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桜崎
2026-02-24 12:59:14
3261文字
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れめゆみ SSS
ブルスカで書いてるSSSまとめ 順次増えてく 付き合ってたり付き合ってなかったりする二人
シャンプー
獅子神は同じだと思った。何か、といえば天堂と叶の香りである。普段特に気にすることでもないのだけど、ここ最近ずっと一緒だなあなんて思って、なぜそう不意に考えたのかといえば自分からも同じ香りがしているからである。きっと獅子神邸に天堂が勝手に置いているシャンプーを使ってしまったのだろう。疑問が解けてすっきりした獅子神はしかし、真経津の視線を感じて、そちらを見る。
「早く天堂さんに間違えて使ったこと謝った方がいいよ」
「次会った時でよくねーか?」
「あのね、恋人が他の男と同じ匂いしてたらどう思う? 恋は盲目なんだよ?」
ああ、なるほど。獅子神は即座にスマホを取り出した。
無自覚
「一口くらい食べろ」
差し出されたスプーンと天堂の顔を何度も忙しく視線が往復する。あの神さまが他人に食べ物を分け与える? 信じられなかった。
「おい、神から与えられるものを受け入れない気か?」
黎明が一向に口をつけないことに焦れた天堂の面が歪んでいく。慌てて口に含んだ。たぶん美味しいはずなのだけどよくわからなかった。絶対に自分のものを、特に食べものを分け与えるなんてしないはずの目前の男が差し出した。味の有無なんてそんなことどうでもよかったのだ。天堂のこの行いはそれくらい愛情に溢れている気がしてきっと不味くとも嫌いなものでも黎明は食べてしまうだろう。そう思ってしまった。
愛情
「ユミピコ、ひとくちちょーだい」
自分で頼めば良いのに黎明はよく天堂が食べているものを強請ってくる。天堂の胡乱げな視線に心中を察している黎明は一口でいいんだって、そんなに食えないから、なんて言って唇を開けるものだから、スプーンを差し入れてやる。美味い、と笑う黎明はきっと味の有無なんて関係なく、そんな表情をするのだろうと思った。
黎明はいつも天堂から何かを確認したがっている。それが叶っているから綻ぶように笑う。そんなの読み合ってわかりきっているくせに、まだ実感したいだなんて愚かであると思うと同時に気分も良くて、勝手に天堂の口元も緩んでいた。
中学生
マヌケがいる。何でもない顔をしている癖に距離が近づくと心音がおかしくなる叶と天堂である。村雨はこの症状を兄という例により知っている。恋煩いである。ならば成就させてやるのは立派な思いやりだと見做したので淡々と理論的に指摘した。
「そんなわけねーじゃん、なあユミピコ」
「愚か者め、貴様の目は節穴か?」
正確な診断の否定に困惑した村雨を真経津が隣に招く。
「ダメだよ、村雨さん、あの二人プライドが高すぎて自分から先に認められないから相手が告白してくるの待ってるんだよ」
呆れて一瞥した先でまた心音が加速した。指先がちょっと触れたらしい。平静を装っている。特上のマヌケ二人であった。
藪蛇
叶の浴室。洗面台に色違いの歯ブラシが並んでいた。違う種類の化粧水も二つ。それに見慣れた部屋着が洗濯カゴから覗いている。あれ、天堂のだよなあ。風呂の掃除を手伝わされていた獅子神は何となく目にしたもの全ての片割れもそうだと気づいてしまってつい恋人みたいだな、なんて口から溢してしまった。
「そうだよ」
「え、は?」
「敬一くんおもしれ〜嘘に決まってんじゃん」
けたけたと笑い声を響かせながら叶はシャワーで浴槽を流す。しばらくして不意に全ての音が消え去った。
「
……
ユミピコ、どうやったら恋人になってくれると思う?」
目が笑っていない。ああ、言うんじゃなかった。激しく獅子神は後悔した。
魔
ふわふわである。本人の髪のようにその寝巻き着は白くて手触りが良さそうだった。冬仕様だと機嫌良く天堂は言う。似合っている。触りたい。それから。
