okanon
2026-03-04 22:11:28
2117文字
Public モスファイ
 

君は誰に会いたいの!?①

現パロ🍷☀️(🍷はまだ出ない)
DK(記憶なし)☀️が、ある日☀️ぬいと出会って人探しをするお話

 
 スマホのアラームが鳴り響き、ベッドにこんもりとできた布団の山の中からゆっくりと手が出てくる。ポスポスと緩慢な動きで枕元を探り、手に当たったスマホでアラームを止める。
 窓の外からは鳥のさえずりが聞こえ、カーテンの隙間からは朝日が差し込む。いつもと変わらない平穏な朝がやって来た。……この部屋を除いて。
 
 まだ眠気を引きずる体を起こしたこの部屋の主——ファイノンの目の前に、人形が立っていたのだ。しかもそれは、どこか彼と似た顔をしていた。
 
「ぬ!」
 
 じっと見つめる彼を前に、手のひらほどの大きさをした人形は片手を上げ、奇妙な鳴き声を発した。ヤグルマギクの色の瞳がこれでもかと見開かれ——
 
「し……っ、しゃべったあ!?」
 
 ファイノンの叫びが、目覚めたばかりの世界に響き渡った。
 
 
 

君は誰に会いたいの!?

 
 (一)
 
 階段を上がる足音が聞こえ、ファイノンが慌てて目の前の人形を布団の中に突っ込むと、同時に部屋の扉が開く。
 
「ファイノン、今の声は何?」
「な、なんでもないよ、母さん!」
「本当……?あんなに大きな声を出していたのに?」
「む、虫!虫が起きたら目の前にいて!もう窓の外から出したから大丈夫だよ!」
 
 そう言われたファイノンの母、アウダタが窓の方を見るが、カーテンは閉じ、窓は締め切られている。
 
……まあ、何も無いならいいのよ。ファイノン、休日だからっていつまでも寝てちゃダメよ!」
「はーい……すぐ起きるよ」
 
 アウダタが部屋を出て扉が閉まったのを確認したファイノンは、布団からもう一度人形を取り出し、それを観察し始めた。
 白い布の髪に、青く刺繍された目。柔らかい表情はファイノンとそっくりだったが、人形はなぜかファンタジーな服を着ており、背中には黄色と紫の羽が生えていた。
 
「人形……なんだよね?布だし、中も……綿っぽい。どうやって動いているんだ……?」
 
 躊躇いなく揉む手の中で、人形はわたわたと手足をばたつかせ抵抗しているようだった。あちこちを揉まれファイノンが手を離す頃には、人形はどこか疲れた顔をしていた。
 
「ぬ!ぬ!」
「ごめんごめん。……感情もしっかりあるみたいだ。生きてる人形……というかぬいぐるみかな。こんなにふわふわしてるし」
 
 そう言ってファイノンがもう一度手を伸ばすと、それはそっと彼の手に擦り寄ってきた。……奇妙な状況だが、きっと悪いものでは無い。そう判断したファイノンは、改めて人形と向き合うことにした。
 
「さて、君はどこから来たんだい?……って、話しかけるのも変な感じだな……。会話は?喋ることはできる?」
「ぬぬ、ぬ!」
……ごめん、やっぱり分からないや。何か意思疎通ができるものは……
 
 そう言って立ち上がった彼は、少し机でガサゴソと探し物をした後、真っ白な紙と短い鉛筆を持って戻ってきた。
 
「昔使ってた鉛筆、捨ててなくて良かった……。絵は描けるかい?僕に伝えたいことを、ここに絵で描いてほしいんだ」
 
 ファイノンが床に紙を起き、鉛筆を人形に渡す。受け取った人形は最初こそ鉛筆を持つのに苦戦しているようだったが、しっかりと両手で鉛筆を支え、ゆっくり何かを描き始めた。
 数十分ほど経った頃だろうか。ファイノンが見守る中、人形は絵を描きあげ、満足気に「ぬ!」と鳴いた。
 
「できたんだね、どれどれ……。これ、は……人?」
 
 鉛筆の重さでふらついていたからか、線がガタついており、ファイノンはそれが人の絵なのか、あまり自信がなかった。
 
「これが目で、ここが鼻と、口で……。じゃあこれは髪?少し長めで……三つ編み?」
 
 ファイノンがそう言うと、人形は嬉しそうに「ぬ、ぬ」と鳴き、ぴょこぴょこと飛び跳ねる。おそらく肯定の意味だろう、ファイノンはもう一度を絵をじっと見た。自分の知り合いにこの絵に近い人がいなかったか必死に思い出そうとしたが、小さな町の中でも比較的顔の広いファイノンでも、思い当たる人はいなかった。
 
「うーん……僕の知り合いにこういう人はいないかな。君はこの人を探しているの?」
 
 ファイノンがそう問いかけると、人形はこくりと頷き、そのまま顔を下げてしまった。……明らかに落ち込んでいる。変わらない表情の代わりに全身で感情が出るのだろう。それを見ていられなかったファイノンは、人形を抱き上げ、そっと頭を撫でた。
 
……じゃあ、一緒に探そうか」
 
 ファイノンの言葉に、人形はハッと顔を上げる。
 
「僕と同じ顔をしている君が気になるし……動く人形なんて、目立ち過ぎてしまうだろう?君だけじゃ、外を出歩いて人探しなんて大変だろうからさ」
 
 そう言って彼が微笑みかけると、手の中にいた人形は全身を震わせ彼の顔面に飛びついた。……そう、飛んだのだ。
 
「と、飛んだあ!?」
 
 人形が頬ずりしながら喜びと感謝を伝える中、彼の叫び声は再び家中に響いたのだった。
 
「ファイノンー!また何かあったのー!?」
「なんでもないよ!母さん!」