ortensia
2026-03-07 15:50:35
1060文字
Public 傭リ
 

現パロ傭リ+庭(酔っ払いリ、お迎え運転手傭)

天国と地獄

 連絡を受けて、本来ならば要らなかった筈の酔っ払いの迎えに来た。
「エマ。」
 ファンシーな女性向けで煌びやかな甘ったるい匂いの店内を進む。空の上のような内装は、なんだ、天国だろうか。そこで連絡で詳しく案内されたテーブルに向かえば、目的の席は直ぐに分かった。ぐったりとした長身の男に隣から凭れ掛かられても、長椅子の背凭れを利用しているとは言え、すっと背筋を伸ばした儘にこりとこちらに向けて笑んでいる友人の姿。
「女子会とやらは酒は出ないと勝手に思ってたぜ。」
「女子会にも飲み会はあるけれど、ここはお酒も出るスイーツ店、と言ったところだったから。」
 女子会を二人で楽しんでいたらしい片一方が紳士であることはこの際どちらも特に指摘しない。いつものことである。そもそも紳士も半分くらいはそのつもりで来ている筈である。たぶん。
「でも、良く眠っているみたいだし、起きたら酔いも醒めていると思うの。」
「だな。」
 半ば呆れたように息を吐きながら、すやすやと同伴者を止まり木に、大切に守られるように眠っている男を、無理矢理引き上げて体を支える。明らかに顔を顰めて、顔の横で唸り声を上げる男に構わず、未だ済ました顔の崩れない相手を見る。
「こいつがこんなだと、お前を送ってやれない。」
「口だけでもそう言ってくれてありがとう。」
 そんなことを言いながら、花が綻ぶように笑う相手とは、そこで別れた。金はこっち持ちだ。この男がこうなって居なくても、紳士ならそうするつもりだった筈だ。それを相手も分かっているので、あっさりと別れ、こっちはこっちで向かえのために乗って来た車に向かう。
 自分よりもうんと背の高い男を引き摺っていると、流石に目が覚めたようだ。
「はっ。天国が。」
「天国ぅ……?」
 丁度辿り着いた自車に扉を開ける。自分では運転しないくせに車種やらオプションやらにあれこれ口煩く手を出した男が選んだ車だ。そこに男を押し込む。
 あんな店に居たにしても、全くこの男らしくない言葉だ。寝惚けてるにしても。全くこの男が自分の芸術の題材にする筈もない、似つかわしくない。
「おれと居た方が近いだろうが?」
 だから助手席に相手を押し付けて口付けた。
 男は笑う。自分の笑い声に、すっかり目が覚めたようだった。
「おまえと居ると遠去かる、の間違いでしょう?」
 それは地獄の方が近いと言う意味か、それとも何か別の。
 兎も角今ここを天国にするつもりはないので、未だ笑う男をシートベルトに縛り付けてて、さっさと車を走らせる。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。