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2026-03-04 20:16:05
1488文字
Public 高父×諸父
 

15)パーソナルジム高坂 始まりの話

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高父と諸父

現パロ、同い年設定



「開業おめでとう、高坂君」

午前9時50分。
長年の夢だったパーソナルジムの開業、10分前。
珍しく緊張で落ちつかない高坂の元に現れたのは、大学時代の友人、諸泉だった。

手には「祝 御開店」のプラカードが刺さった、控えめなサイズの胡蝶蘭。

「あぁ、ありがとう」
「ってことでお邪魔しまーす!意外と中、広いんだね」

驚きで普段以上に言葉数が少ない高坂に、花の鉢を押し付けると、諸泉はズゲズゲと店内に入っていく。
普段なら自由奔放の彼を叱っただろうが、今は思考が追いつかない。
高坂は状況を整理するように受け取った花から、ジムの中へ入っていく諸泉の背に、ゆっくりと視線を移した。

メール等では連絡を取り合っていたものの、諸泉と顔を合わせるのは久しぶりだった。
というのもこの数年はジム開業に向けた準備が忙しかった。飲みに誘われてもことごとく断り続けた結果、いつのまにか自分の夢を応援してくれるのは諸泉だけになっていた。

様々な条件をクリアし、勤めていた企業も円満退職したのは半年前。開業日が決まるとすぐに諸泉に連絡を入れたのは、彼への感謝も込めてのものだった。

「おめでとう!お祝いしなきゃだね」と、文面でも喜んでくれているのが分かる返信。それに対して「礼をしたいのはこっちの方だから、仕事が落ち着いたら食事に行こうと」約束したのはつい数週間前のこと。

だから律儀に開店当日に祝いに、わざわざ店まで来るとは思ってなかった。花なんて買った業者に言えば届けてくれるものを、わざわざ持ってきてまで。

諸泉に渡された胡蝶蘭は、軒先の日当たりのいい場所に置いた。
花があることで見栄えが良くなった店に、むずがゆさを感じながらも何だか心がじんわりと暖かく感じる。

初日を祝いたいという諸泉の真心で、緊張がほぐれてきたのだろう。素直に礼を言おうと顔を上げると、諸泉は店内に入り新品のマシーンを興味深げに眺めていた。

「あ!高坂くん、入会書ってどこにある」
「それはここにあるが、なにをするんだ?」
「なにって入会だけど」
「はぁ?!」

諸泉はバインダーをひったくると、高坂が止める間もなくサラサラと紙にペンを滑らせた。

「はいこれ。今日からトレーニングできる?」
「で、きるが……
「よかった!じゃあ更衣室借りるね」
「あ!おい!」

更衣室の看板を見て、さっさと奥に引っ込んでしまった諸泉に、高坂は呆気に取られた。まさかこんな形で、ジムの入会第一号ができると思ってなかった。
だが、こうなった諸泉は高坂が何と言おうが意見を覆すことはない。
意外と頑固な友人にため息一つついて、受付のカウンターから会員カードを取り出した。

NO.001  諸泉──

最初に入会してくれるのは、どんな人だろうか。そんなことを思っていた日々が懐かしい。

(まさか、それが諸泉になるなんてな)

入会書なんて見なくても書ける友人の名前に、高坂の表情は自然と綻んでいた。

──


「なーんてこともあったよね!」
「諸泉、話す余裕があるならベンチプレスの後にスクワット300回な」
「え?!」

しどろもどろに言い訳を重ねる友人はひと睨みすると黙ってバーを上げ始めた。
開業をした頃は、彼しか利用者がいない日もあったジムは、今や常に利用客で溢れている。
ここまで繁盛するまで、長い時間を要したがあの時
NO.001の会員カードを渡した友人は、今も変わらず通ってくれている。

「にしても相変わらずぷにぷにだなお前は」
「え!失礼な!ちゃんと力瘤出るようになったよ!」