i_cho_co
2026-02-24 00:02:04
1177文字
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愛を食らわば

れめししお題企画『毒』使用
🦁死亡ifなので短いですがこちらに

薬が適量を超えれば毒になるように、行き過ぎた愛も毒になるのでは、という話です。

 よく言うじゃん?料理の隠し味は愛情だって。
 だから敬一君がオレにそう言った時、よくある言葉で誤魔化しやがってって思ったんだよね。そんなよくある言葉じゃなくて、敬一君自身の言葉でオレに愛を伝えてくれよって。
 でもさあ、その後すぐに晨君たちと敬一君ちで集まることになって。オレの分だけ個別で味整えてくれてるのを見てさ、思ったんだよ。あ、あの言葉ってガチだったんだって。
 訳分かんないって顔してるな、礼二君。思いやりに目覚めたばかりの礼二君にはこの回りくどい敬一君の愛は難しかったか?
 ……ああそう、そっち。
 それが何故あなたが何も食べられなくなったことに繋がる、かあ。めちゃくちゃ分かりやすいと思うんだけどな。
 平たく言えば、敬一君がオレに毒を盛ったってことだよ。もちろん、言葉通りの意味じゃなくてさ。
 オレが、敬一君の料理なしではいられないように。他の人の料理を味気ないなって思うように。何を食べても敬一君の作ったやつのほうが美味しかったなって、オレの日常に馴染むように、食事の度に敬一君を思い出すように、少しずつ、少しずつオレ好みに味を調整していく。だいぶ大変だったんじゃないかな、敬一君。オレ、敬一君と付き合うまではそんなに食事にこだわりなかったし。
 それでも人が生きていく上で食事ってのは必要不可欠だろ?だから、そこを侵食することでオレが敬一君から離れられないようにしたってわけだ。一体何年かかるか分かんないそんな壮大な計画を、敬一君はあっという間に完遂させちまった。え、オレがチョロいだけだって?まあそうかもしれないけどさ、それだけじゃなくて、敬一君の並々ならぬオレへの愛の成せる技だと思わせてくれよ。
 まったく、すごいよな敬一君は。確かにさ、幽霊になれたらオレの所に来てくれ、とは言ったけど。まさかこんな手間暇かけて道連れにされるとは思わなかったよ。そうまでしてオレと一緒にいたいなら、あの時一緒に死んでくれればよかったのに。
 ………何であんなよく分かんないぽっと出のやつに負けて死んじゃうんだよ、敬一君。
 まあ、とにかくそういうことだから。せっかく色々買ってきてくれたところ悪いけど、食べる気にはならないや。ごめんな、礼二君。気持ちのほうもそうだけど、身体が受け付けないんだよね。別に三食全部敬一君のご飯を食べて生きてきたわけじゃないのに、もう二度と敬一君のご飯が食べられないと思うと、どうしても喉を通んなくて。思いやりに目覚めたお医者様なら、この状態のオレを管に繋いで無理やり栄養を体内に入れたって何の意味もないって、分かるだろ?
 あなたはそれでいいのかって?うーん、まあ、望んでた最期とは違うし、あの時賭場で心中してくれればよかったのにとも思うけどさ。
 まあ、そんなに愛されるなら、それも悪くないかなって。