おから
2026-03-07 00:02:17
2072文字
Public 全年齢
 

プレゼントには幸福を

🐇の誕生日と🦁の皆さん(not🐇🐢)

「丁子の誕生日だが、今年はリアカーではすまないだろう」
「毎年毎年、大量のプレゼント攻撃を受けてるからな」
「今年は鰐島も帰ってきたし、新入りも増えたから、もっとだろうね」
「飲み屋街のみんなからも貰ってるからねぇ。あと、風鈴からも貰いそぅ」
 四人は輪を作って劇場のステージで各々毎年の兎耳山の誕生日を語る。
 愛されキャラを地でいっている兎耳山はモテる。
 老若男女問わずモテる為、誕生日とバレンタインは小さなリアカーを借りてプレゼントを詰めて帰っている。
 今年は例年より特に多そうな見通しが立っており、誕生日会も盛大に執り行おう予定だ。
 その実行委員がこの四人組である。
「今年はリアカー一台で足りるだろうか」
「流石に足りるんじゃない?」
「毎年借りてるリアカー、一番ちいさいのだけどぉ、確かに足りないかもねぇ」
「リアカーから溢れたらオレ達で運べばいいだろ」
 確かに、四人いれば流石に持ち帰られる筈。または犬上を呼べば五人に増える。佐狐も何だかんだ手伝ってくれるに違いない。
「みんな何プレゼントするのぉ?」
「こんだけ人数がいりゃあ一人や二人被るだろうしな、オレはシューズにするぜ」
「ボクは佐狐とケーキを選ぼうかな」
「オレは丁子が好みそうな香水だな」
「へぇ、みんな色々考えてるんだねぇ」
「そういう十亀はどうなんだよ」
「オレぇ」
 やっぱり副頭取が選ぶプレゼントは興味がある。
 十亀はそうだねぇと呟き、うーんと続けた後、
「オレは花にしようかなぁ」
「花?」
 そう、続けた。

◇◇◇

「「「「「「誕生日おめでとう(ございます)!」」」」」」

「うわぁ‼」
 兎耳山はそっと掛けられた襷を握りしめながら色とりどりのクラッカーを鳴らされて劇場内に足を踏み入れた。
 案内係の有馬と鹿沼に掛けられた『あんたが主役!』襷をぎゅっと握りしめ、ケーキを持った鰐島と十亀が待つ劇場ステージの上に登った。あちこちからおめでとうございます!の声が沸き上がり、笑顔が止まらない。
「丁子、誕生日おめでとう」
「誕生日おめでとぉ」
 真っ白なクリームに赤い苺の乗ったホールケーキを差し出され、兎耳山は二人を見上げ、ありがとう!と続けた。
 こんなに盛大にお祝いされるなんて初めてだ。それこそ、頭取になってからは当たり前で、まだ拍手が鳴り響いている。
 この事実が、嬉しい。
「まだ蝋燭立ててないからぁ、この机の上に置いてぇ」
 ステージ中央に置かれた机を指さし、十亀は一度渡したケーキを貰ってそれに置く。兎耳山からは、机に1と8の文字になった蝋燭が見えた。
 あ、オレ十八歳になったんだ、と今更ながら実感する。だって、今こうしてお祝いされるまで誕生日なんて忘れていたから。チャットアプリでもそんな雰囲気全然なかったから気づかなかった。
「亀ちゃん!オレが蝋燭ケーキに刺したい!」
「いいよぉ」
 兎耳山に蝋燭を渡すと、十亀は微笑みながら今のうちに、と舞台袖で待つ有馬と鹿沼の元へ消えた。細やかでも大事なセレモニーの準備をせねばと。
「どこに刺そう……
「丁子の好きな場所に刺すといい」
「でも、プレートに被っちゃうから、ここ!」
 丁度『誕生日おめでとう』プレートの端と端に刺した兎耳山は、あとは火をつけるだけの状態で、兎耳山は有馬達がいない事に気づいた。
「ありまは?ぬまちゃんも亀ちゃんもいない……
「おう!兎耳山!」
 ぎし、ガラ、ぎし、ガラ。
「ありま!て、それって……‼」
 遠い昔に見たような景色。
 茶色い車体に黒い持ちて。小さな小さなリアカーを最後に見たのはいつだろう。有馬は荷台にいっぱいのプレゼントを乗せたリアカーを引いて舞台上に現れた。。
「みんなちょーじへのプレゼントだよぉ」
「今年も凄い量でしょ」
「みんな……
「獅子頭連全員からと飲み屋街に、今年は風鈴からも届いているぞ」
「見てもいい⁉」
「その前に、誕生日ケーキに火つけなきゃねぇ」
「あ、そっか!」
 兎耳山は机の前まで戻ると、既に鰐島によって火をつけられたケーキの前に立つ。
 数カ月前には考えられなかった光景に、有馬、鹿沼そして十亀は少しだけ涙腺が緩んだ気がした。
 自分『達』のプレゼントは喜んでくれるだろうか。照明を消した劇場内で、十亀は後ろでに隠したプレゼントを握る。
 副頭取から頭取への黄色い小さな花束。
 その意味を知っているのは四人だけ。あの時みんなが笑顔で言った、十亀らしいプレゼント。
 どうせなら皆で贈らなぃ?と、こっそりみんなで摘みに行った花。
 蝋燭は吹き消され、劇場内は再び湧き上がる。
 ケーキは古参組が割り勘して買ったもので裏にはホールケーキが七つもある。これで足りなかったらまあ、泣いてもらうしかない。
「ちょーじ」
「亀ちゃん?」
「オレ達からのプレゼントだよぉ」
 それは黄色のダンデライオン。
 誰もが願っている思いを込めたダンデライオン。
 小さな小さな花束に込められたメッセージは……