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四季ハル茶
2026-03-07 01:15:24
1379文字
Public
うち探索者の話
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とある喫茶店の一幕
ちょっとした幕間 別れを受け入れようとしていた槐くんに優花ちゃんが説教する話
「おにいってほんと他人にたいして卑屈になるの得意だよね」
優花はそう言いながらパフェに乗ったつやつやのイチゴを頬張った。ほっぺを抑えて美味しそうに顔を綻ばせている。
優花に買い物に付き合ってもらったお礼として入った喫茶店で、オレたち兄妹は他愛もない雑談をしていた。
仕事のこと、最近のこと、プライベートのこと。
さっきの言葉はオレに友人ができたことについて話していた時に出てきた言葉だった。
「卑屈って
……
」
「事実でしょ?パパやママ、アタシの前では“オレなんて”とか言わないじゃん」
図星を突かれ、ぐうの音もでない。誤魔化すようにコーヒーを啜る。
「やめたほうがいいよ、それ。癖になってるんだろうけどさ」
「
……
」
こぼれそうなほどベリーソースがかかったバニラアイスを器用に掬いながら食べる様を見ながらやめたほうがいい、という忠告が頭のなかを巡る。
備え付けの角砂糖をコーヒーに入れ、スプーンでくるくるとかき回す。角砂糖はそう簡単に溶けてはくれない。スプーンの先に固い感触が残っていた。
渦巻くコーヒーの泡に視線を落としながらゆっくりと瞬きをする。友人との別れが怖いという悩みも普通の砂糖みたいに軽く溶けて無くなってしまえばいいのに。
「あのさ、アタシはおにいじゃないからおにいがどんなことをされてきたのかとか、どういう気持ちでそれを言うのか知らないんだけど」
「
……
うん」
「それを聞き続ける相手の身にもなりなよ。目の前で友達に悪口言われてるのを聞かせ続けるようなもんだよ」
それって辛くない?という言葉とサクサクとウエハースの咀嚼する音が聞こえた。
悪口を聞かせ続ける。それを考えた途端、ジクリと胸が痛んだ。あれほど辛いものをオレは友人たちに聞かせていたのかと忍びない気持ちになる。
おにい、と呼び掛けられ顔を上げると口に何かを突っ込まれる。
咀嚼するとサクサクと歯触りのいい音が聞こえてくると同時にバターの香りとほどよい甘さが口のなかに広がる。どうやらクッキーを突っ込まれたようだ。
「考えを改めるのって難しいじゃん?だからさ、“オレなんて”って言葉を使うのをやめることから始めようよ」
「む
……
」
「そもそも、おにいはなんでもかんでも抱えすぎなの!!新しくできた友達にもっと頼ったり甘えたりしていいんだよ」
「ん、ぐ
……
でも、迷惑にならないかな」
優花はキョトンとした顔をして、その後すぐに笑い出した。
オレが呆気にとられていると、優花はスプーンでイチゴのジュレを掬う。光の加減でキラキラと宝石のように輝いて見えた。
「おにいは友達いなかったから知らないかもしれないんだけど、友達ってそういうもんだよ。迷惑をかけて、かけられる関係。素敵でしょ?」
掬ったジュレを口にいれ、こてんと小首をかしげた。途中さらっとディスられたような気がしたが聞かなかったことにした。
「
……
そうだな」
「はい!決まり!じゃあ“オレなんて”は使わない!友達をもっと頼る!この2つは約束ね!破ったらまたここのパフェ奢ってね!」
「
……
仕方ないな
……
気に入ったのか?」
「うん!ジュレめちゃくちゃ美味しい!」
また他愛の無い雑談に戻る。さっきのお店のこと、気になる舞台のこと、次の役のこと。
おもむろにコーヒーをスプーンでかき回す。角砂糖はとっくに溶けて無くなっていた。
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