三毛田
2026-03-06 22:40:07
1076文字
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88 05. 偶然を装って

88日目
俺に会いに来ていた人

 この間買った、手軽に食べられるラーメンを適当に茹でてパムに確認を取ってから貰ったおかずを乗せていざ食べようとしたところで。
「あ」
「お前は……
 丹恒が呆れたように言った瞬間、彼の腹がぐぅ。と音を立てた。
「はは。丹恒も、腹が減ってるんじゃん」
 ほんのり頬を赤らめ、キッと俺を睨んでくる。
「お前も腹が減ってるんじゃん。一緒に食おう。共犯だ」
 立ち上がって丹恒の手を引き、彼を椅子に座らせて。
「穹」
「いいからいいから。それ食ってていいよ。ラーメン伸びちゃうからさ」
「だが」
「同じ味だから、すぐ作れるからさ。腹減ってるんだろ?」
「それは、まあ」
 歯切れ悪く、躊躇いを残した返事。きっと、アーカイブの整理か論文の資料集めに夢中で夕飯を忘れていたのだろう。
……いただきます」
 数分俺の顔と丼を見ていたけれど、意を決したように箸を手にして食べ始めて。
 ちょっと伸びてるだろうけど、まだ許容範囲だと思う。
「美味い」
「伸びてないか?」
「いや。ちょうどいい硬さだ。お前は、料理が上手いな」
「インスタント麺だよ? きっとパムの作ったおかずが美味いからだって」
 苦笑するけれど
「お前が作ってくれたから、美味いんだな」
 なんて、言われてしまったアr。
「手元が狂うから、そういうこと言うのやめて」
「事実を言ったまでだが」
 不思議そうな表情を浮かべ、ズズッと麺をすする。
「穹」
「ん~?」
 麺がほぐれて柔らかくなったので、付属のスープを溶かしていると名前を呼ばれ。
「お前は俺が来たのは、偶然だと思っているだろう」
「そりゃあまあ」
「実は偶然ではないと告げたら?」
「へ?」
 火を止めてから振り返ると、から揚げを口に入れて頬張っている。
「え? どういう意味?」
「お前がここで夜食を食べていると、パムから聞いていた」
「そ、そうなんだ」
 それってつまり?
「お前に会いに来た。というわけだ。夜食のご同伴にあずかりたくてな。いや。、こちらはついでだ」
 嬉しそうな声色で、彼は告げて。それから、しみじみと味わうようにラーメンを食べる。
 自分の分が伸びてしまうのがわかっていても、心臓の高鳴りを止められない。
 丹恒が好きだと、改めて思う。
 今すぐ抱き着いて、いっぱいキスしたいのに。
 足が動かない。
「ご馳走様。お前もなるべく早く寝ろ」
「はぁい。丹恒ママ」
「俺はママじゃない」
「いてっ」
 デコピンして、彼は丼をシンクに置いてから出ていく。
「あーあ。これ、食べるのダル」
 完全に伸びたラーメン。