kr0mm333
2026-03-06 10:32:40
2096文字
Public メモ
 

柴さんの記憶を封印されたチヒロ君の話の何か。

【無理と思ったらなりふり構わず逃げてください】

柴さんの記憶を封印されたチヒロ君と柴さんが出会ってなんやかんやして、カップリングになるかもしれない話。
肉体関係について言及しない限り、どっちが左右か意識してないので好きな方で見てください。

お互い記憶がないので、めっちゃ塩対応です。

 真新しく、しかしレトロ感のある木製のドアをノックすると、くぐもった声で「入って」と指示された。
「失礼します」
 なるたけ音を立てないように注意を払いながら室内に足を踏み入れると、そこには見知った人がいる。
「いらっしゃい、チヒロ君。急に呼び立てて悪いね」
「大丈夫です。仕事ですか?」
「うん。ちょっと……いや、だいぶ面倒くさいことになってて……動ける人がほしくて」
 毘灼との戦いの後、千紘は神奈備の依頼を受けたりフリーの妖術師としてヒナオのところで依頼を受けていた。部外者ではあるものの、神奈備のことをある程度知っているので、事情を知る部外者として協力している。神奈備の内部を知る人間を監視する……という意味合いも強いのだろうが、依頼は主に薊からなので信用されていることには違いない。
「相手が色んなところに出現するからその情報収集、それらしい人物に遭遇したら身柄を確保してほしい」
「色んなところって?」
「本当に色んなところ。街角から山奥、どこでもござれだった」
「それは……というか、そんなに色々なところに出没するのに、俺では追いつけないのでは? 伯理か巻墨の力を借りれば早いでしょうけど……
 千鉱は妖術師ではあるものの、長距離を移動するようなものは使えない。だから、薊の依頼通りに移動するとなると交通機関や車を使うか、以前の戦いで出会った仲間たちに協力を仰ぐしかない。
 すると、薊は大丈夫だと手を振る。
「移動については心配ないよ。僕古馴染みを呼んでるから。転移の妖術使いで結構な距離でも飛べるから、タクシー代わりに使ってよ」
「誰がタクシーや」
 ハッとして振り返ると、そこには薊と同じような大柄な男がいた。金髪で、一房だけ髪を前に垂らしている。
「やあ、柴。遅かったね」
「依頼の最中に電話してきて、今すぐ来いはないやろ。十五分で来たんやから、むしろ褒めてくれてもええんやぞ」
 彼はズカズカと近づいてくると、千鉱の隣に並んで頭から爪先を品定めするように見た。
「この子は?」
「彼は六平千鉱君。六平国重の息子で、先の真打との戦いの功労者だよ」
「あの噂の七本目の妖刀使いか」
「そ。妖刀はもうないけど、実力は本物だからね。今は妖術師として協力してもらってる」
 そして、薊は千鉱に視線を向けた。
「チヒロ君、コイツは柴。僕の昔馴染みで同じ壱鬼さんの弟子なんだ。こんな胡散臭い見た目をしてるけど、実力は折り紙つきだから安心してね」
「誰が胡散臭いや。年中太ボーダーよりマシやろ」
「それ今関係ある?」
 にっこりと笑う薊の圧に、千鉱は思わず目を細めた。対する柴は気にする様子もなく依頼の内容を話せと促した。
「今回の依頼は、全国各地に出没している妖術師を捕まえてほしい。移動術、もしくはそれに準ずる固有の妖術を使うみたいなんだけど、暗殺に盗みとやりたい放題。ソイツの捕縛を君たちに頼みたい」
「報酬は弾んでくれるんやろうな?」
「可能な限りね。チヒロ君、どうかな?」
「受けます」
 急ぎの用はないし、何より薊は妖刀にまつわる一件で世話になった。千鉱に、薊の依頼を断るという選択肢はない。
「てことで柴、頼んだよ」
「俺には聞かんのか」
「お前、どうせ受けるだろ? 聞くだけ時間の無駄」
 てことで、よろしく!
 そして、二人は薊の執務室から追い出された。
「えぇー……
 柴は嫌そうな顔をしている。
「あの、もし嫌なら俺一人で……
 本気で受けたくないと思っている人間を無理に巻き込んだところで、何かしらのヘマをすることは経験上わかっている。それなら、最初から一人で動いた方がまだマシだ。
 そう思って切り出したが、柴は「舐めんなや」とだけ言って千鉱を見下ろした。
「今までどんな雑魚と組まされたかは知らんけど、俺かてそこそこ長いことやってきてる。仕事なんやから、そんくらいちゃんとするわ」
 余計な気を回すな、ということなのだろう。
「英雄の息子かなんか知らんけど、自分こそ足引っ張んなよ」
……望むところです」
 こうして、千鉱は柴と行動を共にすることとなった。