思わず黎明は手を伸ばして、小さな悲鳴と共に引っ込める。
「
……
邪なことを考えているからだろう。魔は聖なる神には触れられんぞ」
「ただの静電気だろ
…
!」
また伸ばす。弾かれる。その度に愉快そうに天堂は笑う。
「仕方ない、浄化してやろう」
唇が重なった。侵入する熱い舌が絡んで咥内を散々這い回ってからわざとらしい音を立てて離れていく。てらてらと光る口端を舐める仕草はひどく扇状的で聖なる神だなんて宣う男の方がよっぽど魔であるのは明白であった。
ふり
不意に傾いだ天堂を伸ばした腕で支える。
「珍しいな、ユミピコが滑るなんて」
「
……
景色に気を取られていた」
確かに綺麗だ。空からも繋がる一面の白い積雪は眩くきらきらしていて隣の神さまみたいだなんてふと思った。
「
……
さっき天堂あの辺走り回ってたよな、滑るのか?」
「マヌケ。あれはか弱いフリをしているだけだ」
「んなの叶なら気づくだろ」
「叶さんはわかってて気づかないふりしてるんだよ。自分にだけそういうコトしてくれるのが特別で嬉しいんでしょ」
今度は二人一緒に重なるよう雪の上に倒れ込んでいる。叶が滑ったのを天堂は支えきれなかったフリをしたのだと獅子神ですらわかってしまった。
秘め事
コーヒーだけに口をつけている黎明の前で料理の乗っていた皿がひとつひとつ片されて空になっていく。朝からよく入るものだ。
フォークですくったサラダが口元に向かう。唇が動いて、きっと見えないところ、あの服の下で喉が鳴っている。嚥下したものはさらに落ちて。
白い腹。不意に昨夜暴いた美しい形が脳裏に蘇ってどきりとした。
落ちてきた髪を天堂は耳にかける。赤い唇はただ食べる為だけに動いているのに見てはいけないものを目にしている気がしてくる。黎明、と呼ぶ声。
「この後、何処へ行く?」
ぜんぶ見透かしたように神さまは笑ってる。だからふたりきりになれるとこ、なんて顔を近づけて囁いた。
バレンタイン
献金箱と書かれた透明なケースからチョコを天堂は取り出している。現金でもないのに心なしか嬉しそうで、天堂への思慕だとか、執着だとか、献身だとか、の正も負もごちゃまぜの贈り物が積み上がる度に密かな苛立ちも黎明の中に重なっていく。
そこからさらに仕分けされるそれら。ひとつだけぽつんと残る箱がある。
「これは本人が手ずから渡すべきものではないか、黎明?」
「へえ、どうしてそう思う?」
「神の目にいちばん適った」
黎明が観ているのだからそんなの当然のことなのだけど、なんだかやけに嬉しくて、機嫌を良くした黎明はその特別に残された箱を手に取って、神さまに恭しく差し出してやった。
自覚
咎人を救済に導いた時は気分が良い。最期の写真を一枚撮りたくて黎明と呼びかけて、返ってくる沈黙に今日は独りであることを思い出した。
「それでオレ呼び出されたわけ?」
スマホのシャッター音が一度。たったこれだけの為である。なんだかなあ、そうじゃなくて、何だ?
「いや、黎明、ただお前と会いたくなった」
瞳を瞬いた。へえ、そう。だなんて言ってしまう。違う。嬉しいだとか素直に出るはずだった。
ああ、駄目だと思った。それが黎明が言って欲しかった言葉だとぴったり嵌ってしまっている。最近、いやに心臓が煩くて痛くて、天堂を真っ直ぐに見られない理由に気づきたくなんてなかったのに。
寵愛
「神父さん、髪綺麗」
小さい子どもがそう言ったのをまるで当然の如く誇っているのを前に黎明は鼻で笑う。誰が時間と手間をかけて綺麗にしてやったと思っているのだ。一度気まぐれで、手入れをしてから天堂は黎明にいつも強請ってくる。もはや決まり切った役割であるという態度で風呂上がりの濡れた髪で黎明の脚の間を陣取ってくる。
「触っていい?」
子どもから伸ばされた手を、しかし、制して天堂は首を振った。
「人の仔は触れてはいけない。これは神聖なものだ」
ふーん。そうなのか。手入れ以外で黎明が触れても天堂は何も言わないけれど。じわじわと広がる優越感に気づけば自然と口角が上がっていた。
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