こばと
2026-03-01 11:29:13
1840文字
Public タキ書♀
 

見せつける


タキのハイネックの下にバチバチに赤いキスマが隠れてたら興奮するよね…というお話です。
お付き合い済みタキ書♀で書記生=レイです。



 オリヴァーやマニ、ジークにアムルといったいつものメンバーとともにレイが講堂へ向かっていると、廊下の角から調査服を着た特別寮の面々が現れた。その服装と向かう方角的にも、今から調査へ向かうところなのだろう。
 特別寮生というだけでも一際目立つ集団であることには違いないが、レイが目を奪われたのは、その集団の中に恋人の姿を見つけたからに他ならない。
 両手を頭の後ろで組んで歩くタキのゆったりとした白い調査服の裾が、風を孕んでふわりと揺れている。
 その軽やかな佇まいに、レイは一瞬見惚れた。
 付き合い始めてからそれなりの時間が経過し、お互いのことなら他の誰も知らないようなことさえ知っている仲だ。それでも今なおこうして、ふとした瞬間のタキの姿に目を奪われることは少なくない。
 声をかけようか一瞬迷って、隣を歩くミゲルと楽しげに笑い合う横顔を見送ろうとした、そのときだった。
 レイの視線に気づいたタキの大きな瞳が、彼女を捉えた。
「あ……
 ぱちりと目が合ったかと思うと、タキはニッと口角を吊り上げる。頭の後ろで組んでいた手を解いて、ひらりと手を振る姿に、レイはほんの少し浮き足立った。
 他人からすれば、たったそれだけのことで何を今さら、と笑われるかもしれない。けれど想いを通わせ合うよりもずっと前、ひそかにタキを慕っていた頃からそれは変わることがない。見つめられればうれしくて、笑いかけられれば笑顔が溢れる。
 ああ、かっこいいな。好きだな。
 あらためて胸に浮かんでくる感想にくすぐったさを覚えながら、レイもまた小さく手を振り返した。
 レイのすぐそばにいたオリヴァーも、ミゲルの姿を見つけたのだろう。見えない尻尾をぶんぶん振り回しながら一目散に駆け寄っていくのが、視界の端に映る。
 この流れなら、立ち止まって挨拶を交わすくらいは許されるだろう。そう思い、タキたちのもとへ歩を進めようとしたレイだったが、次の瞬間驚きのあまり言葉を失う。
「なっ……!」
 レイと視線を合わせたタキが、着ていたハイネックの襟ぐりに人差し指を引っ掛けると、おもむろにその布地を引っ張ったのだ。伸縮性のある生地は思いのほかよく伸びて、普段は服に隠れているはずの肌色を露わにする。
 まるで見せつけるようなその仕草にレイが焦ったのは、タキの首筋にいくつもの赤が散らばっていたからに他ならない。
 そしてその犯人は、たった一人しかいなかった。
 昨夜も同じ部屋で甘い時間を過ごしたタキを見送ったのは今朝のこと。朝から講義が入っていたタキは慌ただしく身支度を済ませると、レイにくちづけを残して部屋を出て行った。
 だから、気づかなかったのだ。まさかタキの首もとにあんなにも赤い痕を残してしまっていたことに。
「おーい、レイ? どうしたー? タキ先輩いるぞー?」
 振り返ったオリヴァーが何でこっちへ来ないんだと言わんばかりの顔で、レイを呼び寄せる。そのすぐ後ろには、いたずらっ子のようにぺろりと舌を見せながら、赤い痕を見せつけている最愛の人。
 今この瞬間、オリヴァーがタキのほうへ向き直れば、きっと首筋に散らばった赤が否が応でも目に入ってくるだろう。いくらタキとレイが恋人同士なのは周知の事実だとしても、やはりこういう『事実』を友達に知られるのは恥ずかしい。
 レイは必死の形相で、ぶんぶんと首を真横に振った。オリヴァーは頭上に浮かべたクエスチョンマークをますます大きくしながら首を傾げている。その後ろに立つタキは声こそ出していないものの、肩を震わせながら懸命に笑いを堪えていた。
「ったく……ほらタキ、そろそろ行くぞー。オリヴァーも、またな」
「はいっ! ミゲル先輩もお気をつけて!」
 目の前で繰り広げられていた様子のおかしいやり取りを見て、何となく何が起きているのかを察したのだろう。ミゲルが呆れたようにため息を吐きながら、タキの背中を叩くのが見えた。
「レイ! また、夜になー!」
……っ、いってらっしゃい! タキ先輩っ!」
 羞恥と期待を置き土産に調査棟へと向かう背中へ、レイは捨て鉢になって声を張り上げる。
 出かけるタキに「いってらっしゃい」の言葉を掛けることだけは欠かさないレイを、タキが愛おしく思っていることには、きっとまだ気づいていないのだろう。
 顔を赤く染めたレイは、まだ鮮明に残る赤を今夜もまた重ねることになるであろう予感に、ほんの少しだけ胸を高鳴らせた。