Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ひつじのゆめ
2026-03-07 12:27:58
4098文字
Public
Clear cache
観桜に探す
2×9フェスオンライン2026に参加させていただくのに際し、執筆したピスグです。
悩めるピークちゃんが、お花見とスグさんを通じて何かに気づくお話。サブタイトルはおじさんのお節介。
また機会があれば、別の季節を味わうピスグも書いてみたいですね……。
拙い作品ですが、楽しんでいただけると幸いです。
注意書きは以下の通り↓
※何でも許せる方向け
※口調が迷子
※捏造注意
※謎時空
世俗を絶って修行に明け暮れ、幾年になるだろうか。それを正確に答えられる無量大数軍は少ないと思う。
強くなるためにかかる時間を言語化する必要など完璧超人にはないし、そもそも外界への興味など毛ほども無かったのだから。
しかし、そんな事を言ってもいられないのが今日この頃である。
「難しい
……
! 」
超人墓場のとある一角。自己鍛錬の場として選んだ岩場で、ピークア・ブーはひとり天を仰いでいた。
灰と青の合間くらいの白色をした空は、今日も至って変化がない。同じような雲が流れ消え、また流れ着く。その変わらなさに心が和んでしまうくらいに、ピークの頭は限界寸前だった。
『外界の者に関わり、己にない〈強さ〉を知れ』
つい先日、超人閻魔改めザ・マンから告げられた命である。
これを受けた完璧・無量大数軍の面々は、当然ながら初めは困惑していた。しかしそれも一瞬の話である。気づけば次から次へと外界へと姿を消していた。恐らく皆、何かしら心当たりがあったのだろう。先の大戦で気になった者のところへ行ったのかもしれない。
――
先の大戦と言えば、だ。
それならピークにも思い当たる相手がいない訳では無かった。現キン肉大王、キン肉スグルである。人の良い彼なら、コンタクトを取ればすぐにでも力を貸してくれるだろう。
(声を、かけてみようか)
そう何度も思いはしたのだが、一度だって実行に移すことは出来なかった。
何せ、彼は再戦を誓った相手なのである。そんな彼を倒すための強さを、彼に頼って得るというのは何だか可笑しな話ではないか。そんな考えが心から離れていってくれなかったのだ。
だが、そうなるとピークにはもう打つ手がないのも事実だった。そもそもリセットの影響で経験値が少ない状態にある自分は、他の無量大数軍より分からないことが多いのである。外界との取っ掛かりになる物など、ほぼ無いに等しい。
「どうすれば良いんだ
……
」
このままでは自分だけザ・マンの命を果たすことが出来ないかもしれない。それだけは絶対に嫌だが、一体どうすれば良いのだろうか。
悩みに悩んで、それから数日。
取り敢えず悶々と鍛錬に励むピークの元へ、一つの伝令が届いた。
『至急、この場所へ向かえ。貴様が求める物はそこにある』
「
……
誰からだ? 」
恐らくザ・マンでは無いだろうが、そうでなければいまいちこんな事をする人間が思い浮かばない。ピークのことを気にかけてくれていることだけは、文面からしても確かなのだが。
紙に書かれた内容をまじまじと眺め、考える。指定された場所がどこであるかは分からない。全くの未知だ。だが、そこに向かえば求める物が
――
ザ・マンからの命を果たすための答えがあるというなら、従って損はないだろう。
座っていた岩から腰を上げ、いつかのように空を見上げる。 変わり映えしないはずの空は、いつもより少し早く動いているように見えた。
***
そんなこんなで謎の伝令からの言葉に従い、超人墓場から幾千里。探り探り訪れた目的地で、ピークは首を傾げていた。
「ここは
……
日本、か? 」
日本を訪れたのは先の大戦以来だが、周りの景観が何となくあの時見たものと似ている気がする。看板の文字も前に見たものと同じようだから、恐らく合っているのではないだろうか。
だが、どうしてわざわざ日本へ
――
「
……
ピーク? 」
「⁈ 」
不意に名を呼ばれ、反射的に振り返った。そして、つい驚きの声を上げる。
「お前
……
キン肉マン⁈ 」
「おお、やはりピークア・ブーか! なんだ、奇遇じゃのう! 」
からからと笑いながらこちらの肩を叩く男は、どう見てもキン肉スグルその人だった。
何故、という疑問はすぐに消える。そう言えば大王就任前は日本に暮らしていたという話で、今もまた仮に住まいを構えているらしいとのことだ。それならば、その辺を歩いていても可笑しくはないだろう。
そう納得しかけて、すぐさま首を横に振った。いくら住まいがあるとしても、こう都合よく出てくるのは流石に可笑しい。さも偶然出会ったという風な態度を取っているが、本当は何か用があったのでは無いだろうか。
「なあキン肉マン、少し聞きたいことが
――
」
考えてばかりいても仕方がない。単刀直入に問おうとした疑問は、同時に発されたキン肉マンの声にかき消されてしまう。
「そうじゃ!せっかくだからピークと行けば良いではないか」
「キン肉マン? 何を
……
」
「まあ良いから良いから
……
ここへ来たと言うことは、お前もそのつもりだったんじゃろ? なら、一人より二人の方がずっと楽しいにきまっとるからな! 」
「いや、だから何を言って
