三毛田
2026-02-28 22:00:27
1068文字
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82 36. 中途半端な憧憬

82日目
初めは純粋だったのに

 憧れを、憧れのままで閉じ込めておけたならどんなによかっただろう。
 出会った当初は、憧れが強かった。
 俺が持たない様々な知識、そして戦闘でも強くて頼もしく。
「丹恒って格好いいよな……
 そうこぼしたら
「そう? ウチからしたら、無口すぎて何を考えてるかわからないって感じ」
 おやつを食べていたなのは、不思議そうな表情で。
「そこも含めて格好いいじゃん」
 男のロマンというものが、わからないようだ。まあ、それはそれでいい。わかってもらおうとは思っていないし。
「三月。開拓日誌のここのところだが、なんて書いてあるんだ。姫子さんが困っていたぞ」
 開拓日誌を手にラウンジへとやってきた丹恒は、なのの前にそれを置く。
「どこどこ? あっ。誤字だ。ペン貸して」
「ほら」
 すっとポケットからペンを取り出し、彼女へ渡す。
「穹。食べカスが散らばっている」
「わっ。床に落としてから、箒で集めればいいかな?」
「そうだな。箒を借りてこよう」
「自分でやるから大丈夫! 丹恒も、一口どうだ?」
 しっとりしていて、ちょっと洋酒が効いているドライフルーツたっぷりのパウンドケーキ。苦みもあるから、丹恒も食べられると勝手に思っている。
「そうだな。一口貰おう」
「じゃあ、どうぞ。俺の座っていたところで」
 俺が腰を上げると、すっと静かに座り。
 丹恒が来たことを察したパムが、いそいそと彼に給仕。
「ありがとう、パム。美味そうだな」
「うむ。数日前にブランデーに漬けておいたものじゃ。味は保証する」
「それは楽しみだ」
 小さく笑みを浮かべ、皿に乗ったパウンドケーキをフォークで口へ運び。
 俺は、彼らの邪魔にならないように気をつけつつ、食べカスを小さい箒で集めてゴミ箱へ。
「丹恒先生。この後暇なら俺とゲームしない? ネットで調べものするっていうなら、パソコン貸すし」
「熱心に誘われたなら、応えないとな。食べ終えたら、お前の部屋にお邪魔させてもらおうか」
「ありがとう」
 熱心にお誘いしてよかった。
 パウンドケーキを食べ終えた丹恒と一緒に、部屋へ。
「さっきまでは憧れを持った子供みたいだったのに」
 と、なのが呟いていたのは知らなかった。
「それで? どのゲームだ? スマホからでもできるものだろうか」
「うん! 多分、丹恒のスマホにインストールされてるものなんだけどさ」
 ソファーに座って、隣同士でスマホをいじる。そして、マルチプレイを選び数回遊び。
 ああ。
 この邪な感情が、一生彼に伝わらなければいいのにと願う。