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asahito
2026-02-25 21:32:49
3685文字
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Old Fashioned②
前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
一部R18です
続編である今作の第1章(錦上京キャラ中心)はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/14625442
一部R18です
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
虹組ってなんやかんや錦上京異変にみんな何かしら貢献したイメージあります。魅須丸がMVPでしょうけど。
トレンチコートでは補いきれない寒さに気付いた時、冬の到来を感じる。あと数か月で今年も終わる。
正月から数えりゃいつだって今年の終わりに近づいてはいるが。それを感じやすいのはこの時期だろう。なんやかんや、今年もこの店を手放すことなく終えられることには感謝だ。
店の創立祭は初夏の頃にやってしまっているので、これからはクリスマスなどに向けての準備になる。
軽い仮装をしてハロウィンなども意識はしたが。本格的にうちの店で季節のイベントを行うなら、やはりクリスマスに敵うイベントはない。
カクテルも雰囲気に合ったメニューを出さなければならないが。毎年同じのものと新しいものを半々に。不変を愛する人間と、変化を求める人間がどちらも満足できるように。
頭を悩ませるのは経営者としての役目とは思っても。提供する側としてはいつものメニューの方がありがたいのだ。
蟒蛇のユイマンと、情けない面構えの阿梨夜を見送ってから数日後。
あれ以来あの二人はうちの店にやってくることはないが、ニュースを見ても龍さんの話を聞いても若い女がこの辺りで殺されたり襲われたりという事件は聞かない。
ならば無事に二人は帰れたのだろうと思ってよいだろうが。喧嘩が解決したのかは、あいつらがやってこない限りは分からないし知る必要もない。
うちの客は別にあいつらだけじゃなくて。魅須丸や龍さん。この近くで働いていて息抜きに飲みに来てくれる人や、わざわざ電車を乗り継いで来てくれる人、バーにデビューしてみたい大学生など色んな客が私の相手だ。勿論、袿姫や磨弓も客としてはカウントしている。
常連で話がしやすいかそうでないかはあるにしても。平等に扱いたいのが信条である。
今夜は賑やかな夜の日だったようで、珍しい奴らが揃った分いつもよりも賑やかというか若干喧しい。バーと居酒屋を一緒にするなといつも思ってるが、どうもその辺りが分かってない奴が来ると困ったものだ。
龍さんが仕事終わりにやってくるのはいつものことだが、一緒に連れてきた相手があまりうちに来る客ではなく。
それでも、仕事で一緒に関わったことはあるし何度か厄介な客を追い出すのに協力して貰ったこともあるため。無碍に追い出せる奴でもないのだ。
龍さんにはビールで問題ないが。連れて来た残り二人は普段あまり来ない分とんでもない注文をすることもあり。必死に酒の在庫や冷蔵庫の中身を考えつつ、突拍子もない注文だけは絶対にするなよと心の中で祈る。
「ご無沙汰してますね。ご注文は?」
「綺麗な色の酒なら何でもいいぞ」
「前うちのイベントで出してくれたお酒!色が女の子たちに受けたでしょ」
注文された酒は、どちらも色合いが綺麗な酒という漠然としたものではあったが。イベントで作った酒はレシピが分かっていたし、指定はなくとも青色系統の酒を綺麗と言っていたことは覚えている。
ブルキュラソーベースのカクテルに、丸く削った氷を入れて差し出した。夏の色合いとは言われていても、綺麗な色に季節は関係ないだろう。
ガキのように目を輝かせてそれを見る乱暴者も。また市場で売れないかと打診をする商売人も。その酒は理解していると思いたい。
「百々世、千亦。見てばっかりじゃなくて飲まないと駒草に失礼だよ」
龍さんが黄金比で入れたビールを飲みながら連れて来た二人に声を掛けると、二人はお行儀よくグラスを持って飲み始めた。
龍さんの親友と、ビジネス仲間。以前現れてうちの常連とはいかなくとも、定期的には顔を出してくれているが。前顔を出したときからかなり時間が経った気がする。
阿梨夜達が現れてから急に顔を出すのは偶然だとは思うが。それでも、あいつらが現れてから懐かしい顔も出てくるようになってきたな。
「本当にここのお酒って美味しいわね。貴方二号店とか出す気はないの?」
もしよければ出資とか掛け合えるわよと千亦は私に言うが。勝手な事言うな、私と同レベルのバーテンダーがいなければすぐに潰れるだろう。
