Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
toko-honey
2026-02-25 17:23:03
3419文字
Public
Clear cache
結んでほどけて4【見られる】
レオン×タクミ。タクミの髪をきっかけにレオンがタクミに惹かれていくお話の第4話。1日1話の連載で全7話です。
Japanese Only
#leokumiweek2026
タクミは立ち止まってきょろきょろと辺りを見回した。
「タクミ様? どうかしましたか?」
少し前を歩いていたヒナタが振り返って戻ってくる。
「いや、何でもないよ」
タクミは視線を戻して拠点の武器屋へと歩き始めた。今日のタクミの当番はそこの店番だ。
「本当ですか? 本当に何でもないんですか?」
隣を歩きながらヒナタが食い下がる。
「どうして疑うんだよ」
「だってタクミ様、近ごろそうやって周りを警戒していることが多いじゃないですか。誰かに狙われてるんじゃないですか?」
「誰かって?」
「ええと
……
、例えば王家の乗っ取りを企むようなのとか
……
」
一生懸命考えたであろうヒナタの発言を聞いて、タクミは苦笑した。
「狙うんなら僕じゃなくてリョウマ兄さんだろう。僕を狙うようなのは少数派だよ」
「少数派でもいるなら潰しましょう! タクミ様の敵は俺の敵です」
「ふふっ、ありがとう」
腕を振り上げながら勇ましいことを言っていたヒナタが、急に驚いた顔になる。
「どうしたんだよ、そんな顔して」
「いやあ、急に礼を言われたんで、驚いて」
「ふうん、まあ別にいいけどさ」
ヒナタはさらに驚いた顔になった。
「タクミ様、なんか機嫌よくないですか? 何かありましたっけ? 今朝の食堂の味噌汁がそんなに気に入ったんですか?」
「べ、別に何もないよ。ほら、もう武器屋に着いたからさ。ヒナタはヒナタの仕事をしろよ」
ヒナタと別れてタクミは武器屋に入った。カウンターの中に入り、一人の店内で肩の力を抜く。
「いったい何なんだよ、あいつ
……
」
つぶやいた「あいつ」はヒナタのことではなかった。レオンのことだ。ここに来る途中で辺りを見回したのは、どこからか視線を感じたからだった。そして視線を探してタクミが見たのは、気まずそうに目をそらすレオンの姿だった。
思えば、少し前から視線を感じることが増えた。拠点内で過ごしているときが多かった。
最初に拠点内での視線に気付いたとき、誰かが自分の悪口でも言っているのだろうと思った。悪口の主を見つけてやろうと視線の方を向くと、そこにはレオンの姿があった。それだけなら予想の範囲内で何も不思議はないのだが、そのときの彼が一人きりだったのは予想外だった。一人では、悪口を言っても聞く相手がいない。
その後の行動も不可解だった。タクミと一瞬目が合うとレオンははっとした表情になり、すぐに視線をそらした。そして何もせずその場から離れていった。
訳がわからなかった。
初対面のときから、タクミは偉そうにしてくるレオンが大嫌いだった。助けられた恩を感じないでもなかったが、「間抜け王子」なんて言われては礼を言う気も失せるというものだった。そんな悪口を言うくらいだからレオンもタクミのことは大嫌いなはずだ。
大嫌いな相手をじろじろ見てくるというのは難癖を付けるための前触れだ。それがタクミの常識だった。だからてっきり目が合ったとき、レオンはお得意のあの口の端を上げた腹の立つ表情で、嫌なことを言ってくるのだろうと思っていた。だがその予想は外れた。腹の立つ表情も嫌味な発言もなしに、レオンはただその場を去っただけだった。
もしかしたら視線は気のせいで、偶然目が合っただけかもしれない。そう思ったりもしたが、視線を感じてそちらを向くとレオンと目が合うことは一度きりではなく、その後も何度も起こった。もう偶然とは思えない。なぜ見て来るのかと聞いてみたい気持ちもあったが、そこまでは踏み出せないでいた。
思い返せば、ここしばらくはレオンの嫌味を聞いていない。腹の立つあの表情も見ていない。いったいいつ頃からだろうか。彼の態度が変わったのは。
そこまで考えてタクミは思い出した。髪紐がフェリシアに洗濯されて風に飛ばされた日。あの日もレオンの様子はおかしかった。
あの日、レオンは手に持ったタクミの髪紐を普通に返してきた。嫌味も意地悪もない、極めて普通の対応だった。それまでの言動から考えるとまったくもって彼らしくない。
あのときも彼のその反応に戸惑ったが、後から考えて、きっと気まぐれか何かだろうと思った。読書中のようだったし、タクミを早く追い払いたかったのかもしれない。
でもよくよく考えれば、レオンの態度が変わったのはあの日からのような気がする。あの日に何かあったのだろうか。タクミへの態度を改めさせるような何かが。
何かとは何だろうと考えてみたが、臣下でもあるまいし、レオンの身に起こったことなんてわかるはずがない。
タクミはカウンターに肘をつき、入り口をにらみつけて考え込んだ。あの日にあったいつもと違うことといえば、タクミが髪を下したまま拠点内を歩き回ったことくらいだ。その姿をレオンにも見せたが、まさかそのくらいで態度を変えたりはしないだろう。では、どうして?
