三毛田
2026-03-01 16:39:20
1064文字
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83 37. 消せない熱

83日目
簡単には消せないもの

 口から吐き出した息は白く、外気との温度差がかなりあることを教えてくれる。
「寒」
「だから、カイロを張り付けたり防寒をしっかりしろとあれほど」
「あーあー。聞きたくありません」
「三月を見ろ」
 丹恒の小言に耳を塞いでいると、彼は気にした様子もなくなのへ視線を向け。
 俺も釣られてそちらへ視線を向ける。
「どう? 可愛い?」
 彼女は、いつだか着用していたドレスに、それに似合うコートを着ていた。
「可愛い。けど、寒くないのか?」
「ふふん、よくぞ聞いてくれました! このタイツ、透け感があるけど、あったかいやつなんだ! それに、コートにはしっかりカイロを張り付けてあるので」
 自慢するように胸を張り、チラッと丹恒へ視線を向け。
「俺が注意する前に、きちんと購入して対策をしていたからな」
「久しぶりにベロブルグに来ると、寒いって思っちゃうから対策したんだ」
「それなのにお前は……
「ぐぅ」
 そう言われると、俺が言うことを聞かない子供みたいじゃないか。
「俺の持っていた予備でよければ、内側に貼っておけ」
「ありがとうございます、丹恒様」
 上着を広げて、張ってもらう。
「あ、ブローニャとトパーズ! ウチ、先に挨拶に行ってくるね!」
「走って転ぶな」
「大丈夫だって!」
 と走っていった名のだが、二人の目の間で転びそうになり。ゼーレに助けてもらっていた。
「これでどうだ?」
「だいぶよくなりました」
「そうか」
 カイロの温かさだけじゃない。丹恒に触れられた個所が、熱を持っている。
「みんなのところに行くまでの間、手を繋いで」
 手袋越しじゃそんなに暖かくないのもわかってるし、きっと丹恒の手も冷えていて熱はないと思う。
 それでも、この胸の奥で燻ぶる熱はどんなに冷やしたとしても、きっと消せない。
 それならそれでいい。それでいいのだけれど、丹恒に触れたいという我儘。
「そうだな。お前も、はしゃいで転ぶタイプだからな」
「なにそれ~」
 拗ねた声を出しても、彼は表情を変えない。
 女子四人が楽しそうに話しているところまで向かい、挨拶をしてから話に加わる。
「普段の服も悪くないが、正装も似合っているな」
「ありがとう。トパーズさんが用意してくれたの」
「流石トパーズ」
「見返りが怖そう」
「今回は、私の個人資産からよ。折角の式典だもの。代表の二人には、服装を揃えて欲しいじゃない」
 という言葉に、俺は自分の服を見てから丹恒を見る。俺たち、これでいいのだろうか。
「俺たちはこれが正装だからな」