kuzu
2026-03-07 11:24:14
934文字
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冬の嫉妬/御沢

꽃샘추위から思いついたお話。翻訳かけると『花冷え』になりますが、冬が春に嫉妬するが近いそうです。冬生まれの御と花が木が瑞々しい初夏生まれの沢にピッタリだな思っています。嫉妬深そうだし、御幸

「さっみー」

グラウンドコートにネックウォーマー、それでも寒くて肩を縮めてポケットに手を入れる。4月に入ったというのに暖かい日は遠ざかるばかりでいまだに冬の装いを外せない。

「あっ沢村」

寮内のベンチに座っている沢村の姿を発見する。声をかけるつもりで奴の名前を口に出したわけでもなく癖のように口をついて出てしまった小さい声にやつは反応した。

「あっ御幸先輩」

いつもの喧騒はどこへやら、あまりに静かなその姿に面を食らう。どこか気まずそうなその様子は昨日のことを気にしてか。

「なんだ、お前調子悪いのか?ならこんなとこにいねーで早く部屋戻れよ。体冷えるぞ」
「は?」
「いやお前が静かだから」
「そーですか」

訪れる沈黙。それでも昨日の一件を思えば仕方ないといえど、少し物足りなさを感じてしまう俺はだいぶ沢村に毒されている。

「今日さみーな。というかここ最近?」

らしくない、会話を続ける努力。そのために持ち出した天気の話。あまりに下手すぎて今まで沢村が声をかけていたから会話が続いていたと察してしまう。

「そっすね。冬が嫉妬してるんだと思います。」
「えっ?」
「よく言うじゃないですか。春の陽気かと思ったら逆戻りする話。それをどこかの国では冬が嫉妬してるっていうんです」
「へ〜、意外にポエミーだな。沢村も」
「失礼な!」

沢村が声をあげる。いつもの様子で。こいつはこうでなければ。

「冬、嫉妬深いかね」
「どうでしょう。でもまだまだしばらく寒いみたいなんで、なかなかじゃないですか」
「そうか、俺とお揃いだな」
「あんたの方が酷いですよ」

こちらに目線を向ける沢村に近づいてベンチを軋ませる。

「わかってるじゃん。昨日奥村とイチャイチャしてたの怒ってるけど」
「あれはあんたが、降谷の面倒見てたから俺は奥村と....」

きっとこいつは俺の様子を気にしてここでまっていた。俺もそれを少し期待していた。俺の嫉妬で嫌味を言えば律儀に返してきて言い合いになることはしばしば。久方ぶりに2人きりになれたのだ、このつまらない空気は早く雨に流してもらおう。そして他の男の名前を出す口は塞いでしまえ。

冬よ、どっちが嫉妬深いか勝負しようぜ。