すぐ隣にいるのだから、触れようと思えば触れられる。だけど、こんな俺から彼に触れていいのだろうか。そんな考えばかりが脳内を占めていき。
触れたのは、指先だけ。
永く長い時間己がいた場所に、彼が足を踏み入れた。
不安と、知られたくなかったという思い。
彼には、日の当たる場所や柔らかく温かな場所が似合うから。
「なんだその顔は」
「丹恒から触れてくれると、嬉しすぎて表情が取り繕えなくなる」
「はあ」
変な返事になってしまった。が、許して欲しい。
あれからしばらく経ってから。時々穹の指に触れると、だらしない表情になる。
どうしてなのかと問いかければ、俺が触れると嬉しいのだと。
「俺の指は冷たいだろう」
「ううん。俺より低いから、気持ちいい。もっと触れたいし、触れていて欲しい」
そっと俺の手を掬い上げ、それから手のひらに頬ずり。
時々髪の毛が触れて、くすぐったい。でも、嫌な気持ちではなく。
「丹恒、今日は嬉しそう」
「そうだろうか」
「うん。俺にはそう思う。手のひらついでに、全身くまなく……いい?」
俺の手を離さないとでもいうように、少々強めに握ってきて。
どうしようか。と悩む間もなく、俺は頷いていた、
ニコッと嬉しそうに笑う彼に、胸の内は温かくなり。
手を伸ばしたら簡単に届く距離だ。と、抱きしめれば。
「今日の丹恒先生、積極的すぎてドキドキする……」
俺の胸に顔を埋め、嬉しそうに。
「積極的な俺は、嫌いか」
「ううん。どんな丹恒も、大好き!」
背中に回った手は温かくて、心地よい。
彼に据えてをゆだねるのも、悪くなさそうだ。
「今日も、ありがとうございました」
「こちらこそ」
ベッドの上で、裸で抱き合いながら。顔を見合わせ、笑い合う。
「手を伸ばして届く距離に、お前がいてくれるのが……思っているより嬉しいことに気づいた」
「今?」
「ああ」
「ようやく気付いてくれたようで、俺も嬉しい」
なんだその言い方は。と、頬を膨らませると軽くつつかれて。
「丹恒、可愛い」
「可愛いのはお前じゃないか?」
普段から、三月と二人で可愛さを競い合っている穹だ。
可愛くないわけがない。と思うのは、俺のひいき目だというのはわかっていて。
「丹恒、好き!」
「俺もお前が好きだ」
「痛い痛い痛い!」
抱きしめられたので、抱きしめ返すと思っていたより力が強かったようで悲鳴が上がり。
「俺に抱かれた後なのに、なんでそんなに元気なんだよ……」
「お前より体力があるからな」
「出たな。その言い訳!」
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