……
! 」
いまいち状況が理解できないままに、ぐいぐいと手を引かれて何処かへ連れて行かれる。
建物と建物の間を通って左折し、少し広い道を進んでまた左折。そこからしばらく道なりに歩いたところで、急にキン肉マンの動きが止まった。ようやく文句の一つでも言ってやれると顔を上げ、思わず何も言えなくなる。
(何だ? この景色は
……
! )
ピークの眼前は、一面の淡いピンク色で埋め尽くされていた。よくよく見てみれば、それは小さな花がたくさん咲いた木であることが分かる。満開に咲き誇ったその木が立ち並び、道沿いを鮮やかに彩っているのだ。
あまり色彩豊かとは言えない所で長らく過ごしてきたピークには、いっそ刺激的すぎるまでの光景だった。
「ふふん
……
綺麗じゃろう? 私お気に入りの桜並木は」
「さくら、なみき? 」
「ん? 知らんのか? 」
「
……
ああ。そもそもこの花が何なのかすら、知らない」
答えていて、自分の無知が恥ずかしくなってくる。別にキン肉マンはそれを馬鹿にするような奴ではないだろうが、それでも何となく嫌だった。目を合わせているのも気まずくて、それとなく俯く。
そんなピークの頬が、不意に挟み込むように持ち上げられた。当然キン肉マンの仕業だ。
「ッ、何だよ」
「いや、何かふてくされておるようだから
……
」
「ふてくされてなんか
……
」
「いーや、ふてくされとる! いかんぞ、ピーク
……
お前は今、ものすごくお得な状態だというのに」
「
……
お得? 」
「うむ、そうじゃ! 」
ピークの頬から離れた手は、次に両肩へ置かれた。
「良いか? ピーク。私は今、すでに桜のことも桜並木のことも知っている。だからもう、この光景を見ても『綺麗だ』としか思うことができん」
「
……
ああ」
「しかし! お前は違う。お前はまだ桜のことを知らないから、『何も知らない時の感動』も『色々と知ってからの感動』も、今ここで全部味わうことが出来るんじゃ。つまり、お前だけこの桜を私の倍以上に楽しめると言うことになる」
そこまで言って、キン肉マンは一度言葉を止めた。不思議に思っていれば、ひたと視線を合わせられる。澄んだ青色から目を離すことができない。
知らず息を呑んだのと、キン肉マンがもう一度口を開いたのはほぼ同時だった。
「
……
それは何だか、ものすごくお得なことだと思わんか? 」
そう続けて小首を傾げ、キン肉マンが笑う 。その瞬間、ずっと抱えていた煩悶がストンと落ちる音が聞こえたような気がした。
(そうか
……
それがお前の〈強さ〉なんだな)
ピークが「恥」であると捉えた無知を、キン肉マンは「可能性」であると捉えた。理論的に考えれば、それはあくまで詭弁に過ぎないのかもしれない。無知は無知であり、知らないという事に変わりはないのだから。
それでもより強く「知りたい」と思えるのは、キン肉マンと同じ捉え方をしている者の方だとピークは思う。可能性は希望だ。希望を持つ者は折れない、諦めない。それが凄まじい強さになる事を、ピークは身をもって知っている。
少し晴れやかな気持ちで、ピークはかけられた問いに答える。
「
……
確かに、そうかもしれないな」
合わせて口角を引き上げれば、キン肉マンもまた嬉しそうに笑った。
「じゃろう⁈ ピークは素直で良い子じゃな〜」
「ッおい、撫でるな。やめろやめろ! というかお前、こんなことしてる暇あるのか⁈ するんだろ、花見ってやつ! 」
「お、そうじゃな!
……
なんじゃ、ピーク、すっかり乗り気ではないか」
「
……
まあ、 お前には感謝してるからな」
「ん? 何か言ったか? 」
「いや、何も。それより、次は何をすれば良いんだ? 」
「ああ、次はな
……
」
全く分からないことでも、一人ではないから先に進めることが出来る。よく考えれば当たり前のことに気づけたのもまた、ここまで出てきたことの恩恵だろうか。
こまごまと手伝いをしながら、そんなことを思う。こんなにも気づきが多いなら、意地を張らずにもっと早くキン肉マンに会いにくるべきだったかも知れない。
己の修行不足を噛み締めていて、ふと小さな疑問が浮かんだ。
(そう言えば、結局あの伝令は誰からだったんだ? )
***
ひらひらと舞う花びらを、特に苦もなく掴み取る。柔く脆いそれを暫く見つめてから、また宙へと舞わせた。そんな手慰みに興じながら、少し先で戯れる二つの影を見遣る。
そこにもう暫くの移動が無さそうなことを確認して、男は深いため息を吐いた。
「全く
……
世話のかかる奴だ」
だが、目的は達成された。もうここで見張りをする必要もないだろう。
帰路に向けて歩き出しながら、男は思い返す。
わざわざ伝令などという回りくどい手段を使ってまで、あの二人を引き合わせた理由は二つだ。
一つ目はザ・マンからピークア・ブーを気にかけるように頼まれていたから。
二つ目は、キン肉マンならばあの悩み倒す若造をどうにか出来ると思ったから。
――
一応親戚として、少しばかり複雑な心境ではあるが。
またしても深くため息をつく男の体に、小さな花弁が舞い落ちていく。さながら水面に浮く花筏のようなその姿を知るのは、立ち並ぶ桜樹たちだけであった。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内