かんら
2026-02-28 10:15:26
1946文字
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かく語りき、夜

義炭 余生のどこか 会話だけ


「義勇さん、夜更かししましょう!」


★★★


……急にどうしたんだ」
「えへへ、秘密です」
……
「でも、黙ってついてきてくれたじゃないですか」
「この時間、この距離を出歩くのは許されてないだろう。一緒に怒られてやるから、言え」
……じゃあ、いくつかある理由の一つだけ。義勇さんと話したかったんです」
「そうか」
……
……
…………この理由だけで、いいんですか?」
「納得はしていないが、嘘じゃないんだろう。ならいい」
……ありがとう、ございます」



……
「俺、夜が嫌だったんです」
「ああ」
「夜は、鬼の時間だった。幸せが壊される時間だったから」
「鬼と関わってしまった者なら、当然だろう」
「でも、夜を嫌いには、なれなかったんです」
……
「今、鬼がいないからじゃなくて、鬼狩りをしていた時から。ずっと、そうでした」
……
「夜は、怖いし、寂しいんですけど……。優しく思える時もあって」
……優しい?」
「何て言うんだろ……。夜って、ちゃんと来るじゃないですか。朝日が昇るみたいに」
「ああ」
「正しく、容赦なく、当たり前に来るから、今日が終わったんだって思えるんです。嬉しかった事も、辛かった事も、終わったんだって」
……
「残酷に、寄り添うみたいに、終わるから……その実感があるから、嫌いじゃない、みたいな?」
……
「今は、静かな夜ですけど。間違っても鬼のいた夜がいいとは言わないですけど。俺が神様やお天道様だったら、必ず夜は連れていきます。……鬼が産まれたとしても、きっと」
……そうか」
……すみません。こんな考えは、よくないって分かっているんですけど……
「そうだな。なら、そう思えるお前には、夜は似合わないよ」



……ちょっと、寂しいですね。今は夜が好きになったのに」
「そうなのか?」
「はい。やっと、夜に向き合えた気がするんです。……義勇さん、こっち座ってください!」
「四半刻で戻るぞ」
「もっと短く済みますよ。それで、養生中ずっと、考えてました」
……何を?」
…………夜ですよ。はじめは、なんて厳しかったんだろうと思いました。その後は、こっちのことなんて気にかけてないんだなと意識しないことにしました」
…………お前、」
「でも、途中から違うことに気づいたんです。ずっと、寄り添ってくれていた。離れていたし、独りだったけど、そこにいた。最後に自覚した時には、誰よりも近くにいたんです」
………………
「そんな、夜みたいな……夜が、好きなんです」



……
……
……
……そろそろ、戻りましょうか。もう、夜更かしは満足したので」
……
「義勇さん?」
……俺は、夜が嫌いだ」
……はい」
「夜は、鬼がいて、恐怖がいて、絶望がいた。今も、悲しみがいて、後悔が続いている」
……
「嫌なことばかり考える。優しく思えた事なんてない。正しさも間違いも、終わってしまったら全てなくなるのに、その手段しか持ち合わせていないから、それしか出来ない」
……
「でも、お前がそう言ってくれるのなら、……嫌ではないんだろうな」
「義勇さん……
「だから、炭治郎」

「俺の夜は、炭治郎にあげるよ」



……え」
「これからの夜は、全部お前にやる。今までの夜も、欲しいのならいくらでも」
「そ、れは」
「痛くて辛い日も、怖くてどうしようもない日も。幸せで穏やかな日も、ありふれた特別な日も。全てお前に捧げるよ」
…………だ、ダメです」
「なんで?」
……義勇さんには、ちゃんと向き合って欲しいんです。そうして、幸せなって欲しいんです。夜の時間も、大切にできるような幸福を、……
「うん」
「それなのに俺が、俺が貰ったら……もう、返せない」
「別に、返さなくていい」
「ダメです!義勇さんの夜は、義勇さんのなのに。本当に全部、独り占めしてしまう。もっとって……。俺だけの、夜を。義勇さん、を」
「それなら、炭治郎の夜を俺にくれないか」
…………
「俺は、夜は嫌いだが。炭治郎の夜なら、嫌じゃない。自分のではない、他でもない、お前の夜が欲しい」
………………
……そんなに泣いたら、目が溶けるぞ」
「多分、渡しきれないです。そして、それ以上に欲しがります。きっと」
「安心しろ。鬼がいなくなった夜は長い」
……伝えきれるかなあ。全部、知ってもらいたいんです。優しくて綺麗な、夜を」
「伝えきれなくても、夜の全ては此処にあるだろう。炭治郎がいれば、それだけで十分だ」



★★★★★★★



「炭治郎。今日も少しだけ、夜更かしをしよう」