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ne🌟
2026-03-04 22:48:20
1860文字
Public
高諸
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16)パーソナルジム高坂 まずはダンベル5キロから
# いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く
高諸
現パロ
高坂さん高校3年生、尊ちゃん中学一年生
(あいつ、今日も泣いてる)
高坂が694回目のスクワットを終えたところで、見知った子どもが俯きながらジムの前を歩いていた。
見知ったといっても、高坂が一方的に知っているだけだ。
高坂は父の経営するジムで体を鍛えている時に、彼は決まってこの時間帯にジムの前を通るのだ。
名前も知らない、話したことない少年。
ただ、少年の通う中学校は知っている。
彼の纏う制服は高坂も3年前まで袖を通していた中学校のもの。この春まで彼に見覚えがなかったことを考えると、おそらくこの春に進学した1年生なのだろう。
少し大きく、真新しい制服を身に纏った後輩が、見るたびに一人泣きながら歩いているのが気がかりだった。
「お前、泣いてるだけで悔しくないのか」
いても経ってもいられなくなり、気がついたら高坂はジムを飛び出していた。
突然目の前に現れて声をかけてきた自分に、少年は驚いたように足を止めた。
初めて少年を正面から見た。
あぁ、この子はこんなまんまるな瞳をしているのか、きっと泣くより笑顔の方が似合うのだろうな。それが、高坂が彼に抱いた第一印象だ。
ガラス越しでない、近くで見る少年。
予想はしていたが、見えるところの怪我や制服の汚れは、明らかに誰かによって与えられたものだった。
「だ、れ
……
?」
「誰でもいいだろ。それで、お前はいつまでも負けっぱなしでいいのか?」
きっと普通の人なら、どうして怪我をしているのか聞いて、然るべき所に届け出るのだろう。
それが、世間一般の他人ができる限界だ。
でもそれでは根本的な解決にならない。
届け出た所が正しく処置してくれるとも限らないし、相手が逆上して真っ先に標的にされるのは目の前の少年だ。
だから、彼を守るなら、彼自身に力を付けさせなければならない。
「でも、おれ、小さいし、先輩たちは大きいし」
ようやくきけた返事は、何とも情けないものだった。えぐえぐと泣きながら言い訳だけを並べる少年。高坂は盛大に舌打ちした。
住宅街に響く舌打ちに、少年はびくりと肩を跳ねさせると、さらに大きな声で泣き始める。
ウジウジとした態度に苛ついた高坂は、うるさく泣き喚く少年の頬を片手で鷲掴みにした。
「お前にその気があるなら私が鍛えてやる。もう一度聞く。強く、なりたいか」
驚いて目を見開いた少年の顔が、歪んだ。
自分を睨む悔しさが滲んだ瞳に、ひっそりと喜びを覚えた。
あぁ、よかった。その瞳はまだ死んでいない──
「
……
り、
……
たい」
「聞こえない、ちゃんと言え」
「強く、なりたいです!!」
腹から出した大声に高坂は笑った。何だやればできるじゃないか、と。
手を離し頭を撫でれば、突然様子が変わった高坂に少年はきょとりと目を瞬かせた。
「ついて来い。まずその泣き顔を洗え」
「来いって、どこに?」
「そこのジム。お前を鍛える場所だ」
「えー?!」
高坂に腕を引かれた少年は、お金がないだとか、親に相談しないとだとかあたふたと慌て始めた。自分の家だから、金はいらないと言えば明らかにホッとした様子で、少年は静かになった。
これから地獄の特訓が始まるのに、呑気なやつだ。
────
───
──
─
「ってこともありましたね」
正面には自分と同じペースでスクワットをする少年──もとい、尊奈門が懐かしそうに笑っていた。
高坂の見立て通り笑顔が似合う顔は、きらきらと光る汗が浮かんでいる。
泣いた顔はもう、思い出せない。それ以上に笑顔を見ることが増えたから。
あの後、尊奈門と名乗った少年は、ジムの片隅で高坂の指導を受けながら身体を鍛えるようになった。
始めこそ、高坂が与えたメニューができないと、ビービーと泣くことも多かった。
それでも時間をかけてメニューをやり切って帰って、翌日も逃げることなくジムに通い続けた。
そんなまっすぐで努力家な所が、高坂はお気に入りだった。
「尊奈門、スクワットが終わったら飯行くか」
息を吐いて膝を曲げながら、高坂は静かに呟いた。微かな声は周りの音に掻き消されそうだったが、正面で同じく腰を落としていた尊奈門にはちゃん届いている。
「いいですね、パンケーキ食べたいです!早く終わらせましょ!後何回やりますか?」
尊奈門は自分と同じペースでスクワットをしているにも関わらず、雑談をする余裕すらある。
出会った頃と比べて、随分と頼もしくなったものだ。
「甘いもん食べるなら600回」
「鬼ー!!」
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