「
……
ありがたいお話ですが人材も見つかりませんしねえ。物件もこの辺り高いでしょう」
「そうよねえ。なら今度フリーマーケットでキッチンカーも呼ぶから、その時また臨時バー出してくれない?クリスマスマーケットとか最近あちこちでやってるでしょ」
商売の匂いがすればすぐに嗅ぎつける女は。もう準備は始めているらしく、ホットカクテルのレシピは何かないかと聞いてくる。
うちの中で計画しているカクテルは確かにあるが。野外で同じカクテルが作れるのかと言われると、また色々と考慮が必要だ。
「簡単なものなら作れますが、本格的なものだとうちの店じゃないと難しいですよ」
必要な器具や道具も限られたうえで繊細なカクテルを作ると言うのは、かなりの難易度だ。
中途半端なモンを作ってそのカクテルの名前で客に出すくらいなら、いっそサーバなど大きな酒を売っているところから買ってそのまま飲ませた方がいいだろう。
「確かに温度とか出すための許可とかも必要よねー
……
悩ましい」
頭を抱えながら私の酒を飲む千亦を、龍さんは楽しそうだねと言いながら笑っていた。
千亦がイベントやマーケットなど何かを成し遂げるために様々な障害を取り払って、そのためにあちこち動き回っているのを知ったうえでの言葉だろうが。クリスマスマーケットに関しては、うちの店も掻き入れ時のため協力はあまりできない。私だって都合というものがある。
「クリスマスまではもう少しだから、あまり突発的に駒草を巻き込まないでおくれよ」
「年末は俺の所も工事で埋まってるから、あんまりお前の市場の設営協力できないからな」
私の店に来ない間もこの三人はなんやかんやで仲良くやっているらしい。客としてクリスマスマーケットに行けるなら、足を運んでもいいだろう。
酒が入れば話題もあれこれ浮かび上がり、そんな中年末が近づいてくるとなると今年あったことが話題に上がるが。
やはり龍さんにとっては追いかけていた会社の労働に関する不祥事の炎上案件が記憶にあるらしく、漏洩にならない範囲で親友と千亦に事の顛末を話していた。
親友も千亦もその事件の事は知ってはいたが詳細は知らなかったらしく、親友の方は少し不機嫌そうに頬杖をついて酒を一口飲む。
「
……
そんな施設のせいで死にかけた連中がいるならよ」
なんとなくだが、労働する側の扱いが酷ければ酷いほど。この腕っぷしが頼りというようなタイプが不愉快になるというのは分かる。
「いっそそんなもん立て直さずぶっ壊しちまえばいいんじゃないか。壊す道具なら俺の所にたくさんある」
システムだとか、偉そうな奴らのためだけの道具だとか。そんなもの自分達には関係ないと龍さんの親友は喚くように言う。
肉体労働で毎晩傷んだ道路を直し、補修をして設備を長く使えて綺麗にしている立場からすれば。
汗水流さない口だけの奴らに苛立ちや嫌悪感を覚えるのは無理もない。千亦も少し険しい表情をして聞いていたからだ。
「要は龍が追いかけてる炎上ってのは、弱いモン虐めのツケが今来たって事だろ」
だったらその財布が空になるまで払い続けろと親友は言う。なんで倒産しないんだとぶつぶつと文句を垂れて。
「分かってないわね。根本的なお金の出所がなければあなたの所にもお金は届かないのよ?」
お金は血液と同じ。前職を辞めて久しく市場のマーケティングで稼いでる千亦は親友を諌める。簡単に倒産すればもっと多くの炎上と地獄が待っていると。
肉体労働の対価が金であるなら。その金をまず投入して循環させなければならないのが市場であり。
その言い分も正しい。私も金がなければ酒は出せない。稼いでくれなきゃ酒を飲みに来る奴らも来てくれない。どちらも正しい。
「あ?金さえ出せば何でも従えってのかよ」
「そうは言ってないでしょ
……
雇用主と雇われる側の問題なんて、大昔からある永遠に解決しない難問なの」
それこそ、お金を渋って払わないせいで殺されたり、結婚を台無しにされた貴族もいるのだからと語る。
二人の言い合いはじゃれ合いのようなものだと気にしない龍さんは可笑しそうに笑っているが。頭に血の上りやすい親友が暴れないように注意はしてくれ。
「壊したら楽しいことにはなりそうだけど、何百人が首括るか心中を図るかもだから次は警察とか病院が今度は大変になるぞ」
葬儀屋は儲かるかもだが、何かのツケはどこかで払わされる。桶屋の理論だ。
「今はあの企業もクリーンな人事異動をして立て直し中だって言ってるんだから、あの手この手を使っていつの間にか蘇るだろう」
何せ、国に関わる一族の経営する企業なのだからと龍さんは呟くと。ビールを飲み干し私にお代わりを要求した。
国に関わる一族って、前袿姫も父親がそういう大企業の社長だって言ってた気がしたけど。それとは別に血縁でもいるってことなのか。
続く
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