ne🌟
2026-02-25 23:00:18
1630文字
Public 高諸
 

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高諸

昔ネタツイで出した「髪を切られちゃう話」のリメイク版

尊奈門が目の前で走れば、高く結んだひと房の髪はふりふりと左右に揺れ動く。
犬の尻尾のように揺れ動く髪。
まるでそれが尊奈門の「嬉しい」を表すようで、高坂の好きなものの一つだった

「高坂さん!それでは忍務行ってきますね!」
「おい待て。頭巾をせずに忍務に行く馬鹿があるか」

尊奈門が握りしめてた頭巾の布をひったくり、髪の毛ごと頭を覆っていく。
長い髪が出ていたら潜入の邪魔になるし、何よりそれを引っ張られて攻撃をさせられるかもしれない。
高坂は髪の毛一本も出ないよう丁寧に頭を覆うと、布が解けないようにしっかりと首の後ろに結び目をつくった。

「これでよし。ちゃんと口元も隠せよ」
「わかってますってー。あ!ねえねえ高坂さん。今日から麓の団子屋で期間限定の新作が出るらしいんです!忍務のご褒美に食べたいなぁ〜」

たかが忍務で図々しいやつ。
そうは思ったが、今日の忍務は高坂を始め尊奈門が良くつるむ面々は隊に編成されておらず、昨日まで行くのを渋っていた姿を思い出した。

わかった。期間限定のやつを買えばいいんだな」

はぁと息を吐き、尊奈門の頭を撫で付けた。
これをするから付け上がるとわかってはいるのだが、こう言う甘え方を自分にしかしないのを知っているので無碍にもできない。

「やったー!約束ですよ!任務頑張ろ〜」

されるがまま撫でられてた尊奈門は、元気が出たと言わんばかりに笑顔でぴょんぴょん跳ね回った。

あぁ、毛が揺れてなくてもこいつの心はわかりやすいな。
全身で喜びを表現する尊奈門に、高坂は思わず笑いそうになってしまった。

「早く行かないと隊の奴らお前を待ってるんじゃないか?」
「あ、そうだった!じゃあ高坂さん行ってきます!」
「いってらっしゃい」

くるりと走り去って行った尊奈門の背に声をかければ、最後にくるりと高坂を振り返り「ご褒美楽しみにしています!」と声をかけてきた。
全く、抜け目のないやつ。それでもまぁ、約束だから仕方ない。
高坂は1日ゆっくりしてられる休暇を返上して、麓の団子屋まで出かける準備を始めたのだった。




……おまえ、その髪はどうした……?」

数時間後、夕方前に帰ってきた尊奈門を出迎えた高坂は目を疑った。
しっかり被せたはずの頭巾はしてなかった。
それはまぁ良いとして、本来後頭部から垂れているはずの長いたっぷりとした毛が見当たらない。

結び目の根本からさっくりと切られていた。

「あ!聞いてくださいよ!敵に頭巾取られちゃって。本当にびっくりしちゃいました」

でも切られたのが首じゃなくて髪でよかったです。
そう、笑顔で話す尊奈門の声が、高坂の耳を空回りした。

首じゃなくて、よかった。
それはそう。だけど髪だから良い理由にはならない。
尊奈門が動くたび、揺れ動く髪が好きだった。だって犬の尻尾のようにその感情を表しているようで愛くるしかったから。
その髪を時々梳くのが好きだった。自分とは違い、ふわふわとした髪は触り心地が良かった。

それが損なわれたのだ。
尊奈門は笑っているが、あれは彼だけのものではない。尊奈門の髪は、高坂のお気に入りだったのだ。

ブチリ

状況を正しく理解した高坂の頭の中で、何かが切れる音がした。
目の前が真っ赤になる。
沸々と腹の中に渦巻くのは激しい怒りだった。

「おい、そこの月輪の者、刀を寄越せ」
「ひっ……
「高坂さん?!」

なるべく端で、二人の邪魔にならないように縮こまっていた月輪隊の隊士へ手を出した。
突然声をかけられた男はびくりと息を飲み、刀を両手で持ったまま、ガクガクと震え始めた。

情けない姿に高坂は盛大に舌打ちをする。こいつじゃなくて自分が一緒なら、こんなヘマを尊奈門にさせなかった。
震えたまま一向に動けない男から刀をひったくると、高坂は尊奈門に視線を向けた。

「お前を傷物にした下手人は、私が仕留めるから安心しろ」