。それならば、多少は安全だ」
「へ~」
「お前は、欲しい物はないのか」
「今のところはないかな。お菓子も飲み物も、まだあるし。なのみたいに、メイクしたりするわけじゃないから」
 手持無沙汰になったのか、スマホをいじりゲームを始める。
 俺も、スマホに保存しておいた論文へと目を通し時間を潰す。
「ごめ~ん! お待たせ!」
「満足した?」
 穹はニコニコと笑みを浮かべているが、目が笑っていない。
 砂嵐に襲われ俺が涙を流してから、三システム時間が過ぎている。さらに、その間に何度も砂嵐に襲われて俺も彼も埃まみれだ。
 恨み言の一つや二つ、言いたくなるだろう。
「うう……本当にごめんなさい」
「忘れていたんだろ?」
「そうです」
「じゃあ、列車に戻ろう。いいよな?」
「はい」
 この後、カフェかレストランに行く予定だったが、この砂ぼこりまみれの状態で店舗に入るのはよろしくない。
「丹恒。一緒に風呂に入ろう」
「仕方ないな」
 三月はしょんぼりした表情で、自室へと帰っていく。
 俺は穹と共に、彼の部屋へ。
 風呂で砂埃を洗い流し、さっぱりしたらパムが冷蔵庫に入れておいてくれたらしいデザートを二人で。
「行きたかったカフェのスイーツも美味しそうだったけど、やっぱりパムの作ったものが美味いな」
「俺も、店のスイーツは口に合わないことが多いからパムの作ったものがちょうどいい」
「ふふふ」
「なんだその笑いは」
 俺の肩を抱き、穹は笑う。そっと手を払おうと思ったけれど、止めて上から包み込む。
「丹恒の事、好きだなって」
「そうか」
「俺の事、好き?」
「そうでなければ、触れさせない」
 頬ずりすると、目を丸くして。その後、押し倒して来ようとする。
 だが、簡単には倒れてやらないが。
「た、丹恒先生の意地悪ー!」