おから
2026-02-24 17:14:18
796文字
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春に風

ぬまちゃんの卒業について

 暦は既に春でも、獅子頭連のシマはやっと春の兆しが見えだした頃だった。
 毎年恒例だった花見の計画会議がそろそろ行われる頃、春は別れの季節でもある事を、今年のメンバーはよく知っていた。
「ねぇーぬまちゃん考え直してよぉ」
「ダメったらだめ」
「鹿沼が最初に言い出すなんてねぇ」
「オレと一緒だと全員思われてたからなぁ」
 今年の春を持って、鹿沼が獅子頭連を抜ける。
 古参の中でも一番に抜けるなんて誰も思っていなかった。
 まだ二十歳にもなっていないのに、鹿沼が卒業をする。
 拳の強さもそうだが、仲間思いで特に年下メンバーからの信頼が厚かった。
 そんな鹿沼が次の花見を最後にいなくなる。
「いつかオレもいなくなるんだよなぁ」
「ありままで⁉」
「オレはまだ居残るぜ」
「急に二人も抜けたら、寂しいもんねぇ」
「丁子と条もいずれ抜けることになるんだろうな」
 鰐島はそう言うと、ふと、その頃の獅子頭連はどうなっているんだろうな、と続けた。
「オレが抜けてもみんながいるから大丈夫!」
「兎耳山が最後まで残りそうだけどな」
「ええー‼」
「丁子はすっぱり決めると思うけどなぁ」
「条は丁子と一緒だろう」
「それな」
「亀ちゃんはオレと一緒に抜けるの?」
「丁子がいないんじゃねぇ」
 ほら始まった。
 有馬は溜息をつきながら、まだごねている兎耳山を宥めるい鹿沼の頭を、何を思ったのかわしゃわしゃしだした。
「ちょ、ちょっと‼」

「元気でやれよ」

 それを言うのは、まだ早い台詞だった。
……ぬまちゃん、元気でね」
「ちょっとまってよ!抜けるのはまだ先だから‼」
「健やかにねぇ」
「十亀まで乗っからないでよ‼」
「抜けるというのは、こういう事だろう」
 あの時とは違う、『抜ける』という行為を誰よりも理解している鰐島は微笑む。
 そして、春の兆しは風のように彼らの元に訪れるのだ。