Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
冬暁
2026-03-06 21:17:39
2404文字
Public
ホム主
Clear cache
幸福をうたって
ぐろおか展示作品その3。
臨空でコンサートを行うタンレイに会いに行こう。手には花束と幸せを携えて。
当日お題企画から「後ろからぎゅっ」、「彼女は僕の奥さんだよ(ですよ)」をお借りしました。
「ホムラ、やっぱり大丈夫? 変じゃない?」
「大丈夫だよ。心配しすぎじゃない?」
「だって
……
」
「ラフな格好でいいって彼女が言ったんだから気にしなくていいんだ。それで文句を言うような人でもないって君も知ってるだろう?」
「そうだけど!」
家を出る時も鏡の前でずっと唸っていたのに、まだ気になって仕方ないらしい。華やかなワンピースに、それによく合うメイク。僕とデートする時より気合入ってない? ラフでいいって言われてこれなら全然いいだろう。
彼女は崩さないように花束を抱きしめながら頬を膨らませる。
「タンレイさんに会うんだよ? タンレイさんみたいに、とはいかなくても綺麗な格好したいよ」
「大丈夫だって」
「もう! さっきからそればかりじゃん!」
「君はいつだって綺麗だからね」
「
——
ッ!」
艶やかな唇がきゅっと結ばれて、頬は淡く色づく。照れ隠しに眉が寄るから僕は小さく笑った。
「それにとても可愛い人だ」
眉間をつつけば顔が背けられるけど、すぐにチラリと瞳が向けられた。
「ホムラ、もしかして浮かれてる? いつもより機嫌がいいみたい」
「うん。そうかも」
指先で軽く撫でると、繋いだ手が応えるように震える。馴染んだ熱の心地良さと、耳をくすぐる甘やかな笑い声が愛おしくてたまらなかった。
「君は違うの?」
「ふふっ、私もだよ。だからこそ余計に気になっちゃうの」
「胸を張っていればいいんだ。だって君は僕の
————
」
無粋な着信音が鳴り響く。マナーモードにしておけばよかった。
「電話出ないと」
「あとでかけ直すよ。どうせトウからだ」
「だめだよ。急ぎだったらどうするの?」
「
……
はぁ。わかった」
スマホを取り出せば表示されてるのはやっぱりトウだ。このまま拒否を押してポケットに戻したいところだけど、彼女の目がそれを許してくれそうにない。
「話をするから君は先に行ってて」
「ちゃんと話聞くんだよ。電話には出たから〜とかダメだからね」
「しないよ」
話は聞くよ。急ぎじゃなかったらすぐ切るけど。
彼女に文句を言われないためにも彼女を送り出してから画面をタップした。
『やっと出たな。ホムラ』
「今忙しいから、手短にして」
『はいはい。実は個展の使う予定だった備品の一つが配送トラブルで間に合いそうになくなったんだ。どうにも同じ物は用意できそうにないから、代わりをどうしようかと思ってね』
「それなら
——————
」
『
————
か。それなら今からでも間に合いそうだ』
「配置は少し変えた方がいいだろうね。
————
に使う予定だったやつを隣に移動させて。それから
————————
」
『
——
わかった。他は届いてからでも調整できるだろう』
「僕はしばらく電話には出れないから、あとは任せるよ」
通話を切ると、思いの外時間が経っていた。彼女はもうタンレイの楽屋についてるだろう。
足早に向かえば彼女の後ろ姿を見つけた。
「困るんですよね。あなたのように関係者のフリをしてタンレイさんに会おうとする方が多いんです。本当に関係者ならカードを配布されているはずですよ」
「ホムラが持ってて
……
」
「甥っ子さんの名前を出せば通じると? もうすぐ警備員が来ますから」
「ちゃんとカード持ってきます」
「そういって逃げるんでしょう」
引くも進むも出来ずにいるらしい。そういえば送られてきた関係者カード、僕が彼女の分まで持ってたな
……
。スタッフに怪しまれることなんてなかったから油断してた。
「結局待たせてしまったみたいだね」
「ホムラ!」
「ホムラさん?」
彼女の肩を抱き寄せると、安堵した様子で息を吐く。僕は関係者カードを取り出すとスタッフに見せた。そこには僕と彼女の名前や写真が載っている。
「彼女は僕の奥さんですよ」
彼女の左手を僕の左手で持ち上げれば、薬指の指輪が音を立てた。まだ日焼けの跡も出来ていないけれど、いつかないことの方が違和感になる日が来るんだろうな
……
。
スタッフはカードと僕たちを見比べると空気を緩める。
「失礼しました。ですが、カードはご本人がキチンと管理していてくださいね」
「すみません
……
」
「気をつけます」
「そうしてください。それがタンレイさんのためにもなりますから。案内は必要ですか?」
案内を断るとスタッフは一礼して立ち去る。その気配がなくなると彼女が脱力したように僕に背中を預けた。支えるようにお腹に手を回して抱きしめる。
「びっくりしたぁ」
「ふふっ、ほとんどのスタッフとは顔見知りだからね。彼女はこの会場のスタッフだったのかな?」
「そうかも。でも、カードはちゃんと持ってなきゃダメだね」
「一緒にいたらこういうこともないよ」
「ホムラが先に行ってって言ったんじゃない」
お腹に回された腕を彼女が軽く叩く。離せという意味なのはわかっていたけど、無視しているとじとりと見上げられた。
「ホムラ〜?」
だって離れがたい。自分で放った言葉がじわじわと胸を甘く締めつけてくる。繋いだままの手を緩めたり握ったりすると、その度にカチカチとぶつかる音がするのが愛おしい。
「君、僕の奥さんなんだ」
ボディーガードでも、恋人でもなく、僕の奥さん。籍はもう入れているのに、他人にそう紹介すると言葉にならない感情が湧き上がる。
「そうだよ。貴方は私の旦那さん」
恥ずかしさとそれ以上と愛しさを込めた笑みが可愛い。キスしたいな
……
。でもこの場所だと拒否されるのが目に見えているから、代わりにぎゅぅと抱きしめる。
「ねぇ、そろそろ行かないと」
時間を気にし始めた彼女に僕は腕の力を緩めた。確かに、あまり遅れると怒られてしまう。
「そうだね。タンレイにも挨拶しないと」
きっと楽しみに待っているに違いない。何せこのコンサートはそのために組まれたものなんだから。
Posted by 冬暁/
薄明
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内