moto
2026-02-24 16:27:14
743文字
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深夜、猫みたい

さまささワンドロワンライお題「猫」「首筋」


簓の細長い指が、左馬刻の首筋をこそこそと撫でる。少しだけ様子をうかがい、払いのけられないとわかると、簓の目が楽しげに細まった。この前、道端で陽の光を浴びて気持ちよさそうにしていた猫と同じ顔をしていた。あの時、猫を見て簓を思い出し、今は簓を見てあの猫を思い出している。首元がくすぐったい。それだけじゃない感覚もじわじわと湧いてくる。大きなくしゃみをして、左馬刻は目を覚ました。
 左馬刻の首筋をくすぐっていたのは、簓の髪の毛だった。簓は左馬刻の首筋に顔を埋めて、抱きつきながら眠っていた。週に一度の深夜のラジオ番組を終えて、真っ直ぐ帰宅後、用意していた夜食を食べ、温めてあった風呂に浸かり、ちゃんと髪も乾かして、左馬刻の隣に滑り込んできた。早々に眠りについていた左馬刻に気づかれないようにここまでガッチリとホールドする簓の能力に、左馬刻はいつも感心するのだった。
 左馬刻の大きなくしゃみにもビクともせず、簓は眠り続けている。緩んだ口元にはよだれが付いていて、ううん、とうなったあとに、左馬刻の肩口に擦り付けたのがわかった。
「おい」
 地を這う声が届くはずもなく、左馬刻は諦めのため息をつく。
 深夜仕事の次の日はゆっくりできる。左馬刻の仕事もそのように調整していて、二人して寝坊をしても良い日だ。
 朝食は二人で作る。サンドイッチにするか。ホットサンドでも良い。卵サンドにハムにチーズ。赤いウインナーを焼いて、ゆで卵をつぶすのは簓の仕事だ。新しいコーヒー豆を開けよう。
 左馬刻は簓の額にくちびるをつけて、目を閉じた。ひひひ、と簓がひそやかな笑い声を上げる。寝たふりが上手い猫もいるもんだ。左馬刻も笑う。擦り寄ってくる身体を抱きしめ返し、二人の朝を迎えるために再び眠りにつく。