三毛田
2026-03-05 22:31:53
1072文字
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87 04. 戸惑い微熱

87日目
こんな情けない時じゃなくて

 ノックをしても返事はなく。
 届いたメッセージは〝来るな〟というひと言のみ。
「丹恒、入る……パム?」
 軽やかな足音がしてそちらへ向けば、パム。
「今は入ったらいかん」
「なんでさ」
 むすっとした声が出てしまった。
「体調が悪いから、誰も資料室に入るなとの伝言じゃ。オレも、食事を届けるとき以外は立ち寄らん」
「でも、それじゃあ丹恒は」
「いつものことじゃ。本人が放っておいて欲しいと願うのであれば、今は放っておいてやれ」
「うう……
 確かにそれは正論だ。でも、俺の気持ちは落ち着かない。
「薬も届けてあるから、じきによくなるはずじゃ。看病をして欲しければ、きちんと告げる。丹恒はそういう男じゃ」
「わかったよ」
 ならば、今はここに入るべきではないのだろう。
 資料室に入るのは諦めて、隣のなのの部屋へ。
「なの。丹恒ってちょっと冷たくないか」
「だよね~。ウチも、前に看病が必要かなって思って訪ねたのに、パムに追い払われちゃったんだよね~」
 唇に咥えたフライドポテトを器用に上下に動かしながら、俺の意見に同意してくれる。
「でも、ちょっとだけわかるかも」
「え~?」
 突然意見を翻したので、抗議するような声が出てしまい。
「弱ってる時って、人恋しくなる時もあるんだけど、誰にも会いたくないって気持ちになる時もあるんだ」
「ふうん」
 俺には理解できない。もしかしたら、彼らのように具合が悪くて寝込むことになったことがないからかも。
 いつか理解できるようになるのだろうか。
 そう思っていた時期が俺にもありました。
「うう……
 依頼でベロブルグへ行き。雪にまみれて帰ってきた俺は、何度も怒られていたのに風邪を引いた。
「だから言っただろう」
「たんこ~……
 鼻はぐずぐずいっていて、呼吸が苦しい。喉も体も熱を持っていて、怠い。
「見ないで……
「食事と薬を届けに来た。ゆっくり休め」
「うう……
 こんな情けない姿を見られたくなくて、布団の中に顔を隠す。
 と、優しく頭を撫でられて。
「ぎゅってして」
「風邪が治ったらな」
「絶対だからな」
「ああ」
 もう一度、汗で湿った俺の髪を撫でてから出ていく。
 微熱まで落ちたと思っていたのに、嬉しさと戸惑いと羞恥でまた熱が上がった。
 どう足掻いても、彼が好きだ。その事実を改めて突き付けられ。
「何でこんなタイミングで……
 そう。
 このタイミングじゃなくてもよかったのに!
 丹恒に会えて嬉しいけど、こんな姿を見られたくなった気持ちとでぐちゃぐちゃだ。