三毛田
2026-02-23 22:11:06
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77 31. 枯れ葉色メモリー

77日目
色がないのは寂しい

 脳裏に浮かぶ景色はモノクロで。かろうじて色がついても、セピア色。ないし、枯れ葉のような色。
 道行く人々の顔は、子どもが落書きを消すようにグシャグシャに塗りつぶされており、判別がつかない。
 隣にいるはずの人も、どうしてか塗りつぶされていて。
……
 名前を呼ぼうとして、出てきたのは空気。
 だけど、どうしても諦められなくて何度も何度も呼ぶ。
「はっ」
 〝彼〟に触れそうというところで、目が覚めた。
「穹。すごい音がしたが、大丈夫か」
 デスクの横の扉から出てきたのは、びしょ濡れの丹恒。
 彼が俺の浴室から出てくるのは珍しい。というか、雲吟の術で済ませず、ちゃんとお風呂に入ってるのは珍しいじゃん。
「珍しい……
 自然と口から言葉が出てきて。一瞬で体も髪も乾かした丹恒は、俺を起こしてくれる。
「ベッドから落ちたのか。背中や頭は痛まないか?」
「今のところ平気」
「今日中に一応診てもらえ。もし頭を打っていたら、後で痛みが出る」
「うん。わかった」
 君の悪い夢を見たものだから、丹恒に抱き着いたら。
「甘えたいのか?」
「うん」
 素直に頷くと、抱きしめ返してくれて。
「お腹空いた」
 丹恒のぬくもりに安心したら、お腹がすいてきた。
「俺も少々腹が減ったな。一緒に食べに行こう」
「お願い」
 腰にタオルを巻いただけでこちらに来たようで、浴室に戻って服を着てから俺の元へ。
 丹恒も、そういうところあるんだ。って言おうとして、俺が彼に心配をかけたんだったと思い返す。
「えへへ。美味しい」
 ふわふわのフレンチトースト。トッピングは、蜂蜜とバニラアイスから選んでいいらしい。カリッカリの薄いベーコンか、厚いベーコンどっちにしようか。
 ひき肉と野菜の分厚いオムレツ。
 野菜たっぷりのコンソメに、濃厚なポタージュが二種類。
 今日もご飯が美味しい。
「今日もオマエたちは仲が良いのぉ」
 給仕をして呉れるパムは、隣同士で食べている俺と丹恒を見てそうボソッと。
「甘えたい気分なんで」
「甘やかしたい気分だったんだ」
「なるほど。それなら仕方ないのか?」
 首を傾げるパムの後ろで、蜂蜜とバニラアイスたっぷりのフレンチトーストを食べようとしていたなのが
「車掌さん、そこでツッコミを諦めちゃ駄目だよ。そこのバカップルにはガツンと言わないと」
 バカップルってなんだ、バカップルって。と否定したかったけれど、あまり間違っていな気がしたので黙ってご飯を食べる。
「不安は解消されたか?」
「うん。少しだけなら」