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望月 鏡翠
2026-03-01 01:02:27
934文字
Public
日課
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#2017 箱庭エンド
この塔の中で出会った人間の名前を覚えてる?
巡礼者の人たちじゃないよ。ここで出会った人はさ、本名を名乗ってくれた人もいたし、こっそり本当の名前を教えてくれた人もいたし、最後まで名前を教えてくれなかった人もいたかもね。
何をしていた人で、どうして死んじゃったのか知らないけど、みんな死んだってことはちゃんと現実を生きていたんだ。
そういう、地に足ついている人たちには、ちゃんと名前があるんだよ。みんなに覚えてもらえる名前。
そういう人たちじゃなくて、塔の中の各階層で出会った街の住人たちの名前、覚えてる。
生活してるんだから、それぞれ名前があったんだと思うよ。でも、誰のこともわからないままで、知らないままだった。
彼らはきっと脇役で、主人公の人生を彩るモブだから。
街に配属されるっていうのは、きっとそういうことなんだろう。
正直すごく向いていると思う。
この街の中で、みんな俺にそっくりだなって思う人たち結構いたもんな。あの中のどこかに配属されるなら、執拗の街かな。
そうでなければ孤独の街で、研究者になって何かに打ち込んでいるのかもしれない。堕落の街に配属されるなら、どこになると思う? 奴隷はしんどそうだから、あんまり苦しい思いをしなくて済むところがいいな。愚者の街は花があってよかったから、あそこに配属されたら、心を込めてちゃんと花の世話をするよ。
きっと僕には、人生ってやつが向いていなかったんだ。地に足つけて、悩んで苦しんで、そして選んで、自分の命をちゃんと生きることが向いていない。
私にはまだ、それに耐えるほどの自我がない。
だから、ここでたくさんの巡礼者を見送って、誰かの人生を見つめて、そうしてこの命を使い切って、そのときに何かに慣れていたいいけれど、そうでなくても別に構わないと思います。
そのことに疑問を持つことも、そもそも現世というのがどういう場所なのか考えることも、今後は無くなるのでしょうから。
親愛なる巡礼者の皆様。あなたたちにはこれから、素晴らしい祝福と、素敵な人生が待っている。
その生活の片隅にいた名前のない誰かが、きっと鹿山 光輝という名前だったのだと思います。
それでは、また明日。
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