いくら考えてもわからなかった。なぜレオンは嫌味の代わりに視線を寄こしてくるようになったのか。
でも一番わからないのは、レオンにじろじろと見られることを嫌ではないと思っている自分自身についてだった。
視線を感じたときにレオンを見つけるのがいつしか当たり前になっていた。思ったとおりに姿が見つかると嬉しくなっていた。
自分のことなのに理解不能だ。
あんなにレオンのことが嫌いだったのに。見られることが嬉しいだなんて。
「何でだよっ、もう!」
タクミがカウンターをバンと強めに叩くのと同時に「きゃっ」と小さな悲鳴が上がった。
はっとして顔を上げると、入り口にサクラが立っていた。いくつかの武器を両腕に抱えており、タクミの様子を恐々と伺っている。
「す、すみません! あ、あの、私、武器の補充をしようと思って
…
。お邪魔して本当にすみません」
サクラは泣きそうな顔になって謝りながら出ていこうとした。タクミはあわててカウンターから飛び出してサクラを引き留めた。
「いや、さっきのはこっちのことなんだ。サクラには関係のないことだから」
「そうなんですか
…
?」
「うん、そうだよ。ほ、ほら、武器の補充に来たんだろ? 手伝ってやるから貸しなよ。誰も来なくて暇だったし」
怖がらせてしまった負い目もあって早口になる。タクミがサクラから武器を受け取ってカウンターの上に並べ始めると、サクラは安心したような顔になった。並んで座り、一緒に武器の手入れをする。
タクミは刀の刃に油を塗りながら、ふと隣のサクラの横顔を見た。
サクラみたいにかわいい子を眺めるのならわかるのに、どうしてレオンは自分などを見るのだろう。
また答えが出ないことについて考えていると、サクラが不思議そうな顔を向けてきた。
「タクミ兄様? もしかして私の顔に何かついていますか?」
「ああ、いや、なんでもないよ」
「大丈夫ですか? 疲れがたまっているのかもしれませんね。後で祓い串を持ってきますね」
サクラが視線を自分の手元に戻す。そのわずかな動きに連動して髪がさらっと揺れた。外からの光を受けて髪がつやめいている。
「なあ、サクラ。サクラの髪って前からそんなにさらさらだったか?」
「あ、これですか?」
サクラは自分の髪に触れた。少しなでて、恥ずかしそうにうつむく。
「エリーゼさんに教えてもらって、暗夜の髪油を塗ってみたんです」
「暗夜の髪油?」
「はい、植物の油にハーブが入っているんだそうです」
「ハーブ
……
」
「とても良い香りがしますし、髪の艶もよくなったような気がします」
サクラがほほ笑む。
タクミはサクラの艶のある髪をじっと見つめ、続いて束ねた自分の髪を見た。根元の方は見えないのでわからないが、毛先にはあまり艶がない。
タクミは手入れ中の刀の刃に視線を移した。油を塗ったつやつやした面と、まだ塗っていない面とを、ひっくり返しながら交互に眺める。
刃を眺めながら思い出していたのは、こちらに視線を向けるレオンの姿だった。レオンに見られるのは嫌ではない。見てくる理由は気になるものの、見たいのならば好きに見ればいいと思う。ただ、どうせ見られるのならば、少しでも見てくれの良い姿を見せたほうがいいのではないだろうか。
「サクラ、その暗夜の髪油、僕も使ってみたいんだけど」
タクミがそう言うと、サクラは「いいですよ」とうなずいた